この記事では魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」のネタバレや感想、見どころについて解説していきます。
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今回の第10話も引き続き九校戦での話となります。
物語は『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子決勝の”司波深雪VS北山雫”と言う冒頭から見応えがある展開となっています。
この戦いは本篇アニメである「魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ」にも、もちろん収録されておりますが、深雪や雫たちが主役である今回の「魔法科高校の優等生 第10話《負けたくない》」の方が詳しく描かれており、本篇アニメのファンの方であれば見ないと惜しい展開となっています。
また敗戦し失意にある雫と、それをなぐさめるほのかと言ったふたりの友情シーンもボリューム満点に描かれており見どころがあります。
そして同じく九校戦新人戦の競技として『ミラージ・バット』、更に男子競技である『モノリス・コード』で第一高校選手である森崎たちを襲った事故発生までが描かれています。
魔法科シリーズのアニメを見る順番は放映順に観るのが基本とは思いますが、時系列的にご紹介いたしますと、
③「魔法科高校の劣等生 来訪者編」
④「劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」
となりますが、この「魔法科高校の優等生」は②の入学編から九校戦編までの物語をなぞって展開しておりますので、②の「魔法科高校の劣等生」の各話と比較しながら各話を交互に観るのも味のある楽しみ方だと思います。
魔法科高校の優等生 第10話のあらすじ要約
魔法科高校の優等生10話
背中のリボン可愛い。
雫ちゃん着物似合うわ…着物+銃とかもう完璧やな😌 勝ってほしかった…#魔法科高校の優等生 pic.twitter.com/AU3GoYsEUD— ともも🌻 (@fgass76) September 8, 2021
魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」はもちろん開催中の九校戦新人戦が舞台です。
そして物語は2095年8月8日、『アイス・ピラーズ・ブレイク』女子新人戦決勝より始まります。
会場は超満員で男性アナウンサーの大きな声がまもなく始まる試合を告げています。
この試合は第一高校の選手同士の試合です。
そして対戦するのは司波深雪と北山雫です。
同じ学校であることから、対抗戦の意味合いがなくなったこともあり大会本部からは決勝に進んだ明智エイミィを含めた3名の同率優勝でどうか、との打診があったのですが、どうしても深雪と戦いたいとの雫の意見があり、急遽、第一高校選手同士での試合となったものです(第9話「あなたがいたから」より)。
試合開始前の控え室では緑色の振り袖姿で長椅子に腰掛けた雫の姿があります。
雫は静かに目を閉じて瞑想しているように見えます。
「……深雪。やっとあなたと戦える」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そう口にした雫は先ほどほのかとふたりそろっての優勝を約束した右手小指を見つめます。
「……ほのか。私もがんばる」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そして雫は立ち上がります。深雪との戦いへと向かうために……。
そして場面は『アイス・ピラーズ・ブレイク』会場となります。
九校戦は日本全国で9校しかない魔法科高校の中でも、とくに優秀な魔法師のタマゴが一同に集うことから軍事関係者やCADなどの魔法機器メーカー関係者など、国内外の各業界のスカウトが集まります。
この競技会はそれぞれの業界の将来を担う人材発掘の場でもあり、世界情勢が厳しいこの時代では特に軍はこのことに熱心であろうと思えます。
そもそもこの競技会会場自体が富士演習場であり、国防陸軍の基地であることからも、そのことは容易に想像できます。
超満員の観客席には第一高校の三人がいます。司波達也が中央に座り、その向かって右が七草真由美、左が渡辺摩利となっています。
真由美と摩利は、本当は深雪を応援したいのかとの問いや、持てる技術でここまで第一高校一年女子チームを勝利へと導いたことへの称賛を悪ノリ混じりで達也をからかいます。
達也はこのふたりには勝てぬとばかりに苦情気味に対応するのでした。
そして第三高校生徒が集まる観客席では一条将輝と吉祥寺真紅郎、そして一七夜栞と一色愛梨の姿が見え、それぞれが思い思いに真情を発露します。
そんな中、第一高校の明智エイミィと滝川和実の姿が観客席にあります。
「雫はどうして深雪と戦いたいなんて言ったんだろ?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
神妙な表情でエイミィが一人呟くように言います。
「え?」
「体調が万全でも、私は深雪と戦いたくないよ。……だって勝てる気がしないもん」
「だったら雫は深雪に勝てると思ってるのかも」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「えっ?」
エイミィは和実からしっかりとした回答があるとは思っていなかったのかも知れません。
なので問い返します。
「深雪との力の差は雫自身がいちばんよく知っているはず。それでも戦いたいって言ったのは、そういうことじゃないかな」
「雫……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
雫の心を思いやるような表情になるエイミィです。
深雪との力の差を知っているのは雫自身。であるのに戦いを挑むと言うことは勝算があるからだと和実は口にします。
もちろんこの時点で雫に隠し球があるとはエイミィも和実も知りません。にもかかわらず策があるのではと予測する和実の方が熱血エイミィよりもやはり頭脳は上のようです。
そして割れんばかりの歓声の中、深雪と雫がせり上がる櫓に乗って登場します。
前回の試合同様に深雪は白衣と緋袴の巫女装束、雫は緑色の振り袖と言ったともに和風女子の姿です。
会場には風が吹き、互いの髪をなびかせます。ふたりは見つめ合います。そこには一触即発を感じさせる空気のピリピリ感が漂います。
屋内の第一高校控え室ではほのかがモニタを見つめます。
同時刻、野外の会場外に設置された大型スクリーンを見つめるのは第三高校の四十九院沓子と水尾佐保です。
櫓の上の深雪は観客席にいる達也の姿を見つけ微笑します。
「……お兄さま……」
そしてつい先ほどのシーンを思い出すのでした。
場所は控え室。衣装はすでに巫女装束となっており、達也に差し出す両手のひらの上には達也に買ってもらった氷をモチーフとしたいつもの髪飾りがあります。
「……私にこれを付けてくださいますか? ……やはり立場上どちらかに肩入れするのは駄目でしょうか?」
微妙に顔を傾げるおねだりモードです。
「……わかった」
そう返答した達也は深雪の頭部左側のいつもの位置に髪飾りを付けるのでした。
場面は会場に戻ります。
(……これだけで深雪は、なによりの力になります。……いくわよ雫。あなたと私の真剣勝負!)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
一方の雫。表情はいつものように控えめで落ち着いているように見えます。
(深雪。ここまでの成果をすべて、この一戦にぶつける!)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そして試合開始となります。
開始の合図が鳴った直後、深雪は携帯端末型CADから魔法を発動させ、雫も左手首のCADを操作し魔法を発動させます。
ですが発動は同時ではなく、雫の放った魔法の方が先に展開されました。
深雪側の陣地全体を包む巨大な魔法陣が宙に浮かび上がります。
そして深雪側の12本の氷柱すべてがガタガタと揺れ始めるのでした。
「共振破壊っ……!!」
観客席にいる和実が愕然とした表情でそう叫びました。
「……雫のママの得意技っ!!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
エイミィも驚きを隠せないままに言葉を発します。
『共振破壊』とは、雫の母である北山紅音(きたやま べにお)が得意としている魔法です。紅音はAランクに分類される強力な魔法師で、海外にも名が知られる著名な存在です。
紅音の娘で才能を引き継いだ雫なので使えて当然と思われますが、『共振破壊』もAランク魔法と推測されますので通常は高校生には使えない高等魔法でしょう。
それを見事に行使した雫は、やはり第一高校学年トップ3に相応しい実力だと言えざるを得ません。
それを受けて深雪は氷熱地獄《インフェルノ》で対抗します。
雫側の陣にある12本の氷柱すべての周囲が高熱に晒され、氷柱が燃え上がるように真っ赤に染まります。
観客席にいる愛梨と栞は、固唾をのむように大技同士の激突に注目しています。
「インフェルノがどんなに強力でも、温度改変を阻止する情報強化がかかった氷柱。この温度を上げることは絶対にできない」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
『共振破壊』を行使しながらも雫は状況を冷静に分析しています。
「共振破壊は陣地全体を振動させる領域魔法。共振を呼ぶ前に振動を止めるっ!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
深雪は自陣全体を包んでいる雫が放った『共振破壊』が本格的に作動する前に、その『共振破壊』魔法に干渉し事象を上書きさせるべく魔法を発動させます。
深雪の陣地全体を覆った雫の魔法陣よりも更に大きな魔法陣が展開され、『共振破壊』は霧消します。
優秀な魔法師である雫が放った大規模な領域魔法の事象を苦もなく上書きできる深雪の恐ろしいほどの干渉力です。
「共鳴点に到達する前に振動を止めた……。さすがだね、深雪」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
魔法を行使しつつも冷静に状況を判断する雫。
「氷全体に情報強化をかけて『インフェルノ』を防いだ。それも『共振破壊』と同時に行うなんて……。見事だわ、雫。
……でも、それでは私には勝てないっ!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
雫の作戦、そして力量を正当に評価する深雪。焦りはまったくありません。
ですが深雪の評価ではありませんが、同時にふたつの魔法を発動し制御できる雫の実力はやはり相当なものです。
(……くっ)
そんな深雪の言葉が聞こえた訳ではないのでしょうが、この時点ですでに手詰まりになってしまったかのような苦しげな様子の雫。
そして観戦中の栞と愛梨。
「魔法による事象改変は回避できても、周囲の加熱された空気の影響で氷が溶けるのは阻止できない」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
歩くコンピュータである栞らしい的確な分析です。
「司波さんはここまで考えていたのね」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
愛梨は改めて深雪の凄さを実感したようです。
「……あなたはどうなの? 北山さん?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
『スピード・シューティング』で雫と激しい試合を行った栞は雫に問います。
そしてこちらは観客席の和実とエイミィ。
「このままじゃ、ぜんぶ溶かされちゃう……」
和実が辛そうに言います。
「……スゴイ。……雫、やっぱり深雪には敵わないよぉ……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
エイミィは声も表情も悲痛です。
このふたり、ほのかとは違って別にどちら片方を応援している訳ではありません。深雪、雫のどちらとも仲が良い友人でチームメイトです。
ですが、どうしても判官贔屓になってしまい心情的に押されている雫を応援してしまうようです。
ここで試合は、しばらく深雪、雫ともに膠着状態のにらみ合いの状況となります。
「……今までの魔法じゃ、深雪には届かない。……だったら!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
ここで雫は右の袖の中に手を入れ、拳銃型CADを取り出しました。そして左手で構えます。
つまり雫は左手首と左手にCADを装着したことになります。
「……っ!? ……雫、それは……!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
まったく予期できなかった事態発生となり、さすがの深雪も九校戦で初めての動揺を見せました。あり得ないことが発生したのです。
場面は九校戦より15日前である2095年7月19日の第一高校校舎内となります。
夕方と思われる橙色の光が差す廊下に、雫と達也の姿があります。
「……ダメだよ。このままじゃ深雪に勝てるとは思えない。……深雪に勝つだなんて、身の程知らずな願いだってわかってるよ。
……でも、せっかく真剣勝負の機会があるなら、同格かそれ以上の技を身につけて挑みたい!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
寡黙な雫がしっかりとした口調で達也に相談します。
達也は雫の担当エンジニアではありますが、司波深雪の担当エンジニアでもあり、深雪の実兄でもあります。
雫はそのことは百も承知でお願いしたのです。
そして北山雫は才能あふれる魔法科高校の優等生であり、海外にも名を知られている強力な魔法師である母を持つ血統確かな次代を担う魔法師です。
ですが、雫自身の言葉にあるように、それでも司波深雪には届かないのです。
幼い頃から九校戦に出場することを夢見て鍛錬を重ね、魔法科第一高校入学を実現させても深雪は遙か先なのです。
「……雫がそこまで本気で考えていたとはな」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
雫の願いは届きました。
達也にしても雫がお気楽JKライフをエンジョイする人物とは思ってはいなかったでしょうが、ここまで真剣に強くなりたい気持ちがあるとは思わなかったに違いありません。
「……わかった。それならひとつ策がある」
そう言って達也はアタッシュケースを開けます。するとそこには自動小銃型のCADが収まっていました。場所は校内にある演習室。
この”優等生”では登場しないエピソードでしたが本篇アニメである”魔法科高校の劣等生 第2話 入学編Ⅱ”で達也が生徒会副会長の服部刑部と模擬戦を行った部屋と同じ造りの部屋で、殺風景で天井が高くだだっ広いなにもない部屋です。
「……これは?」
雫は訝しげに尋ねます。達也は制服のままですが雫は体操着に着替えていますので特訓が行われるのが予想できます。
「俺はこの特化型CADと汎用型の同時操作を提案したい」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
雫は息を飲み、身を引きます。
「それは無茶だよ。ふたつのCADを同時に使うとサイオン波が干渉してまともな魔法は使えない……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
魔法師なら誰もが知っている常識論を雫は告げます。
「難しいのは承知している。誰にでもできることとは思っていない」
そう話ながら達也は拳銃型CADを雫に手渡します。
「……だが、……雫ならできる。俺はそう確信している」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
達也は冷静かつ真剣な眼差しで雫を見ます。すると雫は一瞬ののち、ほんのりと頬を染めます。表情が乏しい雫が見せためずらしい照れ顔です。
そして染まった頬はそのままに恥じらうように視線をそらし告げます。
「……ほのかが舞い上がるのもわかるよ」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「えっ?」
朴念仁の達也が問い返します。
ですが、「ううん。なんでもない」と応えます。
この”優等生”でも”本篇アニメ”でも雫が恋をする場面も相手もいません。
ですがこの様子を見るに、雫は達也に他の男子生徒たちと明らかに違う気持ちを持っているように見えます。
そのひとつは信頼です。
知識面、戦闘面、そして技術面のすべてに信頼しています。
雫が『スピード・シューティング』新人戦女子(魔法科高校の優等生 第7話数学的連鎖《アリスマティック・チェイン》)で使用した《アクティブ・エアー・マイン》は雫の特性を活かして達也が作った魔法です。
またこの”優等生”では語られていませんが”本篇アニメ”では、雫はこの《アクティブ・エアー・マイン》における達也の技術力の高さを知ったことで雫の実家である北山家と専属契約しないか、と提案するほどでした(魔法科高校の劣等生 第12話「九校戦編Ⅴ」)。
ですが雫だって年頃の少女です。知識、戦闘力、技術力、そして信頼できる男子生徒に心を惹かれるのは当然のことです。
ですが感情が乏しいことでそれが達也を異性として意識しているとは気づきません。
また親友のほのかが熱烈片想いをしている相手に横恋慕する気も起きないと思われます。
なのでこの淡い気持ちはきっと結実しないでしょう。
「……今こそ使うよ。達也さん!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
雫は腕を伸ばし銃を構えます。銃口の先はまるで深雪自身を捉えているかのようです。
「ふたつのCADを同時に操作だと……!?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
観客席の摩利が驚きの声を上げます。そして真由美も信じられないとばかりに息を飲みます。
ですが驚きはこのふたりだけではなく、観客席全体が驚愕の声でどよめています。
強力な魔法師である摩利や真由美が驚くくらいですので、一般の魔法師たちには信じられない事実に違いありません。
「……まさか?」
「……北山さん」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
同じく観客席にいる愛梨と栞も信じられないと言った反応です。
「儂は精霊魔法を半ばオートで使えるから、現代魔法側のCADに集中できるが……」
「現代魔法をふたつ同時なんて、そんなことできるの……!?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
競技場外に設置された巨大スクリーンを見上げて、沓子と佐保もやはり驚きと疑いの声を上げます。
そして競技場です。
「CAD同時操作はサイオンの完全な制御を必要とする高度な技。……お兄さまの得意技を、……雫、あなたは会得したと言うの!?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
対戦相手である深雪も、やはり動揺しています。このセリフからおそらく達也以外にそれを成し遂げた魔法師を見たことがないのだと思われます。
なので否定したい気持ちがあるのですが、その雫の担当エンジニアは達也であることから、それを身につけた可能性は高い、……いや確実だと思っているに違いありません。
「……知ってるよ。ここまで雫がどれだけ努力したきたか……。絶対いける。いけるよ」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
第一高校の控え室では、ほのかがモニター越しに応援しています。
舞台は競技場へと戻ります。
そして雫がついに拳銃型CADの引き金を引きました。
銃口前に魔法陣が現れ、やがて発射された緑色の光線が真っ直ぐに伸びて深雪陣地の真ん中の氷柱へと突き刺さります。
「……フォノン・メーザーっ!!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
驚愕の声を出しながら真由美がその正体を的確に言い当てました。
「よしっ!」
その威力と手応えに雫は満足の表情と声です。
そして氷柱の命中箇所を中心に被弾箇所がジワジワと広がり始めます。
《フォノン・メーザー》とは振動系魔法の一種で、超音波照射の高熱で攻撃する魔法です。
つまりは高温で氷柱を溶かす熱線魔法となります。
「深雪の氷が溶かされてるの初めて見た! 予選では誰も傷一つ付けられなかったのに!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
観客席の和実が興奮した声でそう告げます。
「……スゴイ。……雫」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
呆然としていたエイミィがそう呟きます。
そして自分の声で我に返ったかのようにいきなり立ち上がり叫びます。
「ガンバレ雫ぅ! 勝てるよぉ!!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そして第三高校側。
「2つのCADの同時操作に加え、振動系の高等魔法《フォノン・メーザー》……」
「どちらも簡単に使える技じゃない。司波達也のサポートもあるだろうが……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
観戦していた将輝と真紅郎が的確な分析を行っています。
予選で高等魔法《インフェルノ》を行使していた深雪だけではなく、『スピード・シューティング』で栞を破り優勝し、そして今、格上の深雪に対して退くことなく『共振破壊』『フォノン・メーザー』と言う、どちらか一方でも高校生にはまず使えない高等魔法を同時展開している北山雫と言う魔法師の実力を正当に評価しています。
真紅郎が言うように確かに司波達也のサポートが入っていますが、雫と言う魔法師の素養があっての結果だとわかっているのです。
「この勝負にかける思いがなしえた結果ね」
「司波さんとの力の差を理解して、それでも諦めず勝つための策を練ってきたのね」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
愛梨と栞の中でも、雫の評価が上がっているのがわかります。
同じ選手として、同じ魔法科高校の生徒として共感できるものがあるからです。
場面が競技場に戻ります。
雫の《フォノン・メーザー》が氷柱に更に深く突き刺さり、深雪が展開している堅い事象改変を崩そうとしています。
「あと少し……。いける……」
雫は手応えを感じています。
(……雫。これがお兄さまのおっしゃっていた、あなたの覚悟?)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
焦りは見えない深雪ですが、表情は真剣です。
親友相手にまったく手を抜いていないのがわかります。
舞台は深雪の回想シーンとなります。
時は2095年7月20日、九校戦の14日前で、場所は達也と美雪の自宅である司波邸の夜、広いリビングです。
「……えっ? 雫が?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
ソファに達也と並んで座っている深雪が驚いたように問います。
「ああ、並々ならぬ覚悟だった」
「……そんな。……雫が私に勝ちたいと?」
「強い相手と戦ってみたいと思うのは、魔法師の本能のようなものだ。同世代で傑出した力を持つ深雪と本気の勝負をしてみたいという気持ちは理解できる」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
深雪は達也の顔をじっと見つめ言葉を聞きます。
「だから、俺も技術者として雫にできる限りの協力は惜しまないつもりだ」
(……お兄さまがそうおっしゃると言うことは本気で私を負かす程の……)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
深雪の握っていた拳に震えが来ます。
雫だけでなく達也も本気で挑んでくることがはっきりと理解できたからです。
「もちろん深雪にも最大限の技術を注いでいる。その上で生半可な努力では雫に勝てないと言うことを、覚悟しておいてもらいたい……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
達也の言葉は厳しいものでした。
ですがそれは雫の覚悟がそれほど強いと言うことを伝える意味のためです。
深雪は努力を怠ったり相手を油断したりするような性格ではなく、日課としてしっかり鍛錬を行っているのは容易に想像が付きます。
ですが、十師族四葉家次期当主候補筆頭である程の魔法師だからとしても、心に油断があれば足元をすくわれるとの警告を伝えていたのだと思います。
舞台は競技場へと戻ります。
(……やっぱりこの感情は……)
深雪の心はざわつきます。
観客席で観戦中の達也も平然としている表情とは裏腹に、深雪や雫と交わした過去の言葉をあれこれ思い返しています。
(……雫には悪いことをしたかもしれない。やはり二週間では限界があった)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そして深雪です。
(……お兄さまは限られた時間の中で本気で雫が勝てるようにサポートしていたのですね……?
……そして雫も……。ならば私はそれに全身全霊で答えるのが礼儀でしょう!)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
深雪はCADを操作し、大きく両手を挙げます。
それを見た雫は察知します。
(――来るっ!!)
深雪の表情が険しくなりました。
先ほどまでのすまし顔とは異なり感情が表に出ているのが判ります。
(私はあなたに嫉妬している。あなたの力と技に。だからこそ雫、私はあなたに負けたくないっ!)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
ひときわ大きな魔法陣が深雪の自陣の上に展開されました。
より強力な低温が氷柱たちを包むのが判ります。
吹雪が吹きます。
おそらく周囲の水分までも強制的に凍らせて氷柱に付着させていると思われるカチカチとした音が響きます。
「……これは……」
雫が思わずつぶやきます。
観客席で観戦している真由美と摩利の顔が強ばります。
「……広域冷却魔法《ニブルヘイム》……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
博識な真由美はすぐさまに深雪の魔法を言い当てました。
「……どこの魔界だ、ここは……」
摩利が呻くような声を出します。
広域冷却魔法《ニブルヘイム》は深雪の得意技です。
テロ組織ブランシュのアジトなどでも使用しておりますが、真由美、摩利は初見でしたので、かなり驚くと思います。
それもそのはずで、ただでさえ高校生ごときが使えるはずもない高等魔法の氷熱地獄《インフェルノ》に加え、またもや高校生が使えるはずもない高等魔法の《ニブルヘイム》まで重ねて行使して見せたのですから、度肝を抜かれる思いだったに違いありません。
また、その魔法たちが作用しているフィールドを”魔界”と評した摩利の表現は決して大袈裟ではありません。
「液体窒素の霧でフォノンメーザーを無力化させるつもりね」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
エイミィが的確な解説を行います。
意外に思えますが、エイミィはこれでも九校戦に選抜された優等生なのです。
ですが、……失礼ながら日頃の言動が、おバカキャラっぽかったことから、このような解説には驚きです。
「――そうはさせない。フォノン・メーザーの効力が消えないうちに情報強化。現状を維持させる……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
雫はそう言うと高熱を発するフォノン・メーザーの出力を上げます。
「――残念だけど、甘いわ、雫」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そう言葉を発した深雪も《ニブルヘイム》の出力を上げます。
そのため自陣に発生した微細な氷の霧は一層濃度を高め、視界がほとんどなくなりました。
「氷の融解は阻止した。でも司波さんはこのためだけに《ニブルヘイム》を発動させたとは思えない……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
愛梨はそこまで口にすると、なにかに気がつきました。
「――はっ? そういうこと?」
深雪が行使した《ニブルヘイム》の濃霧はぐんぐんと勢いを増し、雫側の陣地すべてを覆い尽くしました。
これには雫も思わず息を飲みます。
「……そう。あなたの情報強化は元々そこにあった柱に作用していて、新たな付着物には作用していない。
つまり、そこに残る液体窒素の水滴や水たまりに対しては意味を成さない。……これでラストよ!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
ここで深雪は今度は再度《インフェルノ》を行使します。
雫側の陣地の氷柱を熱していた氷熱地獄《インフェルノ》の威力が上がり氷柱は真っ赤な炎の色となりました。
「……氷の表面の液体窒素がインフェルノの熱で一気に気化。……その膨張率、およそ700倍!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
――噴火――。
その言葉がぴったり当てはまりそうな大爆発が雫側の陣地で起こりました。
大音響の爆音とともに真っ赤に染まった氷が砕けて火山弾のように飛び散ったのです。
この雫の陣地の液体窒素は、さきのニブルヘイムの霧が膨張したときにもたらしたもので、深雪の先読みがここまで高度なのに驚かされます。
そして、……呆然となってしまった雫は思わず拳銃型CADを落としてしまいました。
観客席の将輝と真紅郎は度肝を抜かれ言葉が出ません。
控え室のほのかは目を閉じ顔を伏せます。
愛梨と栞も硬直しており、真由美と摩利も動けません。
エイミィと和実も言葉が出ませんでした。……ですがエイミィはあふれる涙を拭い、ひとり拍手を始めます。
やがてその拍手に達也、真由美、摩利が加わりました。
そして勝利した深雪、全力を尽くした雫に対する敬意として惜しみのない拍手が会場全体を包むのでした。
「アイス・ピラーズ・ブレイク女子新人戦、優勝は第一高校、司波深雪選手です!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
男性アナウンサーが高々と結果を告げました。
そして深雪は作法良く、笑顔でお辞儀をするのでした。
この試合。内容を見れば見どころ十分の試合ですが、結果的には深雪陣地の氷柱は1本も砕けずの容赦ないパーフェクト勝利でした。
ですがこれは親友である雫が全力で戦って欲しいと願っての試合だったことから、手を抜くことは親友を侮辱する行為として深雪も手加減しなかったからです。
雫もほのかもエイミィたちも深雪が自分たちと同じ魔法科高校の女子高生でありながら、実力が天地ほどの差があるのはすでに知っています。
ですが、なぜ深雪がそこまで強いのか、そしてその兄の達也もなぜあそこまですごいのかに付いては知りません。
しかも深雪のその強さから、深雪が真由美や克人と同じ十師族ではないかと疑うこともないようです。
もし深雪が四葉家当主の姪で次期当主候補だと知っていればその強さには納得していたような気がします。
そして深雪は、この九校戦の数ヶ月後に来日するUSNAの戦略級魔法師のリーナに勝ち、更にこの2年後に戦略級魔法である氷河期(グレイシャル・エイジ)を達也より授かります。
このことを踏まえると、十師族の中でも間違いなくトップレベルであるのが深雪なのですが、もしそのことを雫は知っていても、やはり挑んでみたいと発言したような気がします。
「強い相手と戦ってみたいと思うのは、魔法師の本能のようなものだ。同世代で傑出した力を持つ深雪と本気の勝負をしてみたいという気持ちは理解できる」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
とは達也が深雪に言った言葉です。
雫に魔法師の本能がある限り例え深雪の正体がわかっていても同じことになったはずです。
そして夕方。舞台は第一高校が宿泊しているホテルの廊下となります。
そこにいるのは、ほのかです。そしてドアをノックします。
この部屋はほのかの自室であるのですが、それはおそらくもう戻っているだろうルームメイトの雫を気遣ってのことです。
「雫、入るね」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そう言いながらほのかはドアを開けて部屋に入ります。部屋は窓から差し込む黄昏の光で橙色に染まっています。
そしてそには雫の姿はありません。ただベッドの上に先ほど試合で着た振り袖が畳まれて置かれています。
「……あ」
シャワーの音が聞こえたことで、ほのかは雫の居場所がわかります。
「……あ、あの……」
ほのかは言葉が続きません。
するとそれを察したのかバスルームから雫が話しかけてきました。
「……おかえり。ほのか」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「あ、……うん」
「バトル・ボード、優勝おめでとう」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「ありがとう」
「雫はざんねんだったね」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
ようやくしっかりと話せたほのか。
「……うん。ごめんね。約束守れなくて……」
浴室とのドア越しですが、雫の声はどこか張り詰めたような感じがあります。
そして大親友のほのかは当然それに気づきます。
「――そんなっ! そんなことっ!」
「……最初から勝てるとは思ってなかった。でも、手も足も出なかった……」
零れ出そうな感情を、グッと押さえ込んだような雫の声。
「あんなに練習がんばったのに……」
「雫っ!!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
雫の声、無理に押さえ込んだ感情。
そういうことにぜんぶ気づいたほのかは、浴室のドアを開けます。
すると中には、ただ立ったままシャワーを浴びている裸の雫がいました。
「………………悔しいよ」
涙声で振り向いた雫。頬を伝うのはシャワーだけではないのでしょう。
「……く、く、くぅ……」
いつも感情を見せない雫が見せた嗚咽。
がんばったのにまったく報われなかった悔しさが伝わります。
小学生の頃からの親友であるほのかにしても、雫が悔し泣きをする場面はほとんど見たことがないのだと思います。
ほのかも雫も小中学校時代は地元では敵なしの天才少女魔法師でした。
ほのかには雫、雫にはほのか以外に対等の相手が存在しなかったのですから、魔法に関してここまで悔しい思いは経験がなかったはずです。
それだけの素質があることからふたりとも魔法科高校にも一科生として合格し、学期末試験で学年2位と3位の成績を取ったのも事実です。
それなのにどうやっても”手も足も出ない”相手の出現は、自分たちが今までいた世界がどれだけ狭かったかの現実を突きつけられた思いだったのでしょう。
「……」
ほのかは制服姿のまま浴室へと飛び込み、雫の華奢な身体を抱きしめます。
「……濡れちゃうよ?」
「……いいよ」
ほのかの閉じられた瞼が細かく揺れます。ほのかもあふれそうな感情に堪えているのがわかります。
「……でも」
「いいの!」
制服が濡れてしまうことよりも、今この瞬間の親友を抱きしめたい気持ちの方がずっと大切なのです。
すると雫は目をつむりほのかの胸の顔を埋めます。
「……う。……悔しいよ。ほのか……!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「……うん」
シャワーの細かいお湯が降り注ぐ中、嗚咽し続ける雫をほのかはしっかり抱き留めているのでした。
いつもはドジっ子系ほのかを温かく見守る雫と言うのがふたりのふだんの図式ですが、このときばかりはほのかの方がちょっぴりお姉さんな雰囲気です。
この場面はふたりの絆がとても純粋で美しいことが伝わるとても良いシーンです。
残照がホテルを照らす時間となりました。
「ねえ、お茶行かない? 少しお腹すいちゃったの」
「うん」
ほのかが雫を誘ってラウンジに向かうのでした。
そして、ラウンジに入ったときのことです。
「はわわわ……」
濡れた制服を着替えてのジャージ姿のほのかが固まってしまいました。
そこには予期せぬ先客がいました。
深雪と達也です。
司波兄妹がテーブルに4つの椅子が向き合う席でコーヒーを飲んでいたのでした。
(……間が悪すぎるよおおぉぉ~……!!)
ほのかは心の声で絶叫します。
「ほのか、優勝おめでとう」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
深雪が微笑してほのかに祝意を伝えます。
「おめでとう、ほのか」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そして達也もほのかを祝います。
ですがほのかはどう立ち居振る舞えば良いのかまったくわからずに、あわあわしてしまいます。
「……あ、その、……ありがとうございます」
焦りのあまり、ペコリと頭を下げるほのかですが、そんなとき真横に立っている雫が発言します。
「達也さん、同席していい?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
雫のまさかの積極さにほのかはびっくりです。
「へ?」
ほのかはそんな雫の行動に驚きを隠せません。
「いいよ。勿論」
「へっ!?」
思いがけない展開にほのか、驚愕です。
四人が席に着きました。
先ほどまで達也の正面の椅子に座っていた深雪は達也の左隣に腰掛け、達也の正面が雫、達也の右側にほのかとなっています。
そしてテーブルの上には各種ケーキのスイーツが並びました。
さすがは女子ばかりの場だからでしょう。たぶん達也は甘味は好まないと思います。
(――い、いいのっ! この状況っ!?)
ほのかの心の叫びです。
さっき雫と戦ったばかりの深雪とその兄の達也がいることで居たたまれない気持ちでいっぱいなのです。
「優勝と準優勝のお祝いだ。ここは俺がご馳走するよ」
達也がそう告げます。
すると雫がひとつ頷きます。
「じゃあ、遠慮なく」
と言い、何事もなかったかのように苺ショートを口に運び、満足そうに微笑します。
するとその雫の表情を見ていたほのかが吹っ切れたように笑顔になりました。
「あ、あの……」
「ん?」
ほのかの問いに達也が反応します。
「私が優勝できたのは、達也さんのお陰です。ありがとうございました」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そう言ったほのかは達也にペコリとお辞儀をします。
このような素直でピュアな性格はほのからしいです。
「少し、だけどな」
そう返答した達也は視線をほのかから雫へと移します。
「雫には悪いことをしたな」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「なんのこと?」
さっき流した涙と悔しさなど、まったく欠片もない無表情平常モードで雫が問います。
「本来ならもっと拮抗した試合になったはずなんだが、俺の判断が甘かった。たった2週間でフォノンメーザーをモノにするには無理があったと思う」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
すると微笑を浮かべた雫が首を左右に振りながら言います。
「ううん。達也さんはぜんぜん悪くないよ。そもそもあれがなかったら反撃の手段すらなかったんだし、謝るのは私の方だよ」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そう言った雫は視線を深雪に向けます。
「深雪にも歯ごたえのない相手で申し訳なかったと思ってる」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
すると深雪が答えます。
「そんなことないわ。あのときは本当にびっくりしたもの」
と、試合中に感じた気持ちを嘘偽りなく雫に伝えます。
そして深雪は右隣の達也に視線を動かします。
「お兄さま。あれは本気で私を負かすおつもりでしたね?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「俺はふたりのどちらにも最善を尽くただけだ」
と、深雪の問いに当たり障りのない風に答える達也。
「……もう、この人は妹が可愛くないのかしら?」
深雪はちょっと拗ねた感じになります。
「手を抜いたりしたら、それこそ怒るだろうに」
この司波兄妹のやり取りを見て、ほのかは「えへ……」と笑みをこぼします。
そして雫も笑顔になり言葉を発します。
「達也さんのこんな所が見られるなんて……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
言われた達也は溜息を一つ吐きました。
この場面の雫、そして深雪、達也についてです。
雫は基本的に無口キャラ少女ですが、周囲を空気を察することができる観察眼の持ち主です。
そのことからこの場面で自分が率先して深雪たちの中に入っていかないと、ほのかも他のみんなも変に気を遣ってぎくしゃくすると判っていたと思います。
そのことから達也に同席してもいいかと尋ねて、ほのかと深雪と達也がいつも通りの関係に戻れるように行動したのだと思います。
また、達也も美雪も年齢以上の観察力を持っていることから、そんな雫の心意気を察したことで同席を受け入れて、更に深雪が達也に拗ねると言う演出をしたのだと想像できます。
なんにせよ、深雪も雫もお互いを敵でも憎い相手とも思ってはいません。
お互いとも親友と認識し、今回はあくまで競技会で試合をしただけの間柄なのです。
そのときでした。いくつもの足音が聞こえてきました。
「あれ~?」
「なになに? 4人で先にお祝い?」
「ズル~イ、私たちも混ぜろぉ!」
騒がしいのは和実、菜々美、そしてエイミィです。
その後ろにはスバルの姿もあり、第一高校一年女子チームが勢ぞろいしたことになります。
そしてテーブルの上にはフルーツタルトなどのスイーツがたくさん並び、イチゴのホールケーキなども運ばれて来ました。
もはやすっかり女子会です。しかもかなり豪華です。
ですがおそらく達也は食べないと思います。
さすがに人数が多くなったので席は2つに分かれました。
雫が座る席にはほのかと和実、そしてエイミィがいます。
「雫すごかったよぉ~! かっこ良かったぁ~!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
エイミィ大絶賛です。
「負けちゃったのに?」
雫が問います。
「勝ち負けじゃないぉ~。全力で戦う雫、すてきだったあぁ~。リスペクト~!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「ふふ、ありがと」
雫も素直に喜びます。
そして達也の方の席では深雪と菜々美とスバルがいます。
「司波くん、明日のミラージ・バット、よろしく頼むよ」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
スバルが男前(?)の表情でそう依頼します。
「ああ、ほのかのCADと合わせて朝までには調整しておく」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「ふふ……、ボクもようやく君の恩恵を受けられる。期待してるよ」
これは言葉通りの率直な感想だと思います。
達也が担当した雫、エイミィ、そして深雪の試合を見ていたのですから、期待するなと言う方がムリです。
「よおぅし、ほのかとスバルでワンツーフィニッシュを決めて、明日もお祝いするぞぉ~!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
エイミィがケーキが刺さったフォークを高々と掲げて立ち上がり、ノリノリで声を上げます。
深雪もほのかも、そして雫も良い笑顔です。
そして翌日2095年8月9日。九校戦7日目。ミラージ・バット新人戦予選となります。
観客席には第三高校の愛梨、栞、佐保、沓子の姿が見えます。
そして競技エリアにはミラージ・バット用の装束に身を包んだスバルの姿があります。
背が高く細身の美少年のような容姿のスバルは、グレーのブラウスに黒色のジャンパードレス基調としたモノトーン衣装に身を包んでいます。
それは女装した美少年にも見えなくもないなかなかカッコイイ姿です。
ミラージ・バットは、ホログラムを用いた競技で、空中に浮かんだ光球をステッキで叩くことで得点を得る魔法競技です。
いつどこに出現するかわからぬ光球をいち早く発見する視力も重要ですが、光球は常に頭上高くに出現することから、そこまでどれだけ速く跳躍して接近できるかが勝負の分かれ道となります。
そして試合が開始します。
そしてすぐさま頭上遙か上に赤い光球が出現しました。
それを発見したスバルはすぐに直上に飛び上がります。
空中に飛び上がったのは他校の選手とほぼ同時に思えるのですが、スバルはその選手たちをグングン引き離して上昇すると余裕を持ってステッキで光球を叩きました。
「――なんだコレは? めちゃくちゃ身体が軽い!」
身体がまだ宙のままの状態で、スバルは思わず感嘆します。
そして麓の足場に着地するや、またすぐさま跳躍を行います。
「――行ける!」
スバルはこの試合で初めて使った達也の手によるCADのチューニングに、予想以上の手応えを感じているようです。
「あの選手、クラウド・ボールで対戦したときよりも圧倒的にキレがいいわ」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
実際に戦った相手のことだけに愛梨はそのスバルの動きの違いが如実にわかったようです。
「……また司波達也。やはりこの技術者が担当すると段違いの実力を発揮するようね」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
栞は理論派だけあって、担当エンジニアが達也であることに注目したようです。
「そして本戦のミラージ・バットでも司波深雪の担当……。ふ……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
愛梨は不敵な笑みを浮かべました。
この愛梨と栞の会話ですが、このシーンで愛梨も栞も達也と美雪の苗字が同じことについての会話はありません。
”司波”と言う苗字は珍しい部類に入ると思うのですが、たまたま同学年にいる苗字が同じなだけでまったくの無関係と思っているのか、それとも2人があまりにも桁違いの実力なことからもしかしたら親戚かもしれない程度は思っているのか、どっちなのかが謎です。
ですが、”本篇アニメ:魔法科高校の劣等生”では、愛梨たちと同じ第三高校の一条将輝は達也と美雪が同じ苗字なのにも関わらず九校戦の閉幕のパーティの席で初めて兄妹だったことを知って狼狽えるシーンがありました(魔法科高校の劣等生 第18話「九校戦ⅩⅠ」)。
そのことから考えると愛梨と栞も将輝同様に兄妹とは気づいていない可能性が高いです。
そして試合は進みます。
同じく『ミラージ・バット』新人戦予選ですが、今度はほのかの出場です。
ほのかはスバルの衣装とは異なり、女の子らしさを強調したかわいらしい姿です。
頭に付けたピンク色の花飾りのカチューシャと、青色のドレス風ワンピでフリルがたくさん付いた裾が大きく膨らんだスカート、そして先端には大きなピンクの宝石が付いたステッキは魔法少女を思わせます。
ちなみにですが”本篇アニメ”ではスバルもほのかもこの衣装とは違い、ふたり同じ衣装で妖精を思わせるものでした(魔法科高校の劣等生 第14話《九校戦Ⅶ》。
(――スバルは初戦突破、私もがんばらないと。担当してくれる達也さんのためにも)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
ほどよく緊張が抜けた感じの良い笑みで、ほのかはそう心でつぶやきます。
(――そして私にはこれが……)
試合開始の合図直後、ほのかの瞳に細かな光の粒たちが揺れ始めます。
ほのかの先天性魔法である《光のエレメンツ》が試合開始の合図と同時に発動したのです。
そして直後、ほのかは誰よりも先んじて空高く跳躍します。
「えっ? もう飛ぶの? まだホログラムが出てないのに?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
他校の選手たちの動揺の声が聞こえます。その言葉通りに空にはまだ光球は出現していません。
そしてほのかが空中の一箇所にステッキを振ると、それと同時に出現した光球がステッキに当たり出現したと同時に消滅します。
「――えっ!! 飛んだとこにホログラムがっ!?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
あり得ない事態に他校選手の驚愕の声が響きます。
それもそのはずで、ほのかは光球が出現したその瞬間にステッキで叩き得点にしているのです。
もちろんこれは《光のエレメンツ》であるほのかならではのアドバンテージです。
光が出現する場所が事前に察知できるのですからルール違反ではありませんが、かなりチートなので結構無敵で無双です。
しかし他校の選手たちも、当然そのまま手をこまねいているわけにはいきません。
そのため飛翔するほのかを追うのですが、達也謹製CADの性能で飛翔速度に差があり、そして光球の出現地点を先読みできる能力のほのかの敵ではありません。
「……見えてから飛んでも間に合わない」
「……なんで予想できるの?」
他校選手たちが悔しげに言葉を発します。
「さすが《光のエレメンツ》の本領発揮じゃな。常人の目には見えない光の発生を、あやつは知覚できる」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
第三高校の観客席では、『バトル・ボード』で決勝を争った沓子がそう告げました。
自身もエレメンツ持ちであることから、この『ミラージ・バット』がいかにほのか向きであるかがわかっています。
「……光井さんも里見さんも順調ね?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
第一高校の観客席付近で立って観戦していた深雪に、後方から近づいた真由美が話しかけます。
「はい。ふたりとも決勝進出できそうです」
「ここまでの女子の新人戦は、すべて上位入賞。今年の新入生は頼もしいわね?」
「ありがとうございます。ですが……」
と、深雪はちょっと言葉を濁らせました。
「わかっているわ。達也くんのお陰、でしょ? ……確かに今回の九校戦、達也くんがいなかったら一高の成績はどうなっていたか?
……ふ。……あらためてお礼を言わなくっちゃね?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
真由美はそう言ってウインクしました。
これはなにに対してのウインクなのか不明です。
そして深雪もそれが意味することすべてはわかっていないと思います。
ですが深雪はそれを好意的に受け取ったようです。
真由美は十師族七草家が誇る諜報力、そして自身がネットワークへの高度なハッキング能力を持っていますので、本来知り得ない情報をいつの間にかしっかり持っていることが多々あります。
そのためこのウインクには達也、そして司波兄妹、さらにはその背後のどこまでの情報を掴んでいるのか、そしてなにを要求したいのかがまったく不明なので、当事者からすれば少々不気味な部分があります。
そして本人は小柄な美少女であることから小悪魔的な蠱惑さが感じられます。
そのことから真由美のウインクにはなにか深い意味があるのでは? と錯覚させられることがあります。
(……いくら四葉家が、お兄さまに辛く当たろうとも、こうして真価が認められていく。良かった。この高校に入学して)
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
深雪はこれまでの九校戦で達也が技術スタッフとして手がけた選手たちが活躍する場面の思い返しているのでした。
そして舞台は試合会場へと戻ります。
「やったあ~っ!! やりましたよっ!! 達也さんっ!!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
ほのかが勝利した高揚感で、まだ空中なのに喜び声で叫びます。
ですが達也の名前まで叫んでいるのは、もちろん感謝の気持ちなのでしょうが、いくら空中にいるとはいえ大勢の観客の前での名前呼びですから、あとで真っ赤になって後悔しそうなのが目に浮かびます。
そして舞台は変わります。
試合は『モノリス・コード』新人戦となっています。
『ミラージ・バット』は女子だけの競技でしたが、『モノリス・コード』は男子のみの競技となります。
この競技は戦闘要素が強い競技で、1チーム3名で構成されます。
勝利条件は相手チーム全員を戦闘不能にするか、相手チームのモノリスと呼ばれる巨大な黒石版のような物体に隠されたコードを端末に打ち込むことで決まります。
その他の注意事項としては魔法による攻撃はルール内だが、直接的な物理攻撃は一切禁止となっていることです。
そして第一高校の選手たちが大勢座る観客席の前には巨大なモニターがあり、間もなく始まる無機質なビル群が並ぶ市街地ステージが映し出されています。
「――さあ、モノリス・コードの新人戦。第一高校対第四高校の試合が間もなく始まります。こちらは3名ずつのチーム同士。
抽選で選ばれたステージで敵陣にあるモノリスを巡って魔法で争う競技です」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
男性アナウンサーの声が響き渡りました。
廃墟ビルのがらんとした一室に防弾ヘルメットや防弾ジャケットのようなものを身につけた第一高校一年男子の3名が腰を落としCADを構えて試合開始を待っています。
第一高校のチームは、一年A組男子で達也や二科生たちに異常なまでの嫌悪感を持つ森崎駿がチームリーダーです。
「ここまでは女子の好成績ばかりが目立っている。俺たちも絶対に優勝するぞ」
女子と言うよりその背後にいる技術スタッフの達也憎しが見え隠れしていて、いさかか動機が不純ですが、それでも勝利への執念を感じさせる森崎が、振り返ってチームメイトの2人に伝えます。
「そういや女子は司波がエンジニアを担当した競技は全勝らしいな」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
「ホントかよ?」
2人のチームメイトの一年男子は森崎が”優勝”と言う言葉を口にしたことで連想したのか、一年女子の試合結果と達也の話題を口にします。
「――選手が優秀だっただけだっ!! 司波の力じゃないっ!! 俺は絶対認めないぞっ!!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
どうやら森崎は相当拗らせているようです。
妹の深雪はもちろんですが、ほのかや雫、エイミィ、スバル、和実、菜々美たち女子選手一同や真由美、克人、摩利の最強世代の三巨頭など彼ら彼女らの学内インフルエンサーたちが今では全員、達也を評価し、信頼している実情をまったく理解していないようです。
老婆心ながら、どこかで折り合いをつけないと森崎はこの先”ぼっち”となってしまうのではと心配になってしまいます。
それを感じたのか、チームメイトの2人はやれやれと雰囲気でため息を漏らすのでした。
「試合を開始します。10、9、8、7、6、5、4……」
男性アナウンサーが秒読みを開始し「4」まで告げた時でした。
一高チームが潜む廃ビルの天井に突如魔法陣が浮かび上がります。
そして一気に崩落する天井。
たくさんの大きなコンクリート片が森崎たち3名を襲いました――。
その様子はビルの外からでもよくわかり、崩落した勢いでコンクリート片と粉塵が建物四方の窓から一気に吹き出し視界を塞ぎ、そんな中、森崎の悲鳴が響くのでした。
魔法科高校の優等生 第10話の見どころ
「魔法科高校の優等生」第10話。深雪ちゃんVS雫ちゃんの決勝戦回。2人の対決描写の合間にそれぞれのお兄様の回想が挿まるあたりがまさに〝さすおに〝クォリティ。何が起こってるか分かり難い地味な試合をそれぞれの台詞で解説してくれるのも親切設計なのです(笑)。#mahouka pic.twitter.com/sQMFG9r3jv
— 鳴神 (@seimei7777) September 5, 2021
――戦いの描写が進化しています――
今回の『魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」』では、この物語全体の目玉でもある”司波深雪VS北山雫”と言う親友同士の激突が描かれています。
この戦いは原作小説はもちろんですが、本篇アニメである「魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ」でも登場するとても印象に残るシーンとなっています。
ですが、司波達也が主役である”本篇アニメ”でのこの試合のシーンの時間が短く、あくまで九校戦で行われた試合のひとつとしての扱いでした。
内容としては試合が始まるとすぐに深雪が氷熱地獄《インフェルノ》を発動させ、雫が”なんらかの魔法”を深雪の陣地全体に発動させるのですが、深雪によって事象改変を阻止されてしまい、早々と《フォノン・メーザー》を使用するのです。
そして最後は深雪の《ニブルヘイム》、そして再度の《インフェルノ》で氷表面の液体窒素を一気に気化させての大爆発で雫側のすべての氷柱を吹き飛ばして試合終了となっており、放映時間もわずか2分少々でした。
比較のために”本篇アニメ”と”優等生”の深雪VS雫の放映時間の比較いたします。
本篇アニメ「魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ」:02分13秒
優等生「魔法科高校の優等生 第10話〈負けたくない〉」:15分36秒(途中に回想シーンなどを含む)
このように扱いがまったく異なります。
ですがこれは達也が主役の”本篇アニメ”と違い、深雪、そして雫も主役であるこの”優等生”ではこの試合の扱いが向上するのは当然のことです。
特に”優等生”では深雪、雫のそれぞれがこの試合に至るまでに経験したシーンもとても重要なので試合の途中に挟む形で表現されているのは見る側にとって想いが伝わりやすくなっているのが特徴です。
そしてこの戦いをより見応えのある形にしているのが、雫が初手から使用した振動系高等魔法『共振破壊』です。
この魔法は国際的なAランクの魔法師であり、雫の母でもある北山紅音(きたやま べにお)の代名詞と言える魔法です。
雫は紅音の娘と言うこともあり、母からその魔法を引き継いだ高校生離れした実力を持っていることになります。
それを最初から行使したと言うことは文字通りの出し惜しみなしで雫は本気で深雪に勝とうとしているのです。
この『共振破壊』は、当然、深雪は警戒していました。
深雪がいつ雫が紅音の娘だと知ったのかは不明ですが、兄があの達也ですから深雪の友人たちの身辺調査は完璧に済ませているはずです(もしかしたら、案外あっさりとほのかか雫自身から聞かされたのかも知れません)。
そのことから雫が紅音の娘であること、紅音がAランク魔法師で『共振破壊』の名手であることに行き着くのは容易かったと思われます。
そしてその北山「旧姓:鳴瀬(なるせ)」紅音ですが、現役時代は十師族と同等の実力だったとの情報もあります。
十師族家ではないにも関わらず彼らと肩を並べられる実力と言うと、ちょうどこのときの第一高校三年生である渡辺摩利が思い浮かびます。
近接戦闘と香料を使っての戦闘で対人戦闘の達人とも言える摩利は、七草家の真由美、十文字家の跡取りである克人との3人で三巨頭と呼ばれていることから、その摩利に当てはめて考えると紅音の立ち位置は相当なものだとわかります。
その紅音が得意としたのが『共振破壊』ですが、この魔法は広範囲の目標群に振動を与え、いちばん共鳴する部位に破壊に最適な振動数で激しく揺さぶることで範囲全体を破壊すると言うかなり物騒な魔法です。
破壊対象は固体ならばおそらくすべて可能です。
「共振破壊は陣地全体を振動させる領域魔法。共振を呼ぶ前に振動を止めるっ!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
これは深雪の言葉で、『共振破壊』の唯一とも言える弱点を言い表しています。
『共振破壊』は発動さえすればとても強力な魔法ですが、いちばん共鳴する部位を見つけるまでに時間がかかるのが欠点なのです。
それを知っている深雪は雫の術中に嵌まらぬように自陣の氷柱すべての振動を止めるのでした。
「共鳴点に到達する前に振動を止めた……。さすがだね、深雪」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
これは雫のセリフです。雫も深雪が対抗手段を講じるのは当然わかっていました。
ここまで雫は自陣の氷柱たちが深雪によって事象改変されぬように情報強化をしつつ、『共振破壊』を行使しています。
同時にこれだけのことができる魔法師は高校生ではまずいないと思われ、それは対戦相手の深雪も感嘆しています。
「……今までの魔法じゃ、深雪には届かない。……だったら!」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
そしてここで2つのCADの同時操作です。
通常2つのCADを同時に操作しようものなら魔法が相克を起こしてしまい、まともに発動すらできません。
そのことから雫が2つめになる拳銃型CADを振り袖の袂から取り出したとき、会場中がざわめいたのも無理はないと思います。
そしてこの2つめのCADから発動されたのが『フォノン・メーザー』でした。
『フォノン・メーザー』は簡単に言ってしまえば熱線銃です。
これももちろん高等魔法なので、魔法師なら誰でも使える訳ではありません。
ですが結果としては『フォノン・メーザー』の使用も虚しく、深雪側の氷柱は1本も砕けることがなく、深雪の完全試合となりました。
ですが試合中に使われた魔法は驚愕すべきものばかりでした。
まとめますと、
深雪:氷熱地獄《インフェルノ》、ニブルヘイム
雫:共振破壊、フォノン・メーザー
”本篇アニメ”には登場しなかった『共振破壊』の公開だけでなく、放映時間も長いため他の魔法も十分堪能できることから、”本篇アニメ”の試合シーンでは物足りなかった方もこちらの”優等生”の方をご覧になれば満足できると思います。
――この世にふたりだけ……。そして笑顔――
九校戦『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子の決勝シーンは”本篇アニメ”にも登場する重要なシーンなので、それにまつわる他のエピソードもボリューム増となっています。
そのひとつが、決勝戦後、深雪に敗れた雫をほのかが慰めるシーンです。
このシーンは雫とほのかの友情が印象的な、すばらしい場面となります。
ですが、このシーンもまた”本篇アニメ”である「魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ」と今回の「魔法科高校の優等生 第10話〈負けたくない〉」では放映時間が異なります。
もちろん達也が主役の”本篇アニメ”の方が短くて、雫、ほのかたちが主役の”優等生”では長くなります。
ですがただ長くなっただけでなく、”本篇アニメ”では少々心残りとなってしまった場面がしっかり補完されており、その後の展開も気持ち良く見られる作りとなっています。
また、しっかり作り込みされているだけあって、このほのかが雫を慰めるシーンもその分長くなっているのが特徴です。
本篇アニメ 「魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ」:1分17秒(ホテルの部屋でのシーンのみ)
”優等生” 「魔法科高校の優等生 第10話〈負けたくない〉」:4分25秒(ホテルの部屋からラウンジのシーンまで)
ここで比較参考のために”本篇アニメ”「魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ」でのシーンのあらすじを掲載いたします。
部屋に試合で着た緑色の浴衣姿のままでいる雫。窓に向いていますが風景は見ずに、ただ下を見ていた雫ですがドアが開く音に振り返ります。
そこに立つのは無言のほのかです。
「……優勝、おめでとう」
雫のその言葉にすぐに返答できず、思わず下を向くほのかですが、やがて顔を上げました。
「……ありがとう」
素直に祝意を受けますが声はか弱いです。雫の心中を察すると手放しに喜べないからだろうと思います。
そしてほのかは部屋の中を進み、ベッドに腰掛ける雫の横に立ちます。
「……雫はざんねんだったね」
引用元:魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ
「うん。……くやしいよ」
その言葉を聞いたほのかはそのままベッドに腰を下ろし雫を抱きしめます。
「……雫」
「最初から勝てるとは思ってなかった……」
「……そう」
「でも……。手も足も出なかった。……くやしいよ。ほのか」
引用元:魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ
雫の声は嗚咽混じりとなります。ほのかは自分の胸に顔を埋める雫の後頭部を優しくなでます。
「ざんねんだったね……」
そして少しだけ沈黙した後、ほのかは陽気ないつもの声で言います。
「ねえ、お茶行かない? 少しお腹が空いちゃったの」
そう言うと雫の返事を待たずに立ち上がり、座っている雫に手を差し伸べます。
すると雫は少しだけ微笑を見せてほのかの手を取り立ち上がります。
「……ありがとう」
これが1分17秒の内容です。
このシーン全編に渡って部屋にはオレンジ色の夕陽が差し込み、静かな旋律のピアノのBGMも相まって、悲しくも美しい世界となって描かれており、まるでこの世にもうふたりだけしか生き残っていないかような世界観を醸し出しています。
ですが、これはこれですばらしいシーンなのですが、見ている側としてなんだか胸が締め付けられる気分になるのは良いとしても、そのまま救われないような気分になってしまう感じがどうしても残りました。
つまり、ふたりをこんな気持ちにさせた原因は試合に勝った深雪なのですが、別段深雪が悪いことをした訳でもありませんし、その担当エンジニアの達也が悪い訳でも、もちろんチームメイトのエイミィたちが悪い訳でもありません。
要は試合の結果に過ぎず、またその試合を望んだのは誰であろうその雫本人なのです。
ですが、”本篇アニメ”はここでこのシーンは終了となり、このあとは達也が自室のベッドで三高の将輝や真紅郎のことで思いにふける場面となりました。
そしてその次はテント村にある第一高校の天幕でのシーンとなり、『モノリス・コード』新人戦で第一高校の森崎たちが第四高校に規則違反の魔法攻撃を喰らい全員負傷したと言うニュースが飛び込んでくるシーンとなります。
そして達也にその事を報告するのが雫なのですが、もういつもの雫に戻っており、先ほどのほのかとの黄昏シーンに見せた悔しさは微塵も感じられませんので、もう吹っ切れたと解釈しても良いのですが、なんとも物語的なつながりに消化不良を起こしてしまった感じもありました。
ですが、それに関しては作り手である”優等生”の製作スタッフの方々も同様だったのか、「魔法科高校の優等生 第10話〈負けたくない〉」では、部屋でのシーンの直後にラウンジのシーンがつながります。
「ねえ、お茶行かない? 少しお腹が空いちゃったの」
奇しくもこのほのかのセリフは”本篇アニメ”と”優等生”のどちらとも一字も違わぬまったく同じ言葉です。
部屋でのシーンの最後にほのかがこう言った後に”本篇アニメ”ではそのまま達也の回想シーンへと変わるのですが、”優等生”ではほのかのセリフの通りにラウンジへと舞台が移動しています。
そしてラウンジに到着したほのかと雫ですが、そこには先客として深雪と達也がお茶を飲んでいたのです。
自分と雫の部屋での黄昏シーンの主原因である深雪と達也に鉢合わせてしまった間の悪さに焦りまくるのがほのかです。
ですが、ここで雫が大胆な行動に出ます。あろうことか達也に、
「達也さん、同席していい?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
と尋ねたからです。
雫は寡黙少女ですが実はとても観察力があり、空気を読める人物です。
そのことからほのかに、深雪、達也に対する気まずさを作る原因となったのは自分なのだから、その自分から深雪、達也の輪に入って行かなければ、ほのかにもわだかまりの感情をいつまでも共有させることになってしまいます。
更に言えばエイミィたちチームメイトにも、気まずい空気を吸わせることになってしまいます。
そのことから雫は自分から動きました。
「達也さん、同席していい?」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
と……。
この言葉で雫は深雪、達也との縒りを戻したいことを司波兄妹に遠回しに伝えました。
そしてそれは達也たちも同じ思いだったことからいっしょに同席することにし、ケーキを雫に勧めたのだとわかります。
そして会話が進み、達也が担当エンジニアと言う立場上、深雪にも雫にも片方だけの肩入れできないと弁明すると深雪がちょっと拗ねるなど親しげで明るいシーンが続いて、
「達也さんのこんな所が見られるなんて……」
引用元:魔法科高校の優等生 第10話「負けたくない」
と、雫が楽しげにそう告げました。
そしてその後はエイミィたちチームメイト全員が集合し、和気藹々の祝勝会となりました。
そしてこのラウンジでの祝勝会シーンの最後は、なんのわだかまりもないとびきりの笑顔の雫の顔のアップとなりました。
この笑顔があることで、深雪に負けて落ち込んでいた部屋での黄昏シーンで、この世界最後の生き残り的な暗い雰囲気を出していたネガティブ雫とネガティブほのかのままじゃなくなったことで、見る側も”心残り”がなくなりました。
見たかったのは深雪との仲直りの笑顔です。
魔法科高校の優等生 第10話のネタバレ感想
『魔法科高校の優等生』第10話名言ピックアップ①
「私は、あなたに嫉妬してる……あなたの力と技に……だからこそ、雫!私はあなたに…負けたくない!」(深雪)#mahouka #タイムズ名言
このあと放送の第11話名言もお楽しみに♪https://t.co/6z46pTzF8x pic.twitter.com/8dwm6mF01L
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――やはり兄妹。狙い所は同じでした――
今回の「魔法科高校の優等生 第10話〈負けたくない〉」で、いちばんの見せ場はもちろん司波深雪VS北山雫と言う親友同士の激突です。
『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子の決勝で当たったふたりの試合は、まさかの高等魔法の応酬と言う高校生の試合とは思えない激しいものとなりました。
ですが、結果は雫側の氷柱は全滅で自軍の氷柱は1本も倒されていないと言う深雪のパーフェクト勝ちとなりました。
そして深雪が試合を決めた魔法が振動系系統魔法の氷炎地獄《インフェルノ》でした。
しかし確かに勝負を決めたのは《インフェルノ》でしたが、その直前にこの《インフェルノ》の威力を激増させるために布石を打っています。
それが振動減速系広域冷却魔法《ニブルヘイム》でした。
先に《ニブルヘイム》を放ったのには重要な理由があり、雫側陣地の12本の氷柱の表面や地面に霧となった液体窒素の水滴と水たまりを設置するためでした。
これが布石となり、《インフェルノ》の炎の灼熱がその水滴を一気に気化させたため火山噴火のような爆発が起こり雫側のすべての氷柱が吹き飛んだのです。
つまり、水滴が爆薬のような役割をしたのですが、爆発の効果を発揮させたのが700倍と言われる液体窒素の膨張率でした。
物質が気化した際の膨張でいちばん身近なものは「水」だと思われます。
「水」の膨張率は1700倍と言われていますが、水が沸騰したときに笛付きのやかんがピーッと鳴るのもそうですし、蒸気機関車や発電所のボイラーも水が気化した蒸気の力を利用しているのはご存じだと思います。
この”水滴”をターゲットにして発動させた強力な魔法に既視感がある方も多いと思います。
それは司波達也が使う戦略級魔法である《マテリアル・バースト》だろうと思います。
このシーンが登場したのは”本篇アニメ”である「魔法科高校の劣等生 第26話《横浜騒乱編Ⅷ》」です。
横浜への奇襲に失敗した大亜連合の工作船が逃走した際に、達也が相模湾上まで移動したその船に《マテリアル・バースト》を発動させています。
そしてその際の目標となったのが甲板上に付着した一滴の水滴(50mg)でした。
《マテリアル・バースト》とは、質量すべてをそのままエネルギーに変換する分解魔法です。
アインシュタイン公式「E=mc^2」が理論となっており、質量をロスなくエネルギーに変換するため非常に効率が良く、わずか50mgの水滴でも工作船を完全に消滅できるすさまじい威力があります。
その威力の計算方法は複雑なのですが、どうやら1gの重さの1円玉1枚を《マテリアル・バースト》で質量からエネルギーに変換した場合の破壊力は、戦略級核ミサイルと同等以上になるようなので一国が滅ぶと言っても過言ではないようです。
そのことから《マテリアル・バースト》は戦略級魔法を越える”超戦略級魔法”と呼ばれることもあるようです。
この《マテリアル・バースト》ですが、原作小説を含めれば5回行使されています。
●1回目は2092年8月11日。
沖縄侵攻のため沖縄県名護市付近に接近した大亜連合の艦隊に向けて行使。
目標としたのは達也が敵艦隊に向けて発射した一発の弾丸。
(アニメ 魔法科高校の劣等生 追憶編)
●2回目は2095年10月30日。
横浜から逃走中の大亜連合の工作船に海上にて行使。
目標としたのは工作船の甲板上に付着した一滴の水滴。
(アニメ 魔法科高校の劣等生 第26話《横浜騒乱編Ⅷ》)
●3回目は2回目の翌日である2095年10月31日。
横浜侵攻に呼応して日本侵攻のために朝鮮半島南端の鎮海軍港に集結した大亜連合の艦隊に行使。
目標としたのは艦隊旗艦の艦橋上部にある軍艦旗を掲げるポール(もしくは軍艦旗)。
(アニメ 魔法科高校の劣等生 第26話《横浜騒乱編Ⅷ》)
●4回目は2096年3月29日。
地球に向けて接近中の小惑星2095GE9〈ジーク〉の破壊に行使。
目標は小惑星2095GE9〈ジーク〉。
(劇場版 魔法科高校の劣等生《星を呼ぶ少女》)
●5回目は2100年6月21日。
地球へ衝突の恐れがある彗星に行使。
目標は3億km彼方の宇宙空間にある彗星。
(収録アニメなし)
ここでお断りいたしますが、上記を見て判る通り”水滴”の質量をエネルギーに変換し攻撃したのは一度だけで、2回目の大亜連合の工作船の破壊のときだけとなります。
《マテリアル・バースト》は物質であればなんでも爆薬代わりにできることから、”水滴”を狙ったのはたまたまでした。
しかし、常人には思いも付かないモノを爆薬にする発想が深雪も達也も同じことから、『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子決勝で液体窒素の”水滴”を爆薬にする着想に既視感を覚えたためネタバレとしました。
魔法科シリーズは魔法の物語に物理学的着想を入れた画期的な作品です。
現代ファンタジー作品や異世界ファンタジー作品などでは魔法が存在する根拠として、”神からの授かり物”や”炎や氷などを司る精霊の加護”などのファンタジー要素を世界観とすることが多いです。
ですが魔法科シリーズの原作者である佐島勤さんは、魔法が行使される根拠に物理学を持ち込みました。
そのことから《マテリアル・バースト》を含むすべての魔法に物理学的な根拠が含まれるのが、魔法科シリーズ作品の魅力だと思います。
――フルマニュアルからわかること――
「――なんだコレは? めちゃくちゃ身体が軽い!」
これは『ミラージ・バット』新人戦予選で第一高校の里見スバルが試合中に発した言葉です。
待ちに待った司波達也が調整したCADを初めて使った感想でした。
九校戦で達也が担当した第一高校一年女子の競技は、全勝と言う快挙となりました。
それは達也のCAD設定がアバウトに調整された汎用設定ではなく、選手ひとりひとりの特性に細部まで調整された匠の技とも言うべき技術力があったからです。
そのことから選手たちが普段以上の力を発揮できたことで勝利につながりました。
これらの実績から、もう達也のエンジニアとしてのずば抜けた才能を認めない者はいませんでした(1年A組森崎駿を除く)。
では達也と他のエンジニアとの違いはどこにあるのでしょうか?
この件についてはこの「魔法科高校の優等生 第10話〈負けたくない〉」をいったん離れなくてはなりません。
その理由は達也の異能について、スピンオフ作品である”優等生”では描写が割愛されてしまっているからです。
そのためしばらくは”本篇アニメ”である「魔法科高校の劣等生」でのシーンをご紹介することになります。
「――確かに風紀委員は実力主義だが、実力にもいろいろあってな。達也くんには起動式を直接読み取り、発動される魔法を正確に予測する目と頭脳がある!」
引用元:魔法科高校の劣等生 第2話 入学編Ⅱ
これは達也と深雪が第一高校に入学した早々の夕日差し込む生徒会室の中で風紀委員長の渡辺摩利がした発言です。
「まさかっ!? 基礎単一工程の起動式だってアルファベット3万字相当の情報量があるんですよ。それを一瞬で読み取るなんてできるはずがないっ!」
引用元:魔法科高校の劣等生 第2話 入学編Ⅱ
二科生である達也の風紀委員会入りを反対した生徒会副会長である服部半蔵が摩利に言い返します。
「常識的に考えればできるはずがないさ。だからこそ彼の特技には価値がある――」
引用元:魔法科高校の劣等生 第2話 入学編Ⅱ
と摩利が服部の拒否をきっちり否定しました。
これは前日の放課後、校門付近で深雪にお近づきになりたい森崎たち一科生と、達也たちといっしょに帰りたい深雪、そしてエリカ、レオ、美月の二科生の間で起きたトラブルのことです。
そして居合わせたほのかが、一触即発の騒ぎを鎮めようとして魔法を放とうとしたのですが、やって来た真由美、摩利に魔法行使(未遂)を見つかってしまい、ほのかが摩利に連行されそうになった際に達也が明かした能力でした。
この校門での魔法行使未遂事件は、もちろん”優等生”でもきちんと描かれていて”優等生”の主役のひとりであるほのかの心理描写がしっかりと伝わってくる良いシーンなのですが、達也の能力に関しては”本篇アニメ”の方がされているので引き続き”本篇アニメ”の方をご紹介いたします。
次が入学式の日の放課後の校門魔法行使未遂事件で繰り広げられた達也の能力の開示となります。
登場人物は司波達也、司波深雪、生徒会長の七草真由美、そして風紀委員長の渡辺摩利です。
場面はほのかが魔法を行使しようとしたことについて、達也が摩利に弁明するところです。
「――では、そこの女子が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」
引用元:魔法科高校の劣等生 第1話 入学編Ⅰ
摩利が達也にするどく問います。
「――あれはただの閃光魔法です。威力もかなり抑えられていました」
引用元:魔法科高校の劣等生 第1話 入学編Ⅰ
その言葉に真由美がピクリと反応します。達也になにかを感じたようです。
そして摩利は値踏みするような目で達也を見ました。
「ほお、どうやら君は展開された起動式を読み取ることができるらしいな?」
引用元:魔法科高校の劣等生 第1話 入学編Ⅰ
深雪が目を見開きました。
達也の秘密が摩利に悟られたのに気づいたようです。
「実技は苦手ですが分析は得意です――」
引用元:魔法科高校の劣等生 第1話 入学編Ⅰ
このように達也は展開された起動式から魔法の種別、威力などを一瞬で読み取ることができる異能を持っています。
そのことはつまりCAD上で展開される術式の意味をすべて理解できていることとなり、プログラミング言語、ソースコードを完全に理解していることとなります。
つまりプログラムの記述の間違いや命令が重複しているような余計な箇所などがあれば一発でわかるということになります。
またこの日のその後、駅までの帰り道に達也はエリカ、レオ、美月や深雪、雫、ほのかといっしょになります。
その中の会話には次のようなものがあります。
深雪のCADは達也が調整しているとの話題となり、柴田美月が次のように話します。
「――それだってデバイスのOSを理解できるだけの知識がないとできませんよね」
引用元:魔法科高校の劣等生 第2話 入学編Ⅱ
魔法技術系志望の美月だけあって的確な言葉です。
「CADの基礎システムにアクセスできるスキルもないとな……。大したもんだ」
引用元:魔法科高校の劣等生 第2話 入学編Ⅱ
熱血漢なので単細胞と思われがちな西城レオンハルトも、達也がそれができる意味はしっかり理解しています。
このように達也はアプリケーションだけでなくOSにも精通していることが判明しています。
そしていちばん大事な場面としてはやはり下記になるかと思います(魔法科高校の劣等生 第8話《九校戦Ⅰ》)。
舞台は九校戦前。適任の技術スタッフが見つからず疲労困憊していた生徒会長の七草真由美でしたが、生徒会書記の中条あずさから達也が適任ではと指摘される場面がありました。
目立つのを避けたい達也は就任を渋りますが、真由美、摩利、あずさだけでなく、妹である深雪からも懇願されたため渋々承諾します。
ですがやはり二科生の壁があり反対する一科生たちがいることですんなりとは決まらなかったのですが、部活連会頭の十文字克人の発案で二年生の桐原武明の個人所有のCADから九校戦競技用のCADにOSごと丸々コピーする試験が行われることになりました。
そこで達也が他の技術スタッフとはまったく異なる技法で作業を行い始めたことから、小さいですが波紋が起こりました。
コンピュータ画面にはこの2095年ではとても古式ゆかしく感じられる”数字とアルファベット(ソースコード)”の羅列がびっしりと並び、目にもとまらぬ速さで次々と処理されていきます。
達也が作業している画面とその手元を見た技術スタッフのひとりである中条あずさは「ふえっ?」と言う驚きの声を漏らしました。
「なにやってんだアイツ?」
「今時、キーボードオンリーなんて古すぎる」
引用元:魔法科高校の劣等生 第8話 九校戦Ⅰ
と達也の行っている技法を揶揄する生徒たちがいました。
そんな中、二年生の技術スタッフの五十里啓が感嘆の声を上げます。
「へえ! 完全マニュアル調整か」
「ねえ、啓。それってスゴイの?」
引用元:魔法科高校の劣等生 第8話 九校戦Ⅰ
啓の許嫁でもある千代田花音が問いかけます。
「うん。ただ彼がやっていることがなんなのか、わからない人の方が多いみたいだ」
引用元:魔法科高校の劣等生 第8話 九校戦Ⅰ
この後、実際のユーザである桐原武明がコピーされた九校戦競技用のCADを装着し魔法を発動させてみると、全く違和感がないことが判明しました。
しかしそれでも二科生を認めたくない一科生たちからは重箱の隅をつつくようなケチが入ります。
「――彼が見せてくれた技術は、とても高度なものです。すべてマニュアルで調整するなんて私には真似できません!」
引用元:魔法科高校の劣等生 第8話 九校戦Ⅰ
ですが、普段はおとなしいあずさが珍しく強く自分の意見を述べました。
「桐原個人のCADは競技用のものよりハイスペックな機種です。使用者にその違いを感じさせなかった技術は高く評価されるべきだと思いますが……」
引用元:魔法科高校の劣等生 第8話 九校戦Ⅰ
すると意外な伏兵が登場します。
以前に対立して模擬戦で達也に破れた服部半蔵がこう発言し、達也の九校戦技術スタッフ入りを主張したのです。
服部は二年生ではありますが、生徒会副会長であることや達也に負けるまで模擬戦不敗な実力から三年生たちにも一目置かれており、この発言以後不満を述べる者はいませんでした。
長い記述となってしまいましたが、まとめると達也のCADに関する技術の異能は以下のようになります。
1 展開された起動式から魔法の種類、威力などを一瞬で読み取る能力。
そのことはCADに収録された魔法記述式のプログラミング言語、ソースコードを完全に理解していることを意味している。
2 深雪のCAD(自分用も)を日頃調整していることからCADのOSを理解し、基礎システムにアクセスできるスキルを持っている。
3 上記の「1」と「2」から判明するように、CADのOSも収録された魔法式も完全に理解していることから異なるスペックのCADに別のCADのOSと魔法式をコピー先のCADのスペックに各部調整してコピーする能力を持っている。
と、なります。
「3」の部分を補完しますと、CADのスペックが異なることでプロセッサーやストレージの速度、そして容量が全然違うと考えられます。
まして服部が指摘したように桐原所有のCADはハイスペック、一方の九校戦競技用は低スペックです。
そのことを考慮すると丸ごとそのままのコピーではコピー先の競技用CADでは処理速度が低下してしまい、使用者にストレスを感じさせてしまいます。
また、低スペックであることからストレージ容量が足りず、ハイスペック側に収録されていた魔法の記述式がそのままでは入れることができないことから記述式の一部を圧縮している可能性もあります。
ですが、あずさの言葉から推測すると、通常CADの丸ごとコピーには機器にあらかじめ用意されたテンプレートを正しく選択することで、処理速度低下や収録魔法記述式の圧縮などを最低限に抑えることで対応できるものと思えます。
しかしながら、OSや記述式を完璧に理解しているのであれば、フルマニュアル操作をすることで、各プログラムを比較して重複している無駄な箇所の各項目ごとの削除や、複数の記述式の同一処理を一括してOS側へダイレクト演算させることで処理速度を低下させることなくすべての内容をコピーすることが可能となると考えられます。
これが達也の魔法技術の異能です。
「――なんだコレは? めちゃくちゃ身体が軽い!」
スバルのこの問いの答えは、次のひと言があれば長々とご説明する必要はありません。
”司波達也はトーラス・シルバーだから”
実はこのひと言で説明がついてしまいます。
世界屈指の魔法工学プログラマー。FLT社専属の謎に包まれた天才魔法技師”トーラス・シルバー”と言えばすべて納得なのですが、実はこの「アニメ 魔法科高校の優等生」にはFLT社やトーラス・シルバーは登場しません。
”魔法科高校の優等生”は”魔法科高校の劣等生”のスピンオフ作品で”本篇アニメ”の世界観、物語の流れをかなり忠実になぞっている作品なのですが、主人公を深雪や雫、ほのかたちとしたことで”本篇アニメ”にはない展開がある反面、”本篇アニメ”にあった出来事や登場人物たちが存在しないことがあります。
FLT社やトーラス・シルバー以外にも第一高校のカウンセラーで九重八雲住職の弟子でもある小野遥も登場しません。
このように”本篇アニメ”とは異なる展開や登場しないエピソードや人物たちを探し当てるのも、この作品の楽しみ方かも知れません。
最後にひとつだけ補足です。
『ミラージ・バット』予選でスバルは敵なしで予選通過します。
そしてその後に登場したほのかはそれ以上で完全に無双でした。
ただでさえ反応が軽く、速度が速い達也謹製CADに加えて”光のエレメンツ”でホログラム投影場所の先読みでした。
そこで想像するのですが、ほのかは深雪に勝てるのでは? です。
深雪は摩利の負傷で新人戦ではなく『ミラージ・バット』本戦の方に出場なので対戦はありませんでした。また深雪は本戦で飛行魔法を使います。
さすがに飛行魔法で空中に常に待機されたら、いくらホログラムの先読みができるほのかでも勝てないとは思いますが、飛行デバイスではなく同じCADだった場合は、もちかしたらほのかの勝ち? とも思ってしまいます。
まとめ
ここまで「魔法科高校の優等生 第10話《負けたくない》」をご紹介して参りました。
ここで今回の内容をまとめたいと思います。
●「第10話 負けたくない」のあらすじ要約です。
今回の「第10話 負けたくない」は、多くの方が注目されているシーンが登場します。
それは九校戦『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子の決勝戦、司波深雪VS北山雫の戦いです。
第一高校学年首位と3位と言う高レベル、そして互いに親友同士と言う誰もが見たい試合でしょう。
この決勝戦は元々はなかった試合です。
この九校戦は個人競技ではなく、あくまで学校対抗戦であるため『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子はすでに第一高校が決勝出場の3名の枠を独占してしまったことから学校対抗の意味がなくなってしまいました。そのことから大会本部から明智英美(エイミィ)、北山雫、司波深雪の3名の同率優勝でどうか、との打診があったからです。
そこで前回の試合で第三高校の一七夜栞と死闘を演じたエイミィは魔力消耗が激しく棄権したのですが、雫はどうしても深雪と戦いたいとの意思表示があったため実現した試合でした。
試合は雫が『共振破壊』『フォノン・メーザー』と言う高等魔法を放ち、深雪は『氷熱地獄《インフェルノ》』、『ニブルヘイム』と言うこちらも高等魔法を行使すると言う並の高校生では不可能な激しい試合となりました。
ですが試合は雫側の氷柱12本すべてを破壊し自軍の氷柱は無傷と言う深雪のパーフェクト勝利で幕を閉じました。
その後、悔しさで失意してしまった雫をほのかがなぐさめます。
勝者の深雪が悪いのではありませんが、意地を張って対戦してもらったにも関わらず手も足も出なく一方的に敗れたショックから深雪に会うには気後れがあり、またサポートしてもらった達也にも顔向けできないふたりだったのですが、気分転換にでかけたホテルのラウンジで深雪と達也と出くわしてしまいます。
ですが雫は自分が深雪たちに対して居たたまれない気持ちのままでいると、自分の願いに応じて戦ってくれた深雪にも申し訳ないですし、ほのかだけじゃなくエイミィたちにも気を遣わせてしまうことがわかっていることから率先して深雪、達也の輪に入るのでした。
そしてその後、やってきたエイミィたち第一高校一年女子チーム全員と合流となり、笑顔あふれる楽しい祝勝会となるのでした。
それから翌日。
『ミラージ・バット』新人戦女子が行われました。第一高校からはスバルとほのかが出場です。
スバルは他校の選手たちとは段違いの速度、上昇力で圧倒します。
そのスバルは達也が調整したCADを使っての試合を心待ちにしており、期待以上のCADの出来に満足でした。
そしてほのかの試合です。
ほのかは達也謹製のCADの威力もさることながら”光のエレメンツ”の持ち主であることから、宙に浮かぶ光球のホログラムが光る前にその場所を察知できる能力もあり、他校をまったく寄せ付けずに勝利するのでした。
そして運命の事件が起こりました。
『モノリス・コード』新人戦で第一高校の森崎駿たちのチームにアクシデントが発生したのです。
第四高校との試合開始前、会場が市街地ステージであるため、森崎たちは廃ビルに潜んでいたのですが、そこの天井が破城槌の魔法を受けて崩落したのです。
明らかに試合前で、しかも禁止された危険魔法。これを受けて司波達也の予期せぬ代役出場となるのです。
●魔法科高校の優等生第10話「負けたくない」の見どころは「戦いの描写が進化しています」と「この世にふたりだけ……。そして笑顔」です。
――戦いの描写が進化しています――
今回の第10話「負けたくない」のいちばんの目玉はもちろん司波深雪VS北山雫の『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦決勝の試合となります。
この「魔法科高校の優等生」では本篇アニメである「魔法科高校の劣等生」の物語展開をなぞっていることから、当然”本篇アニメ”でもこの試合は「魔法科高校の劣等生 第14話 九校戦編Ⅶ」に登場します。
ですが”本篇アニメ”はあくまで司波達也が主役なので放映された時間も短く内容もあまり濃くありません。
しかしこの”優等生”の第10話「負けたくない」では思いっきり時間が長く中身も濃くなっています。
深雪、雫のお互いが放つ高等魔法、そして試合に関わるエピソードなど盛りだくさんで見応え十分です。
――この世にふたりだけ……。そして笑顔――
雫が勝てる訳がないとわかっている深雪にあえて挑んだ『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子決勝戦ですが、それは的中してしまいました。
雫は母譲りの高等魔法『共振破壊』、そして対深雪用に達也から伝授された高等魔法『フォノン・メーザー』をも行使したのですが、深雪の繰り出す高等魔法『氷熱地獄《インフェルノ》』、同じく高等魔法『ニブルヘイム』と雫の盲点を突いた液体窒素の膨張による大爆発で、雫側の氷柱はすべて吹き飛び、それに対して深雪側の氷柱は12本とも無事と言う完敗でした。
手も足も出ない敗北。それは雫に深い悔恨をもたらしました。
そしてひとり部屋のシャワールームで黄昏れていた雫でしたが、そこに現れたのが幼なじみの大親友であるほのかでした。
雫はほのかに悔しさを発露し嗚咽します。そしてほのかはそんな雫を抱きしめます。
ほのかのその姿はまるで雫の悔しさ悲しさを分け与えてもらいたいかのようでした。
その後、雫とほのかは気分転換にでかけたラウンジで深雪と達也に鉢合わせてしまいます。
ほのかは間の悪さにしどろもどろな言動になってしまうのですが、雫はこれは自分が原因での気まずさであって、戦いに応じてくれた深雪にも悪いし、もちろんなぐさめてくれたほのかにも悪いことなどわかっていることから、あえて自分から深雪、達也に同席し、明るく振る舞うのでした。
やがてそこにエイミィたち第一高校一年女子チーム全員が集まりました。
そして祝勝会が始まるのですが、そこには悔しさもわだかまりもない雫の心から笑顔が見られました。
●「魔法科高校の優等生 第10話《あなたがいたから》」のネタバレです。
内容は「やはり兄妹。狙い所は同じでした」と「フルマニュアルからわかること」です。
――やはり兄妹。狙い所は同じでした――
今回の第10話でいちばんの見どころと言えば深雪VS雫の『アイス・ピラーズ・ブレイク』の試合です。
試合は深雪の圧勝でしたが、それに至るまでふたりにはいくつかの攻防がありました。
そして最後は深雪の『インフェルノ』による猛炎で雫側の氷柱すべてが大爆発で消し飛ぶ結果となりました。
この”大爆発”ですが、もちろん深雪が爆弾を投げ込んだ訳ではありませんし、雫側の陣地に爆薬が仕掛けられていた訳でもありません。
ですが爆発に至る物質はその直前に陣地内に大量にそして入念に配置されていたのです。
それは”液体窒素”でした。直前の『ニブルヘイム』の霧が雫側の氷柱を覆い尽くしたときに多量の液体窒素の水滴や水たまりが陣地内にぶちまけられた状態となっていたのでした。
その”水滴”に『インフェルノ』の激しい炎からの高熱で液体窒素は一気に気化したことで12本すべての氷柱が爆発したのです。
ここで”水滴”を目標として強力な魔法を発動させるシーンに既視感を覚えた方も多いと思います。
それは”本篇アニメ”である「魔法科高校の劣等生 第26話《横浜騒乱編Ⅷ》」で登場する達也が大亜連合の工作船の甲板に付着していた”水滴”を目標とした発動させた『マテリアル・バースト』のシーンだと思います。
深雪は勝負を決める際にあきらかに”水滴”を狙った魔法でしたが、達也が”水滴”を選んだのは実は偶然で《マテリアル・バースト》は物質ならなんでも魔法行使の対象とする魔法だからです。
ただ偶然とは言え兄妹でふつうなら爆薬として見立てることがないものをお互いに目標にしたことの”水滴”つながりなことから『ニブルヘイム』からの『インフェルノ』と”優等生”では登場しない『マテリアル・バースト』に注目してみました。
――フルマニュアルからわかる異能――
「――なんだコレは? めちゃくちゃ身体が軽い!」
これは里見スバルの『ミラージ・バット』の試合中の発言です。
スバルは深雪や雫、エイミィが使用した、達也が調整したCADを使っての大活躍を知っています。
ですので今度は自分がその恩恵が受けられると喜んで装着した感想がこれでした。
では司波達也がどうして他の追随を許さない程のCAD調整が可能なのかを考察してみました。
1 達也は展開された起動式から一瞬で魔法の系統や効果を読み取る能力があること。
2 達也は自分用、そして深雪用のCADの調整を毎回行っていることから、CADのOS、基礎システムを熟知していること。
3 他のエンジニアと異なり達也のCAD調整はキーボードオンリーの完全マニュアル方式で行っている。
それは「1」、「2」のように術式のソースコードを完璧に理解しOSのシステムも熟知していることから、CADの中身そのものを細部にわたっての調整が可能。
このことから他のエンジニアが調整したCADと達也が調整したモノは別物に仕上がるのではないかと推測してみました。
ですがこの”優等生”に登場する達也には存在しない属性が”本篇アニメ”側の達也にはあります。
そしてそれは達也謹製のCADの出来映えを万人が納得できる根拠になるはずだと思います。
拙文を最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。
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