魔法科高校の優等生 第9話ネタバレ注意!感想やあらすじ、栞の表情やあずさのモノマネにも注目!

この記事では魔法科高校の優等生 第9話「あなたがいたから」のネタバレや感想、見どころについて解説していきます。

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この「魔法科高校の優等生」は巷で見られるよくあるスピンオフ作品と少々異なり、視点を脇役に変更しただけで、物語の流れは本篇作品と同じと言う作品です。

そのため本篇アニメである「魔法科高校の劣等生」の中では描かれなかったシーンが登場することで”本篇”を補完しているとも言えます。

今回の第9話「あなたがいたから」では、九校戦新人戦女子の試合がその部分が濃厚で、明智エイミィの『アイス・ピラーズ・ブレイク』の準決勝、そして試合の後で決勝進出を辞退せざるを得なかった事情がよくわかる作りになっています。

”本篇アニメ”魔法科高校の劣等生 第14話「九校戦編Ⅶ」でもエイミィは決勝出場を「体調が悪い」と辞退するのですが、その理由は触れられていません。

ですがエイミィの激しすぎた準決勝の戦いが、この”優等生”ではしっかり描かれているので、この激闘なら辞退も仕方ないな、と納得できるすばらしいバトルシーンが登場します。

また、この9話では光井ほのかの『バトル・ボード』新人戦女子の決勝戦も詳細に描かれていますが、これも”本篇アニメ”ではそれほど長いシーンではありません。

これらの”本篇アニメ”未登場のシーンを見るということだけでもこの”優等生”には視聴する価値があるかと思います。

魔法科高校の優等生 第9話のあらすじ要約


「魔法科高校の優等生 第9話《あなたがいたから》」は九校戦6日目である2095年8月8日から始まります。

この日は本戦はなく、『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦と『バトル・ボード』新人戦のみが行われます。

そして舞台はいきなり『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子の準決勝となり、せり上がる櫓の片側からは第三高校の実力者、一七夜栞が、そしてもう片側からは第一高校のお騒がせ娘の明智エイミィが登場します。

栞は魔法を使用するフェンシングのような競技「リーブル・エペー」の銀色衣装。

そしてエイミィは前回予選と同じく、濃紺ブレザーの狩猟服姿での登場となりました。

観客席では第一高校の一年女子チームの面々が座っています。

和美とスバル、菜々美は制服姿ですが、この後に試合がある雫と深雪はジャージ姿です。

ちなみにほのかは『バトル・ボード』新人戦女子の試合があるため、この場にはいません。

 

「エイミィ~、がんばってぇ~」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

と声援を送るのは菜々美です。

(……ここで勝てば決勝リーグへ進める。深雪と雫が待ってる。私もがんばらないと)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィは心の声で自分を叱咤しました。

やがて試合開始の合図が鳴りました。

「先手必勝、行っけえぇぇぇ~!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

大雑把な性格のため目標を狙って打つと言ったまどろっこしいのを好まないエイミィらしく、腰だめに構えたショットガン型CADをぶっ放しました。

すると前の試合同様にエイミィは自陣の氷柱の一本を倒して、高速に回転させて栞の陣地へと転がします。

それに対して栞が迫り来るエイミィの氷柱へと魔法を発動させたことで、転がる氷柱に魔法陣が一瞬発生しますが、すぐにかき消されました。

どうやらエイミィの氷柱には、相手側からの事象改変を防ぐために強力な魔法が使われているのがわかります。

「――なるほど。先に柱を動かすという事象改変がかかってるから、私の魔法による改変は受け付けないと言う訳ね」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

知性派の栞のことですので、初手の魔法は撃破が目的ではなく、威力偵察の意味合いで調べるつもりだったようです。

「その程度の攻撃は予想済みぃ」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そう宣言するエイミィのゴロゴロ氷柱は、栞の陣地に到達するとその勢いのままに並んで立つ氷柱に激突し、その大質量を活かして1本を粉砕し、2本を倒しました。

その威力に観客席からどよめきが起こります。

「いいぞ、エイミィ~!」

「このまま一気に勝負決めちゃえ~!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ただの一撃でかなり有利となったエイミィに里見スバルと滝川和美からの声援があります。

そんな中、仲間の活躍に興奮状態のスバルと和美と異なり冷静な観察をしていたのが北山雫です。

「……まだわからない」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

と、つぶやきます。

それを見た隣の席に座る春日菜々美が、えっ?、と疑問を口にしますが、その雫の意見に賛成なのは司波深雪でした。

「そうね。エイミィの戦法は三高も研究しているはず……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

と、両目を閉じ、呟くように発言しました。

「次、行くよぉ~!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

勝負の流れは自分にあると判断したエイミィは、イケイケドンドンで押して押して押しまくれ、とばかりに第一弾同様に次弾の氷柱を高速回転させて栞の陣地を襲います。

ところがそこに異変が起こりました。

「……あぁ?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ミィは思わず声を漏らしました。

それもそのはずで、転がした自陣の氷柱を栞陣地の一番手前に立つ氷柱にぶつけたのですが、暖簾に腕押しのように手応えがなく、立っていた氷柱が後方へスルリと滑って次の氷柱に当たり、その氷柱もスルリと滑っていちばん奥の氷柱に当たって止まりました。

結果、栞側の氷柱のダメージはゼロ。そしてエイミィは無意味に氷柱を失ったことになります。

場内にどよめきが広がる中、栞が呟きます。

「――計算通り」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィの魔法は他の大勢の出場選手たちと異なり、物理攻撃で氷柱を倒すと言う豪快なものです。

その派手さから見る者を圧倒させる迫力モノですが、氷柱に氷柱をぶつけるだけの単純な戦法ですので、対策自体はそれほど難しくありません。

”――計算通り”と呟く栞の様子を見れば、歩くスパコンの栞、そしてその背後にいる天才魔法師の吉祥寺真紅郎のふたりが対抗手段を編み出すのは容易だったようです。

競技場の第三高校の観客席には三年女子の水尾佐保と一年女子の一色愛梨の姿がありました。

「やるねえ~、栞」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

佐保がエイミィの攻撃を止めた栞の手腕を褒めます。

「ええ。きっちり合わせてきましたね」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

愛梨も佐保同様に栞が放った対抗魔法の出来映えに満足そうです。

「……なにぃ? なにが起こったのぉ? ふつうなら倒れるはずの柱が、そのまま滑って行って……」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィは起こった現象は理解できたのですが、なぜそうなったかがわからず不安な声を出します。

場所は代わって一般観客席の上部に設けられた大きなガラス窓の特別室となります。

ここには第一高校の七草真由美、渡辺摩利、そして司波達也の姿があります。

「……なるほど、考えたな。氷の摩擦係数をゼロにするとは」                                                                                                                                                                                                                                         引用元:魔法科高校の優等生 第9話

達也が栞が使った対抗魔法の謎解きを行いました。

そして、達也たちとは同じようなガラス窓の特別室の別の部屋があり、そこは第三高校が使用しています。

そしてガラス越しに試合を見下ろしていた吉祥寺真紅郎が、栞の魔法の効き目に満足し、左拳をグッと握りしめます。

「良しっ……。相手の柱が衝突する直前、こちらの柱の摩擦係数を極小化。

3本が一体化した瞬間、今度は摩擦係数を増大させる。細かい計算を得意とする制御型の魔法師、一七夜ならではの戦術だ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

冷静かつ緻密。それが栞です。

勢いと根性が信条で、脳筋と言っても差し支えなさそうなエイミィとはまるで正反対の位置します。

「……もう明智選手には打つ手はないはず」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そう分析した栞が新たな魔法を発動させるために左手のブレスレット型CADを操作します。

「ここから一気に片付けるわ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィの陣地に立つ2本の氷柱の直上に、栞が放った魔法による魔法陣が形成され、そして発動。

結果、氷柱が砕けます。

これは先の試合でも栞が見せた、いくつもの振動波を狙った氷柱の座標で合成させる魔法です。

「……愛梨。家のことに囚われ劣等感に苛まれていた私に、あなたが教えてくれた。

私にはもっと信頼できる大事なものがあると言うことを……。

私はもう振り返らない。ただ前だけを見て力を尽くす。見ていて愛梨っ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そして栞が新たに放った魔法が発動し、更に2本の氷柱が砕けました。

これでエイミィは12本中の4本、3分の1を失ったことになります。

「……うぇぇぇ……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

予想外の出来事にエイミィは櫓の上で、絶望顔で聞き取り不能なうめき声を上げます。

「……ど、どうしよう?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

元々、勢いだけのストレート勝負の魔法師であるエイミィなので、ならば次は変化球を投げると言った器用な戦い方はできません。

なので、”氷柱転がし”に対策を講じられてしまったら、その時点で頭の中は真っ白です。

そんな頭真っ白状態なエイミィですが、なにかのスイッチが入りました。

その真っ白な意識の中から、形となって再現されたのは英国にいた遠い幼い日の記憶です。

そこは屋根も壁もガラス張りの温室のような日だまりの部屋で、祖母との会話のシーンでした。

「……アメリア。アメリア」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

祖母の呼ぶ声に振り向く幼い少女時代のエイミィ。

振り返るとそこには、自分よりもずっと背の高かった祖母がいます。

ベージュ色の薄手のニット姿で肩にはチェック地のショールを羽織り、胸元には控えめなデザインのネックレスが見えます。

知性と教養を併せ持つ上流階級の婦人だと感じられます。

「アメリア。よくお聴き――」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そこで我に返るエイミィ。

「――あぁ? なんでこんなときに?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

今の状況から考えると、なぜ昔の記憶が思い浮かんだのかエイミィにはわかりません。

「――そう言えば、あのときグランマ、なんて言ったんだっけ?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

まだ思考の中にいる様子のエイミィの氷柱が、また2本砕かれました。

思い通りに作戦が進む栞は思わずほくそ笑みますが、その顔はちょっと不気味系です。

「どうやら買いかぶりだったようだな。一高の技術者」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

第三高校が使う特別室のガラス越しにエイミィと栞の試合を見下ろしながら、吉祥寺真紅郎が得意気に言葉を発します。

一方の観客席の第一高校側ではエイミィが圧倒的に不利になったことで和美が思わず立ち上がります。

「うわ~っ。もうダメぇ~」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

と悲嘆の声を上げました。

その横で観戦しているスバルや菜々美も表情を曇らせています。

「――まだよ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

突然聞こえる深雪の声。

「お兄さまに何の策もないとは思えないもの」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

深雪は真剣な眼差しを競技場に向けたまま、まったく危惧することのない声でそう告げます。

そして深雪の横に座る雫も同じ表情です。

そして第一高校が使う特別室。そこには立って競技場を見下ろす達也と、その背後には真由美と摩利の姿が見えます。

この三人もエイミィの現在の苦境を見ても、一切動揺していません。

「さすがに制御力ではかなわないな。だがエイミィ。君のフィールドはそこじゃないだろう?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

達也はエイミィの力を完全に信じているのがわかります。

エイミィの思考は心の声として自問自答を行います。

(……私、このまま負けちゃうの? ……でもここまでがんばったんだから、みんな許してくれるよね?)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

弱気で弁解じみた感情に比例するように、エイミィが腰だめに構えているショットガン型CADの銃口が下へと下がり、すでに闘志が失せてしまったことがわかります。

(……私は、……違うっ。……私は……)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

心の中で自分自身に問いかけるエイミィの身体に変化が現れます。

「……あっ!! エイミィのサイオンが……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

それに気づいた和美が思わず声を出しました。

すでに尽きたと思われたサイオンが全身から立ち上り、それらがたくさんの光の粒となってCADの銃口へとどんどん吸い込まれていきます。

「……違う。そんなの……イヤァァァァァッ!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ショットガン型CADの一度は沈黙した銃口から再び魔法が放たれます。

その魔法は自陣の1本の氷柱に作用すると氷柱は横向きになって宙を浮き、そのまま大質量の弾丸となって敵陣へと加速しました。

大音響とともに砕ける栞側の氷柱。その結果、縦方向に並ぶ3本の氷柱を粉砕しました。

”転がる氷柱”も豪快ですが、今度は”氷柱弾”なので破壊力も派手さも”転がる氷柱”を上回ります。

直球が打たれたならば剛速球を投げればいい、変化球など知らないエイミィらしい真っ直ぐな戦法です。

そしてその飛んだ氷柱ですが、縦横は1mで高さは2m。重量はなんと1.83トンもあります。

1.83トンだと軽自動車なら2台以上、競走馬なら4頭近くと言う重さなのですが、これがぶっ飛んだ速度で激突するのですから恐ろしい破壊力があるだろうなとは誰もが予想できます。

「……あぁっ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

一瞬で氷柱3本を破壊された栞が驚きの声をあげます。

そして第三高校の特別席でも真紅郎が驚愕していました。

「――馬鹿な! こんな大技が使える選手ではないはず……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

競技場の櫓の上で、鳩が豆鉄砲を食ったような表情なのが、この魔法を放った当の本人であるエイミィでした。

まるで何が起こったのか、訳がわからないと言った雰囲気です。

「……私、今、なにを?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィの心は再び幼い日の記憶をなぞります。

「……アメリア」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィを呼ぶグランマの声。

場所は英国のグランマの家。

ガラス張りの温室の中です。

「……マジック相撲で?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そこには紙相撲のような小さな土俵と小さな相撲取りの人形があります。

どうやら魔法を使って相撲をさせるような玩具と見受けられます。

「うん。あとちょっとだったんだけど負けちゃった。えへへ……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

小さなエイミィは祖母を見上げて愛想笑いです。

「アメリア、良くお聞き。嘘はいけない」

「ふえ?」

「私たち魔法師は嘘を現実にする。だから嘘には慎重にならなければいけない。嘘は無意識に現実を上書きして真実になってしまう」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

怒られていると思い込んだ小さなエイミィは歩み出て祖母との距離を詰め、なにか言い逃れの言葉を言わなければと思っているようですが言葉になりません。

「……あ、あの、えっとぉ……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そんなエイミィに祖母は手を伸ばし、やさしく頭をなでます。

「アメリアにはまだ難しかったかな。……いつかわかるときが来るよ。いつか……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

遠い昔の心の旅が終わって現実に戻ったエイミィは決意します。

(……グランマ、私わかったよ。私、本当は勝ちたい。負けたくない。だから、やれるとこまでやってみるっ……!)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

周囲から沸き起こるサイオンの光の粒がエイミィを包み、そして再びCADの銃口へと集まります。

そして発射。

エイミィから放たれた魔法が再び氷柱を浮かべ、そのままかっ飛びました。

そして対する栞ですが、自陣の氷柱3本に対し硬度を上げるのですが、”氷柱弾”の大質量には効き目がなく3本まるごと粉砕されました。

「やったあぁ~!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

喝采の声を上げるのは第一高校観客席で観戦する菜々美です。

「エイミィってば、こんな力を隠してたなんてびっくりだよぉ~」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

思わず立ち上がって応援してしまっているのは和美です。

そして菜々美と和実の間に座っているスバルが訳知り顔で語ります。

「――だがそう言えば、僕たちが毎晩やっているトランプ。気がつくとバランス良くエイミィが負けている気がしないか?」

「……言われてみれば」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

和美が答えます。

「まさか、わざとぉ?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

菜々美にも思い当たる節があるようです。

「それは、わからんが……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

スバルは菜々美の問いに答えます。

「――もしエイミィに無意識に力を抜く癖があって、今その箍が外れたのだとしたら、これがエイミィの本当の実力なのかもしれないな」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ここで試合会場を俯瞰した画面となり、エイミィ側の氷柱は残り2本。

そして栞側の氷柱は残り3本となっているのがわかります。

そのことでエイミィの方が数が少ない上に、作戦として”氷柱弾”は必ず1本使うため、攻撃できる回数はあと一回のみとなるのがわかります。

「……これほどの力とは……。でもおそらく明智選手はもう……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

侮ってた訳ではない栞ですが自分が発した言葉の通りで第一高校一年女子選手たちの中で脅威レベルが桁外れに高いのは深雪、そしてその下位レベルであるのが雫、ほのかたちであって、正直エイミィは更にそのワンランク下と分析していたのだと思えます。

「残りは3本対2本。これでっ……!?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

やる気十分でCADを構えるエイミィですが、ここでアクシデントが起こります。

視界がブレて体中の力が抜け、ふらついたエイミィはそのまま崩れ座り込んでしまいます。

「――しまった! 予想より早かったか……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

特別室のガラス窓から見下ろす達也が、この事態に危惧します。

この言葉が意味するように、エイミィが燃料切れを起こしたのです。

エイミィの魔法はド派手でパワフルですが、その分燃費が悪いのです。

通常の”氷柱転がし”でさえ強い魔法力を行使してしまうのですが、栞のエイミィ対策が万全であったため、更に強力な1.83トンの”氷柱弾”に切り替えざるを得なかったのですから、試合途中に限界が来てしまうのも当然です。

(――スタミナが続く訳がないと思った)

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

対する栞は冷静に状況を分析しています。

そして引導でも渡すかのようにじっくりと残り2本となったエイミィの氷柱に照準を合わせます。

「……まだ負けてない。負けたくない……」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィの戦う意志が下がってしまったCADの銃口をもう一度持ち上げようと力を込めます。

ここで第一高校が使う特別室のシーンとなります。

この場に居合わせる3人がそれぞれ発言します。

「――勝つためには柱を飛ばして相手の残った3本を倒すしかないが……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そう言った摩利ですが、口調からそれはかなり困難だと判断しているのがわかります。

「仮に飛ばせたとしても、あの3本は合体してひとつの構造体になっている。1本をぶつけて倒すのは不可能に近いわ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

真由美も冷静に状況を分析しています。

この三年女子のふたりは魔法科高校9校の中でも超トップレベルの魔法師なので、エイミィの置かれた状態をしっかり把握しています。

「……あとは魔法の力で、どう現実をねじ伏せるか」

    引用元:魔法科高校の優等生 第9話

達也がこの状況を打破するための最終手段を告げるのでした。

(――魔法師にとってイメージは現実……)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

心の声でエイミィは魔法行使のための初歩の法則をつぶやきます。そしてゆっくりと立ち上がりました。

すでに枯渇したかと思われたサイオンが三度エイミィを包み込みました。

「――そうだよね? グランマ? だから相手の柱を破壊するビジョンを、なんどもなんどもイメージしたよ。

お願いっ! 届いてっ! 私の全力っ!最後の一撃~っ!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィの渾身の気合いを具現化したかのようにサイオンの粒が立ち上り、エイミィの長い赤髪を激しくなびかせます。

「行っぇぇぇぇぇ~っ……!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィの”全力”が発動し、”氷柱弾”がうなりを上げて飛び去ります。

「……まだこんな力が……」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

冷静さがウリの栞ですが、さすがにこの信じられぬ状況となっては顔には焦り、頬には汗が浮かびます。

そして栞の陣地にある残り3本の氷柱は、すべて完全に合体して横幅の広いひとつの氷柱となっている状態をもっと堅固とすべく、硬質化を更に上書きし一層堅くしました。

その堅さはもはや鋼と呼んだ方が正しいと思われます。

――激突――

”氷柱弾”と”鋼の氷柱”が激突しました。

ゴォーンッとした堅くてすさまじい音が響きます。

その音は氷同士の激突音ではなく、完全に金属がぶつかった音に他なりません。

「私は負けない。この防御に私のすべてのサイオンを……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

栞は唇を引き締め大きく目を見開き一層の強い魔法を発動させます。

「だあぁぁぁぁぁ~!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィは、とにかく熱血です。

気合いを込めて、決死、必死で踏ん張ります。

「うおぉぉぉぉぉ~!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

栞も咆哮を上げます。

冷静沈着な栞がいつものクールさをかなぐり捨てて全力で戦っているのがわかります。

”熱血”対”冷静”

このふたりの最後の魔法が込められた互いの氷柱は、激突したまましばらく停止していましたが、やがて……”氷柱弾”に生じた亀裂。

そのひび割れがピキピキと音を立て全体に広がり、そして飛散しました。

「……ダメかぁ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

観客席の菜々美がそう言うと頭を抱えます。

「――いや、待てっ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

なにかに気づいたスバルが声を発します。

すると、……栞の魔法で硬質化され、1本の大きな氷柱となっていた最後の3本に変化が現れます。

”氷柱弾”が直撃していた部分から一筋のひび割れが水平に走り、1本目、2本目、そして3本目と伝播しました。

そしてその後、ひび割れの上部3分の1がゆっくりとスライドし後方へと滑り落ちていきました。

3本の氷柱のひび割れは表面だけでなく、内部まで浸透し完全に切断されていたのでした。

勝負ありです。

これでエイミィの方は残った氷柱が1本、栞はすべての氷柱を失いました。

会場は割れんばかりの歓声で、観客たちの興奮が天まで昇る勢いです。

そしてせり上がり櫓の上では栞が力なく床に座り込んでいました。

「……完敗よ」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そうつぶやいた栞はドサリと音を立てて櫓の床に倒れ込みました。

そしてその顔は『スピード・シューティング』で第一高校の北山雫に惜敗したときのような絶望した雰囲気はなく、同じ惜敗なのですが今は全力を尽くした上での勝負の結果に満足すら感じられる表情です。

一方の勝者のエイミィですが、栞同様に力尽きて床に倒れています。

もはやCADすら握れないようで投げ出されている状態です。

そんな疲労困憊の様子ですが、顔には笑みがあります。

「……へへへ。イピカイエー」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

一見エイミィお得意の謎言語と思いきや、この『イピカイエー』には意味があります。

元々はアメリカのカウボーイたちが使っていたスラングのひとつで、ハリウッド映画の『ダイ・ハード』で主人公の刑事ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)が使ったことで有名です。

日本語に意訳すれば『これでも食らいやがれ』や『この野郎』、『いてまえ』のような意味になるようですが、もっと下品な意味にもなるようです。

この言葉は対戦相手に対して罵る言葉ですが、もちろんエイミィは栞に悪感情などまったく持っていません。

そのことから、エイミィがこのセリフを使ったのは、限界を超えた自分を褒める意味合いでわざと皮肉って口にしたのかも知れません。

場面が変わります。

場所は各校の天幕が並ぶ作戦テントのテント村で、一番端にある第一高校のテント内となります。

そこには深雪たち数名がいます。

そして壁の大型モニターでは『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦の試合結果が映し出されていて、エイミィと雫、深雪の3人が決勝に進んだことがわかります。

「ほのか、バトル・ボード決勝進出おめでとう」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

深雪がほのかをねぎらいます。

「深雪と雫もおめでとう。すごいよ。ピラーズ・ブレイク決勝の三枠、一高が独占なんてぇ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

自分もすごいのに、あくまで友人たちの快挙に喜ぶところがほのかの性格の良さです。

「……みんなぁ~。……ぅゎぁ、……お待たせぇ~。……えっへへへっ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

今にも死にそうな声でやって来たのはエイミィです。

どうやら満足に歩けないようで、スキーのストックらしき棒を使って這うような歩みです。

先ほどの試合で完全燃焼した証なのでしょうが、その姿はまるで腰の曲がった老婆のようです。

そんなエイミィの姿を見て、ほのかと雫が心配顔で駆け寄ります。

「エイミィ、ムリしないで」

「寝てた方がいい」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかも雫も気遣います。

「……だ、だいじょぶだから。……ぅぇっへへへ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

と、エイミィはぜんぜん大丈夫じゃなさそうな声で返事をします。

「みんな。実は大会委員会から私たちに、ある提案をいただきました」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

と、声をかけながらやって来たのは生徒会長の真由美です。

その後ろには技術スタッフの達也の姿もあります。

「提案?」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

訝しげな声を出したのは雫です。

「新人戦女子アイス・ピラーズ・ブレイクは、我が第一高校が3位まで独占しました。

だから午後の決勝戦、戦わずに3人とも同率優勝でどうか? って」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

真由美がそう伝えます。

思いもしなかったその提案に深雪、雫、そしてただ居合わせているだけのほのかの目が驚きで丸くなります。

「……あのぉ~。私は言われる前から棄権しようと思ってましたぁ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

右手で挙手しながら、弱々しい口調でエイミィがそう告げます。

「それはそうよね」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

事情がすっかりわかっている真由美が苦笑気味に返答しました。

「すごいすごい! 3人とも優勝なんて。おめでとう、みんな」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかは無邪気に祝福します。

「じゃあ、提案を受け入れて全員優勝ってことで」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そのときでした。

「――待ってください!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

雫が突如発言します。

このタイミングでの「待ってください」は明らかに異を唱えるための声がけだとわかるので、真由美と深雪、そして達也の目は驚きで見開かれました。

雫は真由美の前へと一歩踏み出します。

「――私は深雪と戦いたいです」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

直立不動の姿勢のまま、雫は強い口調で意思を表明します。

その表情には後へは引かない強い決意が込められていました。

そして深雪は雫の意向に驚きの表情を見せます。

寡黙な雫がここまで自分の意思を他者に示すことを見たことがないことと、その向けられた対象が自分だったと言う事実にびっくりした様子です。

「……雫?」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

むかしからの親友であるほのかが戸惑った声で話しかけますが、雫は反応しません。

真由美は予期せぬ事態の展開で困惑気味の表情で深雪に尋ねます。

「北山さんはこう言っているけど、深雪さんはどうかしら?」

「私は……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

話を振られた深雪ですが、戸惑い顔で結論が出せない雰囲気でしたが、自分を見つめる雫の強い視線を浴びたことで覚悟が決まりました。

「……雫が私と戦いたいと思ってくれるなら、それを断る理由はありません」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

深雪は決意した顔で真由美に答えます。

深雪の回答を厳しい顔つきで待っていた雫ですが、深雪が自分の申し出を受けてくれたことがわかると表情を緩めいつもの微笑に戻ります。

「……そう。じゃあ大会委員会には、そう伝えておくわね」

  引用元:魔法科高校の優等生 第9話

真由美がふたりの決意を受け取りました。

そして真由美に背後に立っている達也ですが、成り行きを見守って口を挟まずにいました。

ですが、意見が纏まったことで目を閉じて安堵したような息を吐くのでした。

そして深雪と雫は互いに見つめ合います。

そこには剣呑な雰囲気はありませんが、どちらもやる気十分な気配は伝わってきました。

所変わって九校戦会場の外側となります。

そこには縁日のように露店が出ていて、お好み焼きや焼きそばなどの軽食の店が並んでいます。

その通りの脇にある長いテーブル席に、紙パックの飲み物をストローで飲む雫とほのかの姿がありました。

服装はラフなジャージ姿で、いかにも競技の合間の休憩と言った雰囲気です。

「――驚いたよ。深雪との対戦。あんなに強く思ってたんだね」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかが話しかけます。その口調は柔らかで親友に対してのいたわりの情を感じます。

「うん。チャンスだから絶対に逃したくないと思った……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

画面は雫の回想となります。

雫たち少女探偵団が路地裏で危機に陥ったとき、そこに登場した深雪がテロ組織ブランシュの工作員を鎧袖一触で倒したシーン、『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子の初戦で氷熱地獄《インフェルノ》で相手に付けいる隙も与えずパーフェクト勝利してしまったことが脳裏をよぎります。

どれもこれも桁違いの実力で、自分とは格が違いすぎることを痛切に理解させられたシーンです。

「……第一高校に入学して深雪と出会って、同じ学年にこんなすごい人がいるんだって驚いて、……深雪ほどの魔法師に全力で勝負を挑める機会なんて、そうそうない。だから引けなかった。

今の私にできるすべてをこの戦いで出し切るつもりだよ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

珍しく饒舌に話す雫。ですがその口調はぽつりぽつりとした呟きのようにも思えます。

「……雫」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そんな親友の姿をほのかはそっと寄り添うような心配顔で見つめていましたが、急に引き締まった表情になると、「よおしっ」と気合いがこもったかけ声で立ち上がります。

「私、雫を応援するっ。ガンバレっ!」

「……?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

予期せぬ展開だったようで、雫はキョトンとしています。

「私はバトル・ボードの決勝。雫はピラーズ・ブレイクの決勝。

ふたりとも勝って、いっしょに祝勝会やろうよ。おいしいものいっぱい食べて、朝まで大騒ぎして」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

親友思いのほのかの懸命な応援が届いた雫は、ほんのりと笑顔になります。

「……いいね。楽しそう」

「じゃあ、約束だよ。ふたりで優勝」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そう言ってほのかは右手の小指を差し出します。

「うん。約束」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そして雫はそれに応えて指切りをするのでした。

この”優等生”では第三高校の一色愛梨と一七夜栞の友情も良いモノですが、愛梨と栞は愛梨が引っ張り栞が付いて行くと言った(本人たちにその自覚はないと思いますが)上下関係にも似た友情です。

ですが雫とほのかの友情はあくまで対等で、足りない部分は足りている方が補うと言った補完関係なことで、ごくごく自然な友情として微笑ましさを感じさせます。

そして場面は栞の方へと移ります。

病室のベッドで栞が目を覚ますと、そこには愛梨の姿がありました。

「……愛梨」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

声をかけるまで愛梨は栞が目を覚ましたことに気づかずに窓の外を見ていました。

「……ごめんなさい。勝てなくて」

「いいの、そんなこと。とてもいい試合だったわ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

親友への心遣いを感じさせるとても優しい口調です。

「ありがとう。悔しいはずなのにどこか清々しい気分なの。こんな気持ちは初めてだわ」

「栞、強くなったのね」

「負けたけどね。でも愛梨、あなたのお陰よ」

「……え?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

予期せぬことを言われた愛梨は首を傾げキョトンとした表情になります。

「あなたがいたから、私は過去に縛られず真っ直ぐに未来を見つめられるようになったのよ。ありがとう――」

「……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

真っ直ぐにお礼を言われた愛梨は、恥ずかしさのあまりか目をそらし、頬を染めます。

愛梨さん、ツンデレでした。

初めて見せる愛梨のこの表情ですが、ツンツン系の悪役お嬢様イメージが強い愛梨ですのでギャップ萌えを感じさせる良い笑顔です。

そしてここで今回の”優等生”第9話のサブタイトルである「あなたがいたから」が登場しました。

この”優等生”では、第1話の「一生大事にします」から始まって劇中の人物のセリフがその話のテーマとなっていることでサブタイトルに使われることが多いのですが、第9話に多く登場するエイミィでも雫でも、そして深雪でもなく栞のひと言がテーマになっているところに、”優等生”製作スタッフの心意気を感じます。

スピンオフ作品である”優等生”なので、”優等生”オリジナルキャラである一七夜栞にスポットを当てたのがイイ感じです。

栞と愛梨が会話する病室には、もうひとりの人物がカーテンの向こうにいました。

それは第三高校の三年生である水尾佐保です。

佐保は栞のためにリンゴをウサギさん型に剥いていたようですが、それを盛り付けた皿を持ったまま静か微笑して立っています。

せっかくの親友同士の良いシーンなので、顔を出すのは野暮と思ったのでしょう。

こういう心遣いができるのが佐保の魅力で、そのことで愛梨たちから慕われている良いお姉さんなんだと理解できます。

そして場面は「バトル・ボード」新人戦女子の会場となります。

控え室の廊下では競技用のウェットスーツの上に一高のジャージを羽織ったほのかがいます。

ほのかは壁に手をついて身体を伸ばすストレッチをしています。

本人はまったく無自覚なのですが、プロポーションがずば抜けて良いほのかなので、身体の一部がとても揺れており、見る方にはちょっと目の毒状態となっています。

「雫はすごいなあ……。私は深雪を見て萎縮しちゃったのに……。私もがんばらないと」

「おー、そうじゃ」

「……ふえ?」

「がんばらねば!」

「ふあっ……!?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

驚いたほのかが振り返ると、そこには第三高校の四十九院沓子がいました。

沓子はグイグイ寄ってくると下から強い視線で見上げてきます。

「いよいよ決勝じゃな。お主との一騎打ち。待ちかねておったぞ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのか162cm。女子としてはやや背が高いかと思われます。

それに対して沓子は145cmのミニマムボディで差は17cmとかなりの身長差となるのですが、小柄な沓子にほのかは今回も圧倒されのけぞってしまいます。

「今回もさぞ楽しい技を用意しとるんじゃろ?」

    引用元:魔法科高校の優等生 第9話

真顔で大接近して見上げてくる沓子。

それを引き気味でこわばった表情で見下ろすほのか。

「……あぁなたの精霊魔法見せてもらったわ。私負けません! 絶対に勝ちます!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

両の手を握り、力説するほのかですがセリフを噛んでます。

「ほお~」

         引用元:魔法科高校の優等生 第9話

不敵な笑みとなる沓子。

「楽しい勝負になりそうじゃな。では試合で会おうぞ。またの~」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

突然現れた沓子は、ほのかを困惑させて去って行きました。

そしてほのかはデフォルメ顔となります。

溜息をついてくたびれモードなのですが、なかなかにかわいらしいです。

「……はあ。慣れないことしちゃったよ~。雫に影響されたかな……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そうこうしていると第一高校二年生で、ほのかを担当する技術スタッフの中条あずさがやって来ます。

「光井さん。やっぱり司波くんはピラーズ・ブレイクの方から手が離せないみたいで……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

あずさが達也のスケジュールを伝えます。

「……仕方ないですよね。雫も深雪も達也さんの担当ですから……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そうは答えたものの、やはりほのかの顔には残念さが浮かびます。

「でも伝言を預かって来ましたよ!」

「へ?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

意外な展開にほのかはびっくり顔となります。

「……二人で練った対策どおりやれば、優勝できる。辛くなったら練習のことを思い出せ、だそうです」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ここで予期せぬあずさのモノマネが登場します。

本人は達也になりきっているようで、できるだけ低い声で演じてくれるのでした。

「……達也さん」

   引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかにはそれだけで達也の思いが伝わったようで、感激顔になりました。

場面はほのかの回想シーンとなります。

場所は第一高校の作戦テント内です。

「……やはり決勝の相手は三高の四十九院か」

   引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そう発言した達也の手にはタブレット端末があり、ほのかもその画面を見ての打ち合わせです。

「水面を操作する精霊魔法。……勝てるかな?」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

心細そうにほのかが感想を漏らします。

「彼女は精霊魔法を使う際、事象干渉力が電磁波のノイズを発生させている。そのノイズにこそ、ほのかの勝機がある」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

達也の言葉に勝利への突破口があることを知ったほのかは目を大きく見開くのでした。

場所は元の廊下に戻ります。

達也とのやり取りをしっかり思い出したほのかは、あずさに向き直ります。

「……わかりました。できます!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そしていよいよ決勝が行われる『バトル・ボード』新人戦女子の会場となります。

決勝戦ですので、競技者はほのかと沓子のふたりだけとなります。

設置されたブザーが鳴り、試合が始まりました。

ほのかはスタート時に魔法を発動させました。

その魔法はコースの水面に一気に広がります。

そしてほのかは一気にボードを走らせます。

まずはほのかがリードした形となりました。

「鏡面化魔法!」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

観客席で観戦するスバルがほのかが行使した魔法の正体に気づきます。

「水面の状態を魔法で改変しているので、他の魔法を掛けにくくする効果もあるんですよ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

スバルの右隣の席にいる担当エンジニアのあずさがそう解説します。

「領域干渉のようなものですね」

  引用元:魔法科高校の優等生 第9話

スバルの左隣に腰掛ける菜々美も理解し納得したようです。

ほのかが仕掛けた作戦は、魔法で水面を鏡面化したのですから、摩擦係数を極度に減らしてスピードが出せるように細工したのが、いちばんの目的だと思えます。

摩擦を減らしたことで速度が上がる反面、カーブで踏ん張りが効かないのですが、おそらくほのかのボード操作技術がそうとう高いこともあって採用した作戦だと思えます。

また、あずさが言ったように水面に対して魔法で事象を改変していることから、この鏡面化状態を変更するため行使される魔法が掛かりにくくなったと言うのも納得できます。

このほのかの作戦は発案は達也かもしれませんが、あずさも知っていた口ぶりなので事前に説明があったのだと思われます。

(――まずは先制できた。古式魔法は現代魔法より発動が遅れるからね!)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

沓子を抑え先頭になれたほのかは、まずまずの手応えを感じています。

「ふん。古式魔法の欠点など織り込み済み。じゃから序盤の水面は捨てて狙うのはその先じゃ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかを追う沓子に焦りはないようです。

そして進行方向の水面に渦巻きがいくつも発生しました。

これは沓子が発動させた”水”の古式魔法で、広範囲にどんどん増えていきます。

このあたりが現代魔法に比べ発動までの時間はかかりますが威力が大きいというのは納得です。

ですが先ほどあずさが”他の魔法を掛けにくくする”と言った水面の鏡面化がどの程度効果があったのかはわかりません。

もしかしたら沓子の古式魔法の威力が大きくて、さしたる妨害にはならなかった可能性も高そうです。

「この技は見せてもらってる」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかは渦巻きを見ても動揺しません。

沓子が操作した渦巻き水面の直前まで到達すると、そこでボードごと自身を水からジャンプさせます。

もともと大舞台に弱いメンタルの持ち主だったのですが、既視の魔法にはびくびくしない成長が見られます。

それを見た沓子が、ツッコミを入れます。

「わしの魔法範囲を飛び越えるつもりか? 跳躍魔法で意図的にショートカットするのは反則じゃぞ!」

「よしっ!!」

 引用元:魔法科高校の優等生 第9話

すると、沓子の言葉が聞こえた訳ではないのでしょうが、ほのかはボードを水面すれすれの上空に降下させボードを前進させます。

「……なるほど、水平に跳躍か。これなら反則ではない」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

沓子は感じ入ったように感想を漏らしますが、上下方向への縦の運動を横の運動に変えると言う物理法則を完全に無視した移動系魔法を難なくこなすほのかは、やはりさすがは一高学年2位の実力に思えます。

攻撃系魔法を得意としないことから、戦闘ではいつも戦力外のほのかなのですが、そうではない魔法であれば一高一年では深雪に次ぐ実力者と言うのも頷けます。

しかしやはり試合はこのままでは進みませんでした。

「――じゃが、近くにおるのは友達ではないぞっ!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そう叫んだ沓子は魔法を発動させ、古式魔法ならでの事前の仕掛け《罠》を設置しました。

「……はっ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

 

ほのかはなにかを察知します。

(――ほのかには光に対する感受性の強さがあるだろ? その特性を活かせば四十九院選手のノイズを感じられるはず。

それが、ほのかの強みだ――)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

達也からのアドバイスが脳裏によみがえります。

(……見えました。達也さん!)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかの視界にはこの先の右に左にうねったコースに設置された多数の『罠』が燃えるロウソクの炎のような光のノイズとなって見えています。

(――あの光る場所に魔法が仕掛けられている。場所がわかれば……)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

先行するほのかが魔法を発動させました。

「――精霊が押さえ込まれた?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

沓子は信じられないと言った表情です。

いつも飄々としていて本心が見えない沓子は、どことなく九重寺住職で忍びの九重八雲に似た雰囲気があります。

そのことからこのように驚愕がそのまま顔に出るのはとても珍しく、ほのかが行った戦法が完全なる予想外だったのがわかります。

そして第三高校の観客席にいる水尾佐保が光井ほのかと言う魔法師の本質部分に触れる発言をします。

「……あの子、もしかして私と同じ……?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

佐保がいち早く気づけたのは自分自身も『水のエレメンツ』の血統を持つ魔法師だからです。

ほのかが肉眼では見えるはずがない精霊に気づき、しかも遠くに設置された『罠』に気づいたことで対処できたことで見抜けたようです。

「……光井ほのか。光井……。そうかっ!! あやつ『光のエレメンツ』……!!

じゃから、わしの魔法が見えたのかっ!! どうりで知っとる気配がすると思ったわ……。

あはははは、こうでなくてはな。やっぱり九校戦はおもしろいのぉ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

沓子は、ほのかが『光のエレメンツ』とわかりご満悦です。

沓子には親友の愛梨や栞たちと違い、それほど勝ちにこだわっている様子が感じられません。

それよりも競技を楽しみ、対戦を楽しむと言った感じです。

そのことからもしかしたら各校代表選手たちの中で沓子がいちばん九校戦を楽しんでいるかもしれません。

その沓子が言ったセリフの中に『どうりで知っている気配がする』と言ったくだりがあります。

これはやはり親しい姉貴分の佐保が『水のエレメンツ』だから知っていたのではないかと思われます。

『○○のエレメンツ』とはその一族が持つ血統のことで、先天的に生まれ持っている能力です。

そのため学校などで後天的に憶えた他の系統の魔法よりも高い特性を持つものだろうと推測できます。

先を行くほのかはコースの登り坂に到着しました。

この坂ももちろん水路なので選手たちは魔法を使ってボードを登らせる必要があります。

「この滝の頂上ならコース全体が見渡せる。魔法を仕掛けられた場所をチェックするチャンスっ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そう言ってほのかは頂上を越え、滝下へとジャンプします。

「……ええっ!? こんなに? どうしよう?

全部押さえ込んだらスタミナ切れになっちゃう……。とりあえず近場から……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

高所からの降下中にほのかは愕然とします。

ほのか自身が言った通り、ここからはこの先のコース全体が見えていて、どこに罠が仕掛けてあるのか一目瞭然なのですが、罠はコース全体にまんべんなく数十箇所も設置されているのがわかったのです。

確かに精霊を押さえ込むこと自体は大した魔法力を使いませんが、全力で試合を行いながら、これらすべての罠を封じるのは先ほどの『アイス・ピラーズ・ブレイク』でのエイミィの状態同様に燃料切れになりかねません。

動揺しているほのかを背後から追う沓子は自信ありげな笑みを見せます。

ほのかはまだ落下中のままですが、左手に装着されたCADの操作中に違和感を覚えます。

「……あれ? この感じ? ダミー……!?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そして激しい水飛沫とともに着水したほのかはボードを走らせます。

「……やっぱり」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

先ほど違和感があった地点に到達するのですが、水面に異常はなく『罠』は予想通りにダミーでした。

「私が魔法の仕掛けられた場所を見えているのを知って、消耗させるためにわざとダミーを……。

ざんねんだけど、その手には乗らないんだからっ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そう宣言したほのかは、コースをどんどん進みます。

そのときでした。

「……ふぇっ?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ブラインドコーナー出口の眼前に渦潮がありました。

今までの小さな渦巻きではなく、コースの横幅いっぱいを覆う大きなものです。

水は激しく渦を巻き、大きさはボードを飲み込めるほど巨大です。

「ふええええっ!?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかは咄嗟にCADを操作して、魔法を押さえ込みます。

「ダミーだけじゃなく、あんな大きなのも仕掛けてたなんて……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのははすっかり『罠』に翻弄されてしまい、気持ちがおろそかになってしまいました。

そしてそんなわずかな間隙を縫って右側から沓子が一気にほのかを抜き去ります。

「お先じゃあ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

第一高校の観客席では担当エンジニアである二年生のあずさが、沓子に抜かれたことで心配顔になり、思わず叫びます。

「光井さんっ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかが我に返るのが遅れたせいか、沓子は数メートルも先行します。

「まだまだ、勝負はこれからじゃぞ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

後方のほのかの位置を確認するためか、沓子は振り返った後に、先ほどまで使用していた左手首ではなく、右手首でなにやら操作します。

「――ええっ!? そっちもCADだったの?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかは驚愕の表情です。

それも当然で、通常2つのCADを同時に使用することは不可能とされています。

それは魔法が相克されてしまい、正常に発動することができなくなるからです。

そして沓子が一気に加速します。

「――古式魔法じゃないっ!! あれは……、現代魔法っ!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかの観察は間違いありませんでした。

沓子が右手のCADで発動させた魔法は、移動系魔法、つまり現代魔法であることは間違いありません。

ショックはショックでしたが、それでもあきらめずに加速しようとしたほのかですが、そこで水面が大きく揺れバランスを崩しかけます。

「……水の精霊?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

勝利を確実にするためか、沓子は遅れるほのかに対して更に魔法を行使したのです。

「古式魔法はわしの手足のようなもんじゃからな。寝ていても使えるわい。じゃから現代魔法に集中できるのよ」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかを襲った水面の大きな揺れは、やはり古式魔法でした。

沓子は古式魔法のスペシャリストであることで、意識領域に余裕が生まれる部分で現代魔法を行使できるというバケモノでした。

つまり2つの魔法を同時展開できる訳です。

そして一方のCADで古式魔法を、そしてもう一方のCADで現代魔法を使うので、仕組みが異なる魔法同士なことから、CAD同時使用でも相克を起こすことはないようです。

ほのかは予選から水面発光などの作戦で決勝まで来ましたが、沓子はこの作戦を決勝までひたすら隠していました。

そのことでこの決勝戦は沓子が有利だと言えます。

「くぅ……くぅ……、追いつけない」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

なんとか加速しようと身を捩りながら唸るほのかですが、水面のうねりが強すぎて、思うようにボードを進ませられません。

一方の沓子は笑いながら、気持ち良くボードを進ませています。

この勝負、決まった感が強いです。

「光井さん。思い出して。いっぱい練習したこと。そして司波くんにたくさんアドバイスしてもらったこと……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

観客席のあずさは目をつむり両手を胸の前に組んで祈っています。

ほのかもですが、あずさもこの決勝戦をまだ諦めていません。

そのときでした。水路の波が頭上高く盛り上がり真上からほのかに襲いかかります。

「……あ」

(――ほのか)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そしてその瞬間のほのかの脳裏には達也の姿がありました。

「……えぃ。……あはっ!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

咄嗟の判断でした。

波が丸まりながら崩れ落ちる中、乱れた水面上で暴れるボードを踏みつけて制御し、波の内部にボードを滑り込ませます。

つまり、サーフィンにおける『チューブライディング』です。

いくら移動魔法でボードを動かしているとは言え、バランスを取りながら操作するのですから、ほのかの運動神経の良さは相当なものだとわかります。

ざんねん系でドジっ子気質のほのかなのでイメージ的には運動音痴に思えますが、さすがは一高学年2位。やればできる子です。

「……なんじゃと?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

当てが外れたのは沓子です。

あの嵐の海のような大波をサーフィンの上級テクニックでクリアするとは予想外のようです。

その後、ほのかはコツを憶え、サーフィンの要領で右に左にボードを滑らせながら沓子を猛追し始めます。

(……そうだ。いっぱい練習してきたもん。みんなといっしょに頑張ってきたもん。それに、私には達也さんがついててくれる!)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかのこの激しい追い上げに対してなにやら気がつき、冷静に判断した人物がいます。

それは第三高校観客席で観戦中の佐保でした。

「……急に動きが良くなった、私たちエレメンツは依存する相手のために自分でも思ってもみない力を発揮することがある。

……そういうこと……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

自分自身も『水のエレメンツ』であることで、このことに気づいたようです。

佐保の言葉をそのまま解釈すると、”依存する相手のため”に”力を発揮する”のですから、荒れる波を乗りこなし、猛追するほのかは”誰かのため”に思ってもみない力を出していることとなり、その”誰か”は”達也”であり、”みんな”であると言えます。

ほのかが一途に達也に想いを寄せていることまでも、よもや佐保が知るはずもありませんが、誰かのために戦っていると言う事実の確信部分を理解したのだと思います。

「……ええい、大技投入じゃ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかの予想外の進撃に焦った沓子は更に水の古式魔法を発動させます。

それはここが内陸の競技場とは思えない程のいくつもの大波です。

頭上遙か高くまでせり上がった大波は、大嵐の海のようです。

それはまるで葛飾北斎の名画、富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の荒れ狂い舟に襲いかかる巨大波そのものです。

ですが今のほのかには通じません。

「――どんな波が来たって負けないよっ!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

やがてふたりはコースに設けられた巨大な透明チューブの中に入りました。

「……追いついた!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかがついに沓子の背に迫りました。

「勝負はループ出口のカーブ。インは取った。わしの勝ちじゃ!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

沓子は勝利を確信したようです。

「……なっ、……なぜじゃ!? インコースは取ったはずっ!?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

沓子は驚愕です。

インコースを取らせないために右側の壁にいっぱいに寄ったはずなのに、右にほのかの姿があるからでした。

自分の右側には日陰になっている壁しかないと確信していたはずです。

「――幻影魔法っ!? 影を濃くして目の錯覚をっ!! わしとしたことが……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

沓子の右側の壁が落とす影を濃くして境界を錯覚させたことで、インコースを制したほのかは沓子を抜きました。

「……達也さん。教えてくれた作戦が成功しましたよっ!! 達也さんっ!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そしてゴールのゲートをくぐります。

「私、勝てましたっ!!」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかはボードの上で両手を挙げて勝利のポーズを取りました。

この決勝戦は”水”対”光”の勝負でした。

フィールドが水面と言うことで水の古式魔法を得意とする沓子に翻弄されっぱなしだったほのかですが、最後の最後に『光のエレメンツ』ならではの幻影魔法を持ってきた作戦勝ちです。

試合後。

選手たちが使う控え室に向かう廊下でのシーンとなります。

そこにはほのかとほのかに背を向けた沓子の姿があります。

「い~や~、やられたわい。まさかこのわしが水の競技で不覚を取るとはなあ~。

それだけお主の想うこころが強かったと言うことじゃな?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかの方に振り返りながら沓子が告げます。

「……おも、……おも?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そしてほのか、赤面……。言葉も出ません。

まさかとは思いますが、愛梨も認めるように妙に勘や予知が鋭い沓子のことですから、ほのかの想いがなんなのかをわかっていたのかもしれません。

「……沓子」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

そこへ三高みんなの心のお姉さんである佐保が登場します。

ほのかと平気の平左衛門で会話している沓子ですが、佐保はそんな沓子の内心をすでに見抜いているようで胸元に抱き寄せます。

「ああん。悔しかったのじゃ……」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

まるで母に甘える幼い娘のように素直に泣き顔を見せる沓子です。

「……はいはい」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ほのかは自分の小指を見ます。

(私、勝ったよ。思いっきり戦えたよ。雫はどう?)

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

それは雫と交わした約束を守れた証でした。

場面変わって控え室にいる雫。

すでに『アイス・ピラーズ・ブレイク』の衣装である緑色の振り袖姿です。

髪に飾ったかんざしが似合っています。

「……おめでとう。ほのか。……次は私の番」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

速報はすでに伝わっているようで、雫はほのかの『バトル・ボード』新人戦女子優勝を知っています。

そして次は自分の番だと、改めて覚悟します。

もちろん雫の相手は司波深雪。

第一高校一年トップ3の中でも別格かつ桁違いの実力の持ち主……。

この数ヶ月に来日することになるUSNA軍戦略級魔法師であるリーナに勝ってしまう世界第一線級魔法師です。

魔法科高校の優等生 第9話の見どころ


魔法科高校の優等生 第9話の見どころは2つありますので順番に解説していきますね。

顔が怖いです

第三高校一年生の三人娘のひとりである一七夜栞。

栞は数字落ちした実家の悲惨な家庭で育ち、前向きな可能性皆無の環境だったところを一色愛梨に助け出された過去を持ちます。

その後は一七夜家の養女となり、愛梨、沓子との充実した高校生ライフを過ごしていますので、現在は幸せです。

その栞ですが、悲惨だった実家時代に身についてしまったのか今でも表情が乏しいのが特徴です。

それがクールに見えるのも事実ですが、それにしても喜怒哀楽を顔に出しません。いつも静かに微笑むだけです。

そんな栞ですが、『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子準決勝の対エイミィ戦で、実に悪い顔を見せてくれます。

魔法発動のために手を真っ直ぐ伸ばしたままの決めポーズのときに「……へっ」と小さく笑いを漏らしたときの顔――左目をやや閉じて口を半開きにしたときの顔が、えもいわれぬ悪人顔になるのです。

普段はほぼ無表情な分だけあって、この変化は他のキャラ以上にインパクトがあって驚かされます。

同じような無表情キャラに第一高校一年女子の北山雫がいますが、雫はこういう顔をしません。

栞は恵まれない環境で育ち、雫は恵まれた環境で育ちました。

その違いだとは決して言い切れないのですが、雫にはなく栞にはある暗い部分がそうさせたのではといろいろ考えてしまえる怖い顔です。

モノマネのつもりなのでしょうか……?

第一高校一年女子で『バトル・ボード』の選手は光井ほのかです。

ほのかは司波達也に好意を寄せているのは周知の事実。

ですので自分が使用するCADの担当エンジニアも当然達也に担当して欲しかったのですが、多忙な達也はそこまで手が回らず、二年生女子で生徒会書記でもある中条あずさがエンジニアを担当しています(但しトレーニングでは達也が担当)。

そして迎える『バトル・ボード』新人戦女子決勝戦。相手は強敵である第三高校の四十九院沓子です。

ほのかは沓子と試合直前で競技場廊下で鉢合わせしてしまい、沓子に挑発されてしまったほのかはメンタル面で翻弄されてしまいました。

元々気が弱いために大舞台が弱いほのかですので、良いことではありません。

そこへやって来たのが担当エンジニアであるあずさでした。

あずさは達也が同時進行している『アイス・ピラーズ・ブレイク』から抜けられないことを告げるのですが、その後に達也から預かったほのかへの伝言を伝えるのです。

「……二人で練った対策どおりやれば、優勝できる。辛くなったら練習のことを思い出せ、だそうです」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

あずさはその容姿を小動物と形容されるように小柄でいつもビクビクしているようなイメージで、声も甲高く幼い印象です。

そんなあずさがほのかのために達也の口調を真似て話してくれたのがこのセリフです。

……ですが、ざんねんです。似ていません。

これは中条あずさ役の声優である小笠原早紀さんの演技の力量ではありません。

あずさの声で達也を演じても絶対にそっくりになる理由がなく、間違いなく調子っぱずれになるはずです。

なのに、あずさ本人はそれにまったく気づいていないと言うあずさの”天然”っぷりを十分に考慮した上での意図した脱力感を与える演技……。

つまり奥深いモノマネ(演技)だと思えます。

そんなあずさのモノマネですが、性格の良いほのかですから、あずさの演技でも達也に直接言われたのと同じように感激するのが微笑ましいです。

また、ほのかのCAD担当エンジニアであるあずさですが、自分より達也の方が段違いに優秀であることを知っています。

また、達也を一途に想っているほのかのことも知っていますので、できればどれだけ達也に担当してもらいたかったかと、ほのかに劣らず切望していたはずです。

そんなあずさの心配りも伝わる良い場面です。

魔法科高校の優等生 第9話のネタバレ感想


魔法科高校の優等生 第9話のネタバレは2つあります。

そこまで見抜いていたのでしょうか

「お兄さまに何の策もないとは思えないもの」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

これはエイミィの試合を観戦していた深雪のセリフです。

エイミィが前回の予選で圧勝し、準決勝の一七夜栞戦でも使用した”氷柱転がし”を封じられたときに出た言葉です。

第三高校の吉祥寺真紅郎が栞に授けた作戦――”氷柱転がし”が激突した瞬間に、自陣の氷柱の地面との摩擦係数をゼロにして滑らすことで、激突の勢いを殺してしまう――ことで破壊を免れる戦法は、エイミィにとっては万事休すを意味しました。

豪快で派手な戦い方をするエイミィは、場に応じてあれこれ他の手段を使い分けられるような器用な真似ができる魔法師ではないからです。

そのことを良く知る観客席のチームメイトたちは、エイミィ側の氷柱をガリガリと削ってくる栞の戦いを見て絶望の表情に囚われます。

そんなときに出た深雪のセリフがこれでした。

「お兄さまに何の策もないとは思えないもの」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

ご存じのように深雪は極度のブラコンですので”お兄さま”については何事でも最上級の評価をする傾向があり過ぎるのですが、この件に関してはその真剣な眼差しから”マジ”な発言だとわかります。

そして周囲もこの九校戦で第一高校一年女子選手たちに数々の奇跡を起こしてきた司波達也と言う最強エンジニアの力を知っているので、エイミィがこのまま破れることはないと一縷の望みを”達也が授けた作戦”に期待します。

「……さすがに制御力では敵わないな。だがエイミィ、君のフィールドはそこじゃないだろう?」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

これは達也のセリフです。

”氷柱転がし”が封じられ呆然としているエイミィを見て達也が口にした言葉でした。

この後エイミィは葛藤することになります。

このまま負けてしまう自分。ここまでがんばったことでみんなに許してもらえるだろう自分……。

でも、……これは私が望んだホントじゃない。こんな結末はイヤだ。

そう言う心のせめぎ合いの直後に、エイミィは覚醒します。

そして一度は途切れていたサイオンが沸き起こり、”氷柱弾”が編み出されるのでした。

”氷柱転がし”はエイミィとの打ち合わせの際にエイミィが幼少の頃に石柱を動かして遊んでいた話の流れから達也によって編み出された魔法です。

ですが、この土壇場で飛び出した”氷柱弾”は事前に打ち合わせた魔法ではありません。

結果的にこの魔法でエイミィは栞に辛勝するのですが、これは深雪が予言した《お兄さまに何の策もないとは思えないもの》に当てはまるものではないようにも考えられます。

では、深雪の予言は外れたのか、そして達也が口にした《だがエイミィ、君のフィールドはそこじゃないだろう?》とはなんだったのか……。

それらを考察したいと思います。

結論から言うと、達也が授けた魔法はもちろん”氷柱弾”ではなく、”氷柱転がし”のみとなります。

ですが、”氷柱弾”へと到達する魔法の試案は2095年7月21日の第一高校会議室で考えられていたのでした(魔法科高校の優等生 第8話「氷熱地獄《インフェルノ》」)。

この日、会議室にいたのは達也とエイミィです。

ここで達也とエイミィの間で次のようなやり取りが行われました。

――「エイミィは、構造物を移動させるのが得意なんだよな?」

「うんっ。かなり大きいのも扱えるし、発動速度も自信あるよぉ!!」

「そうか、それなら『アイス・ピラーズ・ブレイク』の氷柱を、ひとつの構造物として移動させることはできるか?」

「もちろんっ!!」――

引用元:魔法科高校の優等生 第8話

ここで『アイス・ピラーズ・ブレイク』で使用される魔法の話としての重要な点は、”氷柱をひとつの構造物として移動させること”です。

元々が”氷柱をひとつの構造物として移動させる”ことであれば転がそうが飛ばそうが同じ事となります。

なので”氷柱転がし”の次に”氷柱弾”が編み出されるのは別に飛躍した考えではなく、”氷柱をひとつの構造物として移動させる”氷柱転がしの延長線上にある当然と言える応用です。

そのことから”構造物の移動”の魔法を達也と打ち合わせたときから”氷柱弾”に至る布石はすでにあったと考えられます。

つまり《お兄さまに何の策もないとは思えないもの》の”策”とはやはり”氷柱弾”のことで、間接的、もしくは仄めかす程度にしかエイミィに伝授してはいませんが、やはりお兄さまの策だったと言えます。

そして次の点である、”君のフィールド”と達也が言ったくだりです。

この言葉の意味を理解するには少々回り道が必要です。

栞との対戦の最中で”氷柱転がし”を封じられたエイミィが心の葛藤の後に”勝ちたい”と言う無意識下で放ったのが”氷柱弾”でした。

それを見たチームメイトの里見スバルが毎夜繰り広げられるトランプゲームでの話として次のように発言しています。

「――もしエイミィに無意識に力を抜く癖があって、今その箍が外れたのだとしたら、これがエイミィの本当の実力なのかもしれないな」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

エイミィの中にある無意識に力を抜いてしまう癖。それは真の実力を出させない箍となります。

そんな中でも”構造物の移動”は得意だけあって氷柱を地面で転がす”氷柱転がし”は使用可能な魔法となりました。

ですが、それ以上に破壊力がある氷柱を飛ばしてぶち当てる”氷柱弾”は”無意識に力を抜く癖がある”エイミィには使えませんでした。

エイミィが”氷柱弾”を使えるようになる条件は絶対に”勝ちたい”と言う強い意思、そして”無意識に力を抜いてしまう箍を外して本当の実力”を出すこと。

この2つの条件が合って初めて”氷柱弾”は使用可能になると思われます。

そのことから達也は7月21日の会議室での打ち合わせ時から、移動系魔法が得意なら氷柱を飛ばしてぶつける魔法がベストであることを見抜いていたのですが、絶対に勝つと言う闘志に欠け、どうしても無意識に力を制限してしまうエイミィには、まだ伝えるのは早いと判断して、”氷柱転がし”だけを授けた可能性が高いです。

つまり達也が言葉にした”君のフィールドうんぬん”とは、無意識に諦めてしまう今の領域ではなく、闘志を持ち、その先にある本当の実力に至った領域こそが”君の本当のフィールド”であり、そこに至れば自ずと”氷柱弾”に行き着くと言う意味ではないかと考えられます。

そして深雪が口にした”何の策もないとは~”に含まれる”策”とは具体的に”氷柱弾”までは授けてはいませんが、その布石となる”氷柱転がし”を身につけさせることで、あとは精神的に成長すれば自ずと”氷柱弾”に行き着けるだけのヒントを与えてあることが”策”だと思えます。

戦士としてだけでなく軍師としても最強である司波達也なので、そこまで見抜いていたことこそが”策”だったと言えると思います。

既視感ある必勝策

この第9話「あなたがいたから」では、『バトル・ボード』新人戦女子の決勝戦が登場します。

決勝戦で戦うのは”光のエレメンツ”である第一高校の光井ほのかと”水の精霊使い”である第三高校の四十九院沓子です。

新人戦初日(魔法科高校の優等生 第7話「数学的連鎖(アリスマティック・チェイン」)の予選でほのかはスタートの瞬間に強烈な光で水面を反射させて他の選手たちを転倒を誘い、ぶっちぎりの独走で勝利しました。

これを可能にしたのはほのかが”光のエレメンツ”であり光魔法を得意とするからです。

そして一方の沓子は”水の精霊”を行使する古式魔法の名家の娘らしく、水面を魔法で不安定な状態にさせ、他の選手たちを次々転倒させて勝利しました。

これで互いの手の内はだいだい理解できます。

そして始まった決勝戦。

スタート時は発動が早い現代魔法の使い手のほのかが先行します。

ですがレース中盤から古式魔法による水面操作と実は現代魔法もこなせる沓子がほのかを抜きトップとなります。

そしてやって来た最終コーナーで右側インコースぎりぎりを取ったはずに沓子の右側をほのかが抜き去って優勝となりました。

ほのかが最終コーナーで仕掛けたのは光系魔法の一種である幻影魔法でした。

右側壁が水面に落とす影を濃くして影の範囲を広く見せかけ、これより右は壁だと錯覚させることで沓子をそれ以上右側に寄せないようにしたのです。

そして右のイン側に寄りきれない沓子の右側インコースをほのかが利用して抜き去ったのでした。

ほのかによる『バトル・ボード』で影を濃くする幻影魔法。

これに既視感がある方は原作小説、もしくは”本篇アニメ”である「魔法科高校の劣等生」をご覧になった方だと思います。

本篇「魔法科高校の劣等生 第13話 九校戦Ⅵ」の流れでは次のようになっています。

まず、予選にてほのかの光魔法が行使されます。

4名いる出場選手はほのかだけが濃い色のサングラスを着用していました。

そしてスタート開始の号砲が鳴った瞬間に、ほのかはかなり強烈な閃光を水面に発動させました。

その結果、他校の3選手たちは目が眩んだ結果、視界を奪われパニックとなってしまいボードから落ちてしまい、スタートするまで長い時間を奪われてしまいました。

そして我一人先行するほのかは危なげなくゴールして予選を通過したのです。

そして「魔法科高校の劣等生 第14話九校戦Ⅶ」では決勝戦が行われました。

この予選では、ほのかを含めた3名の選手はすべて濃い色のサングラスを着用していました。

これはもちろんほのかの光魔法対策のためでした。

そして試合開始。

今回はほのかは特に魔法発動もせずにレースに臨みます。

スタートダッシュがやや遅れましたが、その表情になぜか焦りはありません。

その後でした。

第1コーナーに差し掛かったとき、ほのかは魔法を発動させます。

すると先頭の選手がインコースを取らずにアウト側へとふくらんでカーブに突入したのです。

そのためほのかは労せずにインコースぎりぎりを取り、あっさりと抜いて首位となりました。

そして迫る第2コーナーでもほのかは魔法を発動させ、後続の選手たちがアウト側にふくらんで大きめのカーブを描くのとは対照的にイン側ぎりぎりで曲がることで大きな差をつけました。

この仕掛けに気づいたのは第一高校一年の吉田幹比古でした。

幹比古は観客席にいるレオ、エリカ、美月たちに説明します。

「……なるほど、そういうことか。濃い色のゴーグルで視界が暗くなっている相手選手は、明るい面と暗い面の境目で水路が終わっていると錯覚して、暗い面に入らないようにしてしまうんだよ」

引用元:魔法科高校の劣等生 第14話

そしてエリカがつぶやきます。

「……幻術にこんな使い方があるなんて……」

引用元:魔法科高校の劣等生 第14話

あまりものコロンブスの卵的な魔法の使い方に驚いたのですが、この仕掛けを企んだのももちろん達也です。

達也は予選で派手に閃光魔法を見せつけて決勝に進んだ他校を警戒させて濃いサングラスを着用させました。

そしてレース中ではカーブの壁が落とす影の色を濃く範囲を広くさせて水路のイン側ぎりぎりを隠蔽したのです。

企画立案は達也ですが、光魔法の使い手であるほのかでなければできない手法でした。

”本篇アニメ”では決勝時の他の2選手は名前も知れないいわゆるモブキャラでしたが、この”優等生”では相手はネームドキャラの四十九院沓子なので、そういう大事な大舞台にこの幻影魔法が再登場したことを楽しまれた方も多いと良い演出だと思います。

まとめ

ここまで「魔法科高校の優等生 第9話《あなたがいたから》」をご紹介して参りました。

ここで今回の内容をまとめたいと思います。

●あらすじ要約

今回の第9話も九校戦の新人戦が舞台となります。

物語冒頭からいきなりの好カードの試合となりました。

競技種目は『アイス・ピラーズ・ブレイク』で、第一高校の明智エイミィと第三高校の一七夜栞の対戦で準決勝となります。

エイミィは前回の予選でも使った魔法である”氷柱転がし”で先制点を奪いますが、エイミィの戦法は栞とその参謀役である吉祥寺真紅郎に看破されており、エイミィの”氷柱転がし”は完全に封殺されてしまいます。

その間に栞の猛攻が始まりエイミィは万事休すとなってしまうのです。

いつも無意識下で諦めてしまうのがエイミィの性格ですが、負けたくない強い思いが、エイミィに隠されていた本当の実力を覚醒させました。

氷柱を飛ばしてぶつけると言う前代未聞の荒技”氷柱弾”を行使したエイミィは魔力不足で倒れるのも恐れずに戦って、栞に辛勝できました。

その結果、エイミィを含め、深雪も雫も『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子を勝ち進み第一高校が3名決勝進出となるのでした。

その後、大会実行委員会から第一高校に連絡がありました。

それは3名とも同じ高校なので対抗戦の意味合いがなくなることから3名同時優勝ではどうか、と言う打診でした。

第三高校の栞との激戦で立っていられないくらい消耗しているエイミィは承諾しましたが、雫から深雪と戦いたいとの意思表示がありました。

そして深雪もそれを受けました。

こうして同じ第一高校同士の決勝戦は行われることになりました。

その後、深雪に勝てるとは思わないけど、深雪と全力で戦える機会は二度とないと思う、と言うのが対戦理由だと明らかになるのでした。

そして病室。

ここではエイミィとの戦いで死力を尽くした結果、倒れてしまった栞がいました。

その近くには愛梨の姿があります。

雫に敗れたときは精神的に折れてしまった栞ですが、今度は愛梨に感謝を述べられるくらい良い雰囲気で、この短期間に精神的に成長したところを見せてくれます。

その後は『バトル・ボード』新人戦女子決勝となります。

対戦するのは第一高校のほのかと第三高校の沓子です。

”水の精霊使い”である沓子が繰り出す数々の魔法に苦しめられたほのかですが、最後は”光のエレメンツ”の面目躍如で幻惑魔法で沓子を錯覚させて勝利を収めました。

ほのかは雫と約束をしていました。

ほのかは『バトル・ボード』新人戦女子優勝、そして雫は『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子優勝を共にすることです。

しかし雫の次の相手は最強で親友、司波深雪なのです。

 

●見どころは「栞の表情」と「中条あずさのモノマネ」

☆「顔が怖いです」

第三高校の一七夜栞は第一高校の北山雫と並んで無表情無口キャラとなっています。

そのため喜怒哀楽など顔の表情がくるくる変わる様子はなく、いつでも感情を表に出さない表情をしています。

その栞の顔が変化する場面がありました。

それはエイミィとの『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子準決勝での試合中です。

エイミィのオリジナル魔法である”氷柱転がし”を封じ、完全に試合の主導権を握ったシーンでそれは登場します。

打つ手なしとなったエイミィをじわじわと追い詰めるときのその表情はかなり悪役の顔で、見応え十分です。

 

☆「モノマネのつもりなのでしょうか……?」

このモノマネは第一高校二年生で技術スタッフのひとりである中条あずさが行ったものです。

『バトル・ボード』新人戦女子決勝を控えているほのかのところに行ったあずさは、ほのか相手に司波達也のモノマネを披露するのです。

「……二人で練った対策どおりやれば、優勝できる。辛くなったら練習のことを思い出せ、だそうです」

と言う内容でほのかを応援するもので、ほのかはそれに感激するのですが、正直達也にぜんぜん似ていません。

ですがこれは小動物系で甲高い声のあずさにクールな表情でいつも落ち着いている達也を真似ろと言うのがそもそもムリな注文なのです……。

 

●ネタバレは「そこまで見抜いていたのでしょうか」と「既視感ある必勝策」

 

《そこまで見抜いていたのでしょうか》

「お兄さまに何の策もないとは思えないもの」

引用元:魔法科高校の優等生 第9話

これは『アイス・ピラーズ・ブレイク』新人戦女子準決勝で得意技である”氷柱転がし”を封じられなすすべがなく対戦相手の栞に追い込まれたエイミィを見て深雪が発言した言葉です。

これまで第一高校一年女子チームを快進撃させた担当エンジニアであり軍師でもある達也が無策で栞相手にエイミィを戦わせる理由がないことを意味しています。

この後、精神的にも追い詰められたエイミィは、心の中での葛藤に勝ち、強い闘志を持ったことで、”氷柱転がし”の上位技である”氷柱弾”を編み出して栞に勝つことができました。

一見、エイミィが自らの意思で”氷柱弾”を生み出したようにも思えますが、その背景にはやはり達也が存在していたことを考察してみました。

 

《既視感ある必勝策》

『バトル・ボード』新人戦女子予選で光井ほのかはスタート時に水面に強烈な閃光を発生させて他の選手たちの視力を奪ったことで試合を優位に進め決勝へと進みました。

そして第三高校の四十九院沓子との決勝戦では、”水の精霊使い”である沓子の魔法に苦しめられつつも最終コーナーで光系魔法を使うことで沓子を抜き返し優勝することが出来ました。

この最終コーナーで使用した魔法が日光が落とす影を効果的に使った幻影魔法です。

幻影魔法は”光のエレメンツ”であるほのかが得意とする光系魔法で、この試合の場合はコース両脇の高い壁が水面に落とす影の濃淡や範囲を操作してコース幅の錯覚を起こさせて、沓子にインコースぎりぎりを見誤らせた結果の勝利です。

これらの幻影魔法の使い方に《既視感》がある方も多いと思います。

この使い方は予選で使った”水面の閃光”と同様に”本篇アニメ”である「魔法科高校の劣等生 第14話九校戦Ⅶ」で、やはりほのかが『バトル・ボード』新人戦女子決勝で使った戦法です。

ほのかの魔法は基本”まやかし”です。そのためダメージ等を与えることはできないため使いどころが肝心となります。

ほのかに作戦を伝授したのは当然達也ですので、実に狡猾な使い方してくるのがわかります。

このようにほのかが使った”水面の閃光”と”影の操作”をスピンオフ作品である”優等生”でもしっかり描いてくれるのはファンとして嬉しい演出です。

※文中に登場する”氷柱転がし”、”氷柱弾”は「魔法科高校の優等生」公式の魔法の名称ではありません※

拙文を最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。

 

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