この記事では魔法科高校の優等生 第6話「九校戦、開幕です」のネタバレや感想、見どころについて解説していきます。
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アニメ「魔法科高校の優等生」は、アニメ「魔法科高校の劣等生」のスピンオフ作品(外伝)となります。
長編作品で、人気のある脇役キャラを主人公にさせたスピンオフ作品は、世に多く存在します。
ですが、その多くは本編から独立したエピソードとして描かれることが多いです。
これはもとからの主人公が活躍する本篇物語に下手に干渉させないことで、本編の世界観や諸設定に影響を与えずにすむからです。
具体的な例をあげますと、この魔法科シリーズの原作小説である「魔法科高校の劣等生」には2冊の短編集が存在しますが、そのほとんどがスピンオフ作品となっていますので、いくつかタイトルをご紹介します。
【魔法科高校の劣等生5 夏休み編+1】
●「優等生の課外授業」← 主役:森崎 駿
●「アメリア・イン・ワンダーランド」← 主役:アメリア・英美・明智・ゴールディ(エイミィ)
●「友情と信頼とロリコン疑惑」← 主役:吉祥寺 真紅郎
【魔法科高校の劣等生SS】
●「竜神の虜」← 主役:吉田 幹比古
●「目立とうミッション」← 主役:黒羽 亜夜子、黒羽 文弥
●「薔薇の誘惑」← 主役:西城 レオンハルト、千葉 エリカ
見ていただいてわかるように、これらでは司波達也は主役として登場しません。
そしてこれらのスピンオフ作品は、本編の物語の中では登場しないシーンが舞台となっていることが多いです。
そのため達也がいなかったシーン、関わり合いのないシーンとして、例えば夏休みであったり、第三高校の吉祥寺真紅郎の物語であったり、中学時代の話だったり、レオとエリカの先祖に関わる外国のCAD機器製造会社の話だったりとなっています。
そのことで達也が登場しなくても不自然でなく、また、本編に影響を及ぼすことのないのが特徴です。
ですが、この「魔法科高校の優等生」は違います。
本篇アニメと同じ舞台となっているのが、他の魔法科スピンオフ作品と大きく異なります。
”優等生”は、あくまで主役が司波達也から、司波深雪、光井ほのか、北山雫の3人に変更されて3人から見た視線で本篇アニメと同じ展開をなぞっていくのが特徴となっております。
主役が3人の少女たちであるため、展開されるシーンに説得力を持たせることから、ある場面でのその場の登場人物が本篇アニメと異なっていたり、セリフが少し変更されていることもありますが、それがまた見どころとなっております。
今回は「魔法科高校の優等生 第6話「九校戦、開幕です」の見どころやネタバレなどをご紹介したいと思います。
魔法科高校の優等生第6話「九校戦、開幕です」のあらすじ要約
『魔法科高校の優等生』第6話名言ピックアップ③
「相手の不幸を願うなんて、軽口でも許されないわ」(愛梨)
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第6話は2095年7月9日から始まります。
場所は1-A。深雪、ほのか、雫の所属するクラスです。
机からポップアップされている半透明モニタに、期末試験と思われるテストの結果が表示されています。
魔法実技、魔法理論の合計点で、総合1位は深雪、2位がほのか、3位が雫と仲良し3人組がトップ3を独占すると言う、超優等生ぶりを発揮していますが、これは雫が「まあ、順当な結果だね」と言った言葉の通り、想定内なことが伝わります。
そして総合1位の深雪なのですが、見ているのは同じテスト順位なのですが、総合ではなく”理論”のみの順位を表示させていて、「お兄さまと私の名前が並んでる……」と悦に入りうっとり声を発します。
その魔法理論の順位の1位は達也、そして2位が深雪でした。
深雪は自分が学年主席であることよりも、達也が1位に君臨し、その下に自分がいることの方がずっと喜ばしい様子で、重度のブラコンの深雪らしいと言えばらしい行為です。
雫「――深雪のこういうところが残念と言うか……」
ほのか「かわいいと言うか……。でも、この成績なら3人とも選ばれそうだね。九校戦」
雫「うん。そのためにテスト勉強がんばってきた。うん、絶対に選ばれたい」
と、雫には珍しい強い意志を込めた言葉が出ます。
『九校戦』は、「全国魔法科高校親善魔法競技大会」が正式名称となる日本全国に9校しか存在しない国立魔法大学付属高校同士で競われる魔法スポーツ大会です。
21世紀末の世界情勢から、魔法は国家の外交、軍事、産業などにも深く関わることから、とても注目度が高く、政府機関や魔法工学業界なども公式に、ときには隠密に、視察に訪れる魔法競技会です。
その雰囲気は、国内プロ野球球団だけでなく、メジャーリーグのスカウトも訪れる現代の甲子園球場で行われる高校野球大会にどことなく似ているかもしれません。
そしてテレビなどで全国中継されることから、この九校戦に出場したい思いで魔法科高校に入学した生徒たちも多く、雫のそのひとりで、幼い頃から熱心なフリークでした。
そのことから、九校戦に自分が出場することは、この第一高校入学を含め、雫の人生設計にとうの昔から織り込み済みの決定事項だったようです。
そしてその後、生徒会室では、生徒会長の七草真由美と深雪がいました。
「正式な選手発表はまだだけど……。今年の新入生は粒ぞろいで頼もしいわ」と、真由美は発言し、他にもほのかや雫にも期待を寄せていることを口にします。
その真由美の操作する端末画面には、深雪やほのか、雫以外にもエイミィ、滝川和美、里見スバルらの写真が表示されており、すでに真由美の中では、彼女らの選出は確定しているようでした。
「深雪さんには貴重な戦力として期待しているわ」と、告げました。
ですが、この真由美の言葉には裏があると思われます。
先の「第5話、手出しはさせません」にて、真由美は深雪が15歳の高校一年生に過ぎないにも関わらず、世間一般の常識では、その年齢で使えるとはにわかには信じがたい高等魔法「ニブルヘイム」をテロ組織ブランシュ殲滅作戦で行使したのを確実に知っていると思われるからです。
それは同じ十師族の十文字克人から聞いたのか、それとも七草家の情報網から知らされたのかは判別できませんが、真由美は、深雪が実は四葉家本家の直系魔法師とは気づいていないまでも、成績が良くて美人である、ただの女の子とは思っていないはずです。
なにより兄の達也の異常なまでの強さ、賢さから、『限りなく十師族に近い存在』だろうと確信していると思われます。
そのことから、真由美は深雪の九校戦での戦いぶりの中に、それにつながるナニカを発見できるかもしれないと計算しているはずです。
なぜならば、七草真由美は第一高校の生徒会長である以前に、十師族の人間です。
そして十師族に属する者たちは、学校や勤め先の都合よりも”家”の都合を重視します。
そのことから深雪、そして達也の司波兄妹は要注意人物として真由美本人も、そして”家”もリストアップしていることは容易に推察できるのです。
余談となりますが、同じ第一高校の十文字克人も、もちろん同様の価値観で、十師族の意向や、十師族の誇りを学業よりも明らかに重視する傾向が見られます。
また、十師族の一条家の嫡男である一条将輝(第三高校)も原作小説「魔法科高校の劣等生(18) 師族会議編<中>」で一条家当主である父の命令で、第一高校へ短期編入をしていますし、真由美自身も本篇アニメ「魔法科高校の劣等生九校戦編第9話」で、九校戦会場へと向かうバスに遅刻してやって来ましたが、その理由も”家”の用事でした。
十師族とは魔法師の貴族と例えてほぼ正解です。
そのことから”家”の存続と繁栄が第一の目的なので、そのためならば、その他のすべて、例えば他の十師族家を犠牲にしてでも家名を上げることにこだわる一族だと理解できます。
そして先ほどの生徒会室でのシーンに戻ります。
真由美は、深雪との言葉のやり取りに、ほのかや雫の名前も挙げていました。
それはほのかや雫も戦力として期待しているのは事実なのですが、深雪にはそれ以上の特別の期待(実力、そして正体)がかかっていて、期末テスト総合2位、そしてその以下になる、ほのか、雫たちとは別格として認識しているのは間違いないと思われます。
そして日時は進み、7月18日。
西日のオレンジ色の陽光の中、芝生のグランドに達也と、生徒会からの説明役として派遣された生徒会書記の中条あずさ、そして一年女子代表に選抜された深雪たち7名の選手たちが体操服姿で集まっていました。
「1年E組の司波です。九校戦ではCADの調整の他、訓練メニューの作成や作戦立案を担当します」
達也は淡々とた口調で目的を告げます。
それを嬉しそうに聞いていたのが深雪ですが、視線を落として達也が来ている技術スタッフ用の作業着の胸元を見ます。
そこには八枚花弁のエンブレムがあります。
このエンブレムの有無が一科生と二科生の違いを現しているのですが、九校戦に参加する技術スタッフ用の衣服には、すべてエンブレムが付いているので、わざわざ”ない”タイプを用意する無駄は必要ないからだと思われます。
と、言いますのも学校創設以来、二科生が九校戦選手や技術スタッフに選ばれた例は一度もなかったので、用意する必要すらなかったからことが理由です。
芝生のグランドのシーンに戻ります。
そして深雪が達也の着衣にエンブレムがあることを嬉しくも誇らしい表情で見ているのは、”本当の実力”ならば、この学校で達也に勝る者はいないのだから、達也がエンブレムを身につけるのは、当然過ぎるほど当然なこと、と思っていたからです。
そして、生徒会役員の中条あずさから達也の紹介が終わると、「……男子、なんだ」「できればエンジニアは女の子が良かったかな」と忌憚のない意見が飛び出します。
それは一年女子選手の春日菜々美(かすが ななみ)と、滝川和実(たきがわ かずみ)でした。
これに対して、ほのかは「……えっと」と戸惑いを隠せない表情になりますが、ほのかの真横と言う定位置に立っている雫は、いつも通りの平常運転のポーカーフェイスです。
この雫の無表情には、意味があります。
ほのかは、また一科生による達也への見下し発言かと早とちりしかけたようですが、するどい観察眼を持つ雫には、これは菜々美たちが、技術スタッフが男子だから故の羞恥や照れが生じるだけであって、担当が女子だったら、そういう悩みは不要なのに……。
と、言うことに過ぎない菜々美たちの些細な感想だとわかっていたからです。
菜々美と和実の子供のような遠慮ない感想に、達也は、
「俺もそのほうがいいのではないかと思ったんだが……」
と、少々にがにがしい表情になり、そして回想シーンとなります。
そこにはグランドに集合した一年男子の選手たちがいるのですが、やはりと言うか当然と言うか、森崎が達也に食ってかかります。
「僕たちには、二科生のサポートなど必要ない!!」と、取り付く島もない反応を見せました。
これが一年男子選手たちの総意なのか、それとも森崎個人の意見なのかは不明ですが、森崎の剣幕から、他の選手たちからの反対意見は出なかったようです。
そして、この反応から感じるのは、森崎は口では”二科生”と二科生全体を指していますが、実際は司波達也と言う一個人への悪感情に過ぎず、今回の発言も達也が対象だったことで、罵詈雑言が条件反射で出てしまっている様子で、こうなると、もはや末期症状と言えます。
一科生としてのプライドが高すぎる森崎にとって、入学早々での校門でのトラブルで助けられる形になったことへの屈辱と、風紀委員会での活躍の違いと、風紀委員長の渡辺摩利との親しさの差など、すべてに置いて後塵を拝している”二科生”の司波達也と言う存在に、腸が煮えくりかえるような思いをし続けていることが原因で、もはや達也がらみだと、まともな思考が出来なくなっているように感じます。
一年女子たちとのシーンに戻ります。
「――と、まあ、男子の方から先に断られてね」
と、達也が苦笑している様子の口調で経緯の説明をしました。
するとエイミィが、心底あきれた口調で、
「ホント、男子ってバカだよねぇ~。テストの結果見て、わかんないのかなぁ~?」
そして雫が淡々と言葉を発します。
「二科生で技術スタッフに選ばれること自体が異例中の異例。
それだけ達也さんが優れていると言うなによりの証拠だよ」
ほのかも達也にサポートしてもらえると言う、願ってもない展開に嬉しそうに、
「うん。そんな人にサポートしてもらえるなんて、私たちはラッキーだよね、深雪?」
「ええ」と、深雪は満面の笑みです。
すると里見スバルが、いつもの落ち着いた低い声で、「男子だろうと、二科生だろうと、優秀な人材なら、ボクは一向に構わないよ」
と、眼鏡を中指で持ち上げる決めポーズを披露します。
「……スバルが、そう言うなら……」
と、菜々美も渋々と言った表情ですが、受け入れます。
それに対して和実は、すっかり納得したようで、
「よろしくお願いします」と、笑顔で言いました。
するとそこで雫が手を上げて「達也さん。アイス・ピラーズ・ブレイクで使用する魔法について、相談が……」と、ちゃっかり個別の相談を持ちかけると、達也への想いを知っているはずの雫の行為を、抜け駆けと受け取ったほのかは焦って、「あぅ、雫、ずるい」と雫を牽制しようとするのですが、その反対側からエイミィが、「あたしのCADの調整をお願い」と、積極的に依頼すると、男子生徒のエンジニアにいちばん否定的であった菜々美までもが「じゃあ、私のも」と、一気に人気者になった達也なのですが、いちばん嬉しそうなのが心の底からの笑顔の深雪でした……。
このシーンで、補足すべきことがあります。
エイミィの発言にあった”テストの結果見て、わかんないのかなぁ~?”に、ついてです。
この『第6話 九校戦、開幕です』の冒頭にあった期末テストの順位で総合1位は深雪でしたが、魔法理論にだけ限定すると、1位は達也です。
九校戦での技術スタッフに求められるスキルは、CADの調整、訓練メニューの作成、そして試合における作戦の立案です。
これらはすべて”理論”の分野となります。
そのため技術スタッフには魔法の”実技”の能力は、あって困るモノではないが、なくても構わないモノに過ぎません。
F1レースのエンジニアに、F1レーサーのような高度な運転技術を求める必要がないのと同じ話です。
それよりも各魔法への深い洞察や、CAD調整に必須な基礎システムの理解、そして起動式記述の正確さ、各選手が出場する競技に特化した訓練メニューの作成、実戦時に使用する魔法の選択と最大効果を発揮させるための作戦立案などです。
それらを踏まえると達也を技術スタッフに据えるのは最適だと判ります。
また、強大な魔法を行使できる深雪のCADの調整を達也がひとりで行っていることを知っている者たちには、達也の起用はしごく当然だと受け止めたと思われます。
また、雫が、”二科生で技術スタッフに選ばれること自体が異例中の異例”と称していますが、前例のない二科生からわざわざ選ばれると言うことは、候補にあがった一科生たちよりも、よほど優れているのではないか?、と言う判断材料になります。
九校戦技術スタッフに求められる最重要なスキルを注目せずに、ただ二科生の達也への反発だけで判断し、拒否反応を見せる森崎の行為は、とてもではありませんが”理論”的ではなく、逃がした魚がどれだけ大きかったのかを、この後、森崎はイヤと言うほど知るようになります。
この”優等生”では、達也がどのような過程を経て九校戦の技術スタッフに抜擢されたかのシーンが登場しません。
雫の言葉にあるように、”二科生で技術スタッフに選ばれること自体が異例中の異例”なのですから、そこには大勢の人物たちの思惑が錯綜していました。
その経緯をご案内したいと思います。
その場面は、本篇アニメである「魔法科高校の劣等生 九校戦編第8話」収録されています。
生徒会室での昼食での場面が、その舞台となります。
そこにいるのは、生徒会長の真由美、生徒会会計の市原鈴音、風紀委員長の摩利、生徒会書記の中条あずさ、そして達也と美雪の司波兄妹の合計6名です。
九校戦に向けて、すでに選手たちの選考は完了しているのですが、真由美がグチのように問題を口にします。
それはエンジニア、つまり技術スタッフを任せられる人材が決まらないことでした。
その場の雰囲気と話題から身に迫る危機を察したのか、達也が静かに部屋から去ろうと立ち上がりドアに向けて歩を進めたのですが、それを意外過ぎるほど意外な伏兵に察知されてしまいました。
伏兵の名は中条あずさ。
あずさは自身が技術スタッフとして九校戦に参加するほどの腕前なので、これまであれこれ交わした生徒会室での会話の端々から、達也が実技よりも理論、それもかなりの技術を持つエンジニアだと確信していたと思われます。
それが次の言葉につながりました。
「あの~。だったら司波くんがいいんじゃないですか? 深雪さんのCADは、司波くんが調整しているそうですし」
生徒会室に激震が走りました。
だらけていた真由美は瞬時に覚醒し、両手で机を叩き起き上がると、
「盲点だったわっ……!!」
摩利もあずさの言葉に合点がいったようで、
「そうか……。あたしとしたことが、うっかりしていた」
と、すっきりとした笑顔になります。
そして真由美に到っては、頬をうすく染めていて、「あぁ……」と、まるで一目惚れでもしたみたいです。
それに対して達也ですが、さすがに聞こえなかったふりをして立ち去ろうとはできなかったようで、
「一年生が技術スタッフになった例は、過去にないのでは……?」
と、無駄な抵抗をするのですが、
「なんでも最初は初めてよ」と、真由美。
「前例は覆すためにあるんだ」と、得意気に宣言する摩利です。
この2人に、目を付けられて逃げられなかったのは、4月の風紀委員へ任命された件で、達也ならわかりきっているはずなのですが、あれこれ言って逃れようとします。
そして達也は、ここでなかなか見事な詭弁を交えて、どうにか真由美と摩利の捕縛の手から逃げおおせそうな展開になったのですが、ここで、想像だにしなかった、あずさ以上の伏兵が現れました。
それは、深雪です。
「私は九校戦でも、お兄さまにCADを調整していただきたいのですが……。駄目でしょうか……?」
言葉の最後の部分は、かすれたような小さな声になります。
深雪にとって担当エンジニアは雨が降ろうが槍が降ろうが、達也以外はあり得ない選択肢なのですが、さすがに辞退したがっている達也を目の前に、強く訴えるのはわがままと思ったようで、小声になったのです。
そして、こここそが天王山の戦いと察知した真由美が、深雪の言葉に見事に乗っかり、流れは達也の起用へと傾きました。
達也にしてみれば、深雪に対して、ブルータスよ、お前もか、と言った思いだったと想像できます。
そして放課後。
場所は部活連本部の部屋が使用されました。
そこには中央には生徒会長の真由美、そして左右に部活連会頭の十文字克人、風紀委員長の摩利と言う”三巨頭”と呼ばれる天才魔法師が居並び、彼らに向かい合う形で第一高校の九校戦代表選手たちと技術スタッフたちが着席しています。そしてその中にはもちろん達也の姿もあります。
そして真由美が、「生徒会は技術スタッフとして、1年E組の司波達也くんを推薦します」と宣言すると、さっそく不満や疑問の声があちこちであがります。
いちばん後ろの席に座っていた雫が、その雰囲気に対して怒気を含む口調で言います。
「達也さんの実力も知らないのに」
そして隣に座るほのかも、不満、疑問の同調圧力に抗うように、
「うん。……私も達也さんに担当してもらいたいな……」
と、言葉をこぼします。
そしてそんな停滞した空気を打開するために克人が、達也の技能を見極めるためには、CADの調整をさせればいい、と、しごく妥当な提案を全員の前でするのでした。
そして誰のCADを調整させるかで、少々揉めましたが、剣術部所属の二年生である桐原武明が志願したことで、達也の技能を見極める作業が始まりました。
そこで達也が見せた技に一同は驚きの目になりました。達也はキーボード以外の入力デバイスを一切使わないフル・マニュアルでの調整を始めたからです。
そこにはコピペでお茶を濁そうと言った手抜きは一切ありません。
まるで一から構築しているのではと思われるほど、すさまじいまでの速度のタイピングで、画面には多数の文字が瞬時に入力され流れて行くのでした。
技術スタッフである、あずさは、すぐにその技能の価値に気づき、「へっ?」と言葉を漏らします。
そして、他にももうひとり、達也の技量が、高校生レベルでは絶対にあり得ない高みにあることに気づいたのが、技術スタッフである二年生の五十里啓(いそり けい)でした。
啓は刻印魔法の名家である五十里家直系の魔工技師志望の魔法師であることから、術式記述のことへの深い造詣があります。
「へえ、完全マニュアル調整か」
その啓の言葉に、隣にいる婚約者である千代田花音(ちよだ かのん)が問います。
「ねえ啓。それってスゴイの?」
「うん。ただ、彼のやっていることがなんなのか、判らない人のほうが多いみたいだ」
と、啓は、周囲の様子を的確に表現しました。
そして作業が終了し、桐原武明が調整されたCADで動作確認をするのですが、まったく違和感がない、と報告をしました。
ですが、やはり”二科生、一年生”と言うことに抵抗がある生徒たちから不満が出るのですが、あずさが達也を支持し、生徒会副会長の服部刑部が、それを後押ししたことで達也の技術スタッフ任命が決まったのでした。
このような経緯があったことで、異例中の異例である、一年生、二科生の技術スタッフが誕生したのです。
そして物語は”優等生”に戻ります。
時は夜。場所は司波兄妹の自宅のラボで、達也が深雪のCADの調整を行っています。
達也は大きなモニタ画面に向かって作業しており、深雪はいつもと同様に下着姿で調整機器のベッドで仰向けに横たわっています。
そこで深雪は不満の声を漏らします。
「お兄さま、昼間はずいぶん楽しそうでしたね?」と、ほのかたち女子選手との会話に嫉妬しているのは、いつもの深雪です。
ほのかたちの前では、達也の実力が正しい評価をされ、賞賛され、期待され、お願いされている人気者ぶりに、喜んでいた深雪ですが、達也とふたりとなるといつもの甘えが出ています。
「ほのかも雫もエイミィもスバルたちも、みんなかわいくて素敵ですものね……」
と、つぶやきながら達也の方へスタスタと歩み寄っていきます。
それに気づいた達也ですが、悪い冗談を言う深雪をなだめるようにするのですが、
「かわいい同級生に囲まれて、鼻の下を伸ばされていたお兄さまは、お仕置きですっ!!」と宣言すると、強力な魔法を発動させます。
それはいつもの凍らせる魔法ではなく、強い衝撃を受けた達也が力尽きたように崩れる様子から、深雪のもうひとつの得意魔法である精神干渉系魔法だと推測できます。
達也は魔法を受けた直後に『再成』の魔法を使い、無事に意識を取り戻します。
これを深雪は”兄妹の戯れ”と言っていますが、相手が達也でなければ殺してしまっているところです。
達也が不死身であることで成り立つ実に危険な遊びであって、あやうく焼き餅殺人事件となってしまうところでした。
ですが、こういう常識からずれた部分があるのが、規格外の魔法師たちである司波兄妹なので、らしいな、とも思えます。
そして迎えた2095年8月1日。
九校戦会場でのシーンとなります。
場所は国防軍の施設である富士演習場で、ここは毎年、九校戦が行われる会場でもあります。
そして同日の夜に行われた各校代表選手たちとの懇親会会場の場面となります。
広い式場では、9校の生徒たちが大勢集まっており、立食形式での懇親会が始まりました。
すると優勝候補のひとつである金沢市にある第三高校の選手たちが来場し、大勢の人々の目を引いています。
その中で、最も注目を浴びたのが、第三高校一年生の一条将輝です。
将輝は十師族のひとつである一条家の嫡男で、三年前の2092年に新ソ連軍が行った佐渡侵攻作戦に義勇軍として参戦し、多数の敵兵たちを殲滅させています。
そして、その血みどろな戦いぶりから「クリムゾン・プリンス」の異名で知られる強力な天才魔法師です。
そして将輝と並び立つ、もうひとりの有名人は、同じく一年生で『カーディナル・ジョージ』の二つ名を持つ吉祥寺真紅郎(きちじょうじ しんくろう)です。
真紅郎は、学究肌の魔法師で、未発見だった「加重系統プラスコード」を発見した天才少年として著名ですが、単なる頭脳派だけでなく、戦闘もこなせる強力な魔法師です。
そして親友の将輝の参謀役を自他共に認めていることで、将輝とのコンビは他校にも伝わるほどに有名です。
会場の各校選手たちが将輝と真紅郎に注目し、ざわついている中で、将輝たちの後方から会場入りしてきたのが、一色愛梨(いっしき あいり)たち、一年女子選手である、3人の美少女でした。
リーダー格と思えるのが、金色の長い髪を腰まで伸ばしている愛梨で、少々不機嫌な顔と表情です。
「まったく、戦いの前だと言うのに、お気楽なものね。懇親会をなにか別のモノと勘違いしているんじゃないかしら?」
と、軽蔑、侮蔑を含んだ口調でそう言います。
「それだけ気を抜いている者が多いと言うことじゃ。これは儂ら三高の楽勝じゃな」
と、老人口調で返事をするのは、小柄で腰より下まで髪を伸ばしている四十九院沓子(つくしいん とうこ)で、相手にもならん、と、ばかりな軽口を叩きます。
「沓子。そうやって、すぐ楽観視するの、良くないわ」
と、沓子を諫めるのが、物静かな印象を受ける肩上ボブの髪型の一七夜栞(かのう しおり)です。
この3人は、完全なる”優等生”オリジナルキャラなので、本篇アニメには顔も名前も登場しませんが、この”優等生”では重要な役目が与えられたキャラなので、要注目です。
そして、いきなり人々のざわめきが高くなり、愛梨たち3人は背後を振り返ります。
すると、そこには七草真由美、十文字克人、渡辺摩利の”三巨頭”を中心とした第一高校のお歴々が勢ぞろいして入場してきました。
この十師族直系をふたりを含む”三巨頭”を有する第一高校は、真由美たちの学年のことを最強世代と呼び、その言葉通りに優勝を重ねてきました。
そして今年も優勝候補の筆頭にあげられていますし、”三巨頭”も三連覇することを当然の責務としているのは間違いないようです。
(あれが第一高校。三連覇に挑む最強世代か……)
と、冷静な目で真由美たちを観察しているのは、栞です。栞は愛梨たち3人の中で、もっとも冷静で物事の分析を得意とする頭脳派ですので、”三巨頭”を眼前にしていても、舞い上がったり、闘争心をむき出しにするなどの感情を表に出すことをしません。
常に”冷静沈着”な性格であり、感情を出すことが少ない達也や雫と通じるところがあるかも知れません。
「ここに来る途中、高速で事故に巻き込まれたらしいが、無事だったようじゃな」と、沓子が情報通なところを見せます。
この、沓子が口にした”高速での事故”ですが、この”優等生”では割愛されています。
そのことから、物語の整合性を保つために、ご案内いたします。
原作小説や本篇アニメをご覧になった方々は、すでにご承知だと思いますが、この九校戦には陰謀が仕組まれていました。
それを企てていたのは、香港系国際犯罪シンジケートである”ノー・ヘッド・ドラゴン”の日本支部です。
『ノー・ヘッド・ドラゴン日本支部』は、九校戦の試合結果を賭けとした大掛かりな賭博を行い、それにイカサマをして顧客たちを欺し、大きな利益を得ようと考えました。
そして、大本命である優勝候補筆頭の第一高校選手たちを交通事故に巻き込んで、会場に到着できないようにして欠場させる腹づもりでした。
第一高校と言う本命不在の状況で他校を優勝させて、賭けに参加している客たちから大金をだまし取ろうと画策していたのです。
第一高校を欠場に追い込むための事故に見せかける作戦の方法は、選手たちが乗った貸し切りバスに、ノー・ヘッド・ドラゴンの工作員が運転する自動車を激突させようとするものでした。
対向車線で壁に激突し跳ね飛ばされた勢いで、こちらのバスがいる車線に飛び込んできた自動車に、第一高校の選手たちはすぐに気がつきました。
そしてこのまま放置すれば大事故につながることも、すぐに理解できました。
ですが、多数の魔法師がいることが逆に仇となってしまうのです。
バスの中で最初に魔法を発動させようとしたのは二年生の千代田花音です。
そして、森崎と雫もそれぞれ自己判断で魔法を発動させようとしました。
それを見た摩利が、「バカ、やめろっ!! ――魔法をキャンセルするんだっ!!」と3人に命じます。
それにはちゃんと意味があります。
3人が連携も確認もせずに、てんでばらばらに魔法発動させようとしたことで、サイオンの嵐が発生してしまったのです。
つまりそれぞれの魔法が相克を起こしてしまったことで、それらの魔法が威力を発揮できないだけでなく、新たな魔法を追加で行使しても狙い通りの威力が望めなくなっていた状態なのでした。
そして次の瞬間に、事故車の燃え上がる炎を深雪が振動系冷却魔法で鎮火させ、勢いが落ちずに高速で迫ってくる車体を十文字克人が自らの代名詞でもある”ファランクス”で静止させたことで大事には到りませんでした。
バスに同乗していた他の選手たちのほとんどは、深雪と克人のふたりで防いだと理解していましたが、実はいちばん最初に魔法を行使して、深雪の魔法が有効になるためのお膳立てをしたのは達也でした。
深雪が魔法を発動させようとしたその直前に、達也が目標である事故車周囲で相克を起こしているすべての魔法式を吹き飛ばしました。
それが達也が得意とする魔法『術式解散〈グラム・ディスパージョン〉』でした。
技術スタッフである達也はバスには乗っておらず、後続の機材輸送用のトラックにいたのですが、急停車して道路に対して横向きの姿勢で止まったバスの動きを見ていれば、なにが起きたのかはすぐに理解できます。
そして深雪はもちろん達也がこの状況を完全に察知し、『グラム・ディスパージョン』を使ってくることは承知していました。
そのことから魔法の効果が発揮され、車体の鎮火に失敗することはあり得ないと判っているのでした。
兄妹ならではの、すばらしい阿吽の呼吸です。
ですが、深雪の魔法が事故車に展開される寸前に、違和感を覚えた者がおりました。
それは渡辺摩利です。
摩利は相克を起こしているはずのサイオンが、深雪の魔法発動直前に消滅するのを知覚しました。
そのことが違和感なのですが、気づいた者は少なかったようです。
ですが、摩利の横に立ち、事故車を見ながらファランクスを発動させた克人も、バスの奥側で事態の一部始終を見ていた真由美も、強力な魔法能力を持つ十師族の人間なことから気づかなかったとは思えないのですが、それを口にはしませんでした。
このような、仕組まれた交通事故に第一高校の選手やスタッフは巻き込まれたのが、三高の沓子が言った”高速の事故”の顛末となります。
これは本篇アニメ「魔法科高校の劣等生 九校戦編第9話、第10話」で見ることができます。
そして”優等生”の「第6話 九校戦、開幕です」に戻ります。
懇親会の会場で、「ここに来る途中、高速で事故に巻き込まれたらしいが、無事だったようじゃな」と、沓子の発言があった場面です。
沓子から交通事故の件を聞いた愛梨は、
「良かったわ。万全の相手を倒してこそ、私たちの力を示すことができる……」
と、不敵な言葉を発したのです。
そしてそのときでした。
「……一条さま? どうしたんですか?」と、三高の少女の声がします。
すると、そこでなにやら妙な事態が発生したようです。
愛梨はその方へと向くと、そこには、立ったまま固まっている将輝の姿がありました。
顔は熱を帯び、少しトロンとした目つきになっていて、明らかに視線の先にあるナニカから目が離せなくなっているのがわかります。
「……美しい……」
将輝はぽつりとつぶやきます。
「……一条くん? ――あんなに見とれるなんて、いったい? ……っ!! 」
愛梨は将輝の視線の先をたどったのですが、その瞬間に目を大きく見開いてしまいました。
そこには非の打ち所がまったくない完璧なる”美”をまとう少女がやって来たのです。
その少女は、もちろん深雪で、ほのかと雫の3人で会場入りしたのでした。
「……あの子、いったい?」
思わず息をのんだままの姿勢で愛梨がつぶやきます。
「一条くんが釘付けになるのも頷ける」
顔の表情を変えないいつものままの栞がそう応えます。
「うむ。さすがにびっくりしたぞ」と正直な感想は沓子です。
すると、なにやら覚悟めいた表情になった愛梨がひとりで歩き出します。
行き先はもちろん深雪のところです。
「さぞかし名家のご出身とお見受けするわ」
話しかけられた深雪は振り返ります。
「私は、第三高校一年、一色愛梨。同じく一七夜栞と、四十九院沓子よ」と、愛梨は自分たちを紹介しました。
栞は無表情のまま軽く頭を下げ、沓子は興味があるのか、少しだけ笑顔です。
「第一高校一年、司波深雪です」
深雪は静かに笑みを浮かべてそう返答しました。
「……司波? (そんな家あったかしら?)」
と、深雪の言葉に疑問を感じる愛梨でした。
この懇親会のシーンはここで終わりますので、そのことから補足説明をいたします。
まず一条将輝についてです。
将輝は魔法師の名家である十師族、一条家の跡継ぎです。
そして資産家の長男でもあり、成績は文武両道。
そしてとどめがイケメンとなる、これ以上無い好条件の少年です。
そのため昔から言い寄ってくる女性は多いはずだろうこと、そして十師族の人間特有の恋愛観から、仲の良い特定の女性はいなかったのも推測できます。
改めてご案内いたしますと、十師族とは早く言ってしまえば魔法師の貴族たちのことです。
そのことから家のため、一族のために、より強い魔法師を産み育て、次の世代へと受け渡すことを義務づけられています。
そのため結婚相手となる対象はおのずと絞られてしまい、強い魔法力を持つ人物に限られてしまいます。
そして強い魔法力を持っている人物となると、結局は、やはり十師族やその補佐に位置する師補十八家(しほじゅうはっけ)、そして、そのすぐ下になる百家(ひゃっけ)と言った名家出身となってきます。
それらのことがあることがあるため、将輝にとって婚約者は当主である父、そして母や親類たちが決めるものであり、自由恋愛で恋人を探すことなど、生涯にわたって一度も考えたことはなかったことは容易に推測できます。
例えるのであれば、将輝の立場だと七草家の真由美であれば、魔法力も家柄も釣り合うことになります。
なので、将輝にとって、完璧な”美”を持つ深雪との出会いは、それまで疑うこともなかった人生観が根底からガラガラと崩れる思いだったと想像できます。
そして、この一目惚れは、おそらく間違いなく初恋だったと思われるのです。
そして深雪に話しかけた愛梨ですが、「……司波? (そんな家あったかしら?)」と怪訝になったのも、将輝のケースと近いものがあります。
愛梨が生まれ育った一色家は、十師族の予備軍と言える存在の師補十八家で、名前の通り十”師”族を”補”佐する十八の魔法師名家です。
なにかの問題が発生し、十師族の家が十師族から外れることになった場合、師補十八家の中から、新たな十師族が選ばれ担当する、と言った役割を与えられています。
その理由から師補十八家は十師族に準ずる身分があると言えます。
(他に魔法師の名門と言えば”百家”と呼ばれる家々があります。第一高校二年の五十里啓、同じく二年の千代田花音、同じく一年の千葉エリカ、同じく一年の十三束鋼のそれぞれの家が百家となります。
百家は完全に十師族の下に位置する家格となるようですが、それでも名家であることには違いありません)
そして一色家の愛梨ですが、愛梨もやはり魔法師の貴族と呼べる家柄の令嬢です。
そして跡継ぎでもあることから、家の存続と繁栄のために強い魔法師であることが求められ、また本人もそのことを良く自覚しています。
その理由から、愛梨は強い魔法師と戦って勝つことで自分と一色家の名声が高まることを常に意識していると思われます。
そのことから、将輝が見とれて、自分も思わず息をのんでしまった深雪が、もし魔法師の名家出身だったら、相手にとって不足なし、と宣戦布告する心づもりでいたのだと推測できます。
また、この”優等生”では、本篇アニメでは登場した人物たちが、懇親会には登場しない設定となっています。
登場しない設定となったのは、千葉エリカ、西城レオンハルト、吉田幹比古、柴田美月の4人です。
このエリカたち4人は、代表選手にも技術スタッフにも選ばれていませんので、この懇親会に参加できません。
なので特殊な手段で会場入りしていました。
その手段が興味深いので、ご紹介いたします。
この特殊な手段が判明する流れは下記の通りです。
深雪、達也が宿舎となる富士演習場内にある国防陸軍の施設であるホテルに到着すると、受付ロビーで、いるはずのないエリカと美月に出会います。
そして夜に行われた懇親会で、メイド姿で給仕のバイトをしているエリカから、ここにはレオも幹比古もいることが判明します。
九校戦の最中であるにも関わらず、陸軍施設であるホテルでの宿泊ができ、そして関係者以外、入場禁止の懇親会に参加できている。
この謎はエリカの実家で百家でもある千葉家が、有力な『剣術道場』であることが関わっています。
『剣術』と言う武道は、戦いに身を置く仕事に従事している警察官や軍人の多くが修行として身につけていることが多いのですが、その『千葉の剣術道場』の門下生に警察官や軍人が多いことが関係してきます。
そしてその千葉道場の娘であり、印可と言う高位の位を持つ腕前のエリカは、門下生たちから、《強くて美しいアイドル》的な存在となっていて、エリカの頼みは断れないと言う強い上下関係が存在するのです。
そのことで、こういう状況でも軍のホテルに宿泊ができ、懇親会に潜り込むことも可能でした。
軍人の門下生は国防陸軍が多いとの情報が過去にあったと思われますが、劇場版「魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」では、国防海軍の士官もエリカを見知っていて、エリカの物言いにビビリながらも頼みを受けていた様子から、海軍軍人にもエリカの顔パスは有効なのが判明しております。
ここで「魔法科高校の優等生 第6話 九校戦、開幕です」に戻ります。
場所は選手たちが宿泊しているホテルの一室で、この部屋にはほのかと雫が使用しています。
「ああぁん、もうっ、ホント、やな感じっ!!」
ほのかが怒り心頭の様子で、ベッドの上で枕に八つ当たりしています。
「なんなのっ、あの人っ!!」
ここで懇親会での回想シーンとなります。
「……あらぁ、一般の方でしたか。名のあるお方かと思って、お声がけしましたの。――勘違いしてごめんなさい。試合がんばってくださいね」
と、愛梨が慇懃無礼で嫌味たっぷりに深雪たちに話しかけた場面となります。
自分のことではそれほどではないけれど、友人のこととなると血が上りやすいのが、ほのかなので多少の誇張はあるかもしれませんが、このシーンの愛梨はプライドが高すぎる悪役令嬢そのものでした。
「って、どういう意味よ。なにも知らないくせに。深雪はスゴイんだからねっ!! もおっ!!」
と、ほのかの怒りはなかなか収まらず枕が乱暴にぶたれています。
するとそこに、いつも冷静な平常運転の雫が、タブレット端末を手に話します。
「……一色愛梨。通称、エクレール・アイリ。――師補十八家、一色家の令嬢で移動魔法を使った攻撃のするどさからエクレール《稲妻》と称されるようになった」
と、愛梨の情報を伝えます。
そしてほのかも画面を見て、驚くべき事実を知ります。
「ええっ?! 一年生なのにミラージ・バットの本戦に出るの? 上級生を押しのけて……」
「いっしょにいたふたりも同じ一年で、どっちも有力選手だよ。きっと新人戦で戦うことになると思う」
と、雫が淡々と得られた情報をほのかに伝えます。
「ううわぁ、今から気が重いよ……」
と、知りたくないことを知ってしまった事実に対して本音が出て、そのままベッドにひっくり返るのでした。
そのときドアがノックされます。
ドアを開けたほのかたちの前にはエイミィが立っていました。
「うふふふぅ……。温泉に行くわよぉ!!」
そう宣言したエイミィの後ろには里見スバル、春日菜々美、滝川和実と言った同じ一年女子選手の仲間たちが立っていました。
場所は大浴場に移ります。
「……いい気持ち」と、大きな湯船につかったほのかの声が浴場に響きます。
菜々美も和実もスバルも、みな湯船でくつろいでいて良い笑顔です。
ここにいるほのかやエイミィたち全員が、着ているのは浴衣です。
ですが、現代の温泉旅館などで部屋で着る浴衣と違って、文字通り風呂場で入”浴”するときに着る”衣”類で、前側は余裕がある前合わせで、袖はなし、丈は膝上で短めで薄い生地で出来ています。
これはこの21世紀末の習慣で、女性はあまり肌を出さないことが当たり前となっているからです。
なので、浴場の女湯で女性同士であっても全裸になることはないようです。
そういう風習から魔法科第一高校だけでなく、すべての魔法科高校の女子制服も丈が長く、裾は膝下になっていることがわかります。
余談となりますが、深雪が自宅では超ミニスカート姿でいることも多いですが、これは自宅だからであり、達也に自分を異性として見てもらいたいと言うブラコンから来る行為かと思われます。
(補足情報となりますが、水着に関してはこの条件は当てはまらないようで、劇場版「魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」では、深雪、ほのか、雫、エリカ、美月の女性全員が海辺の別荘でビキニ姿を披露しています)
ホテルの大浴場に戻ります。
湯船に浸かるみんなが、くつろいでいるときに、いきなりでした。
「……しっかし、ほのか、発育いいよねぇ?」
と、意味ありげな顔でほのかに話しかけるのはエイミィです。
ほのかは嫌な予感を察知したのか、ひるむ表情を見せますが、エイミィは両掌の指をニギニギさせて迫ってきます。
「剥いていい?」
悪ノリのエイミィの問いを必死に否定するほのかですが、エイミィは止まりません。
「じゃあ、揉ませろ~」と、襲いかかるエイミィに「じゃあ、ってなによ? じゃあって!!」と抵抗するほのかですが、抵抗虚しくエイミィの毒牙にかかってしまうのでした。
ほのかはエイミィのなすがままになってしまうのですが、そこで近くで湯に浸かっている雫に助けを求めるのですが、
「大丈夫だよ。ほのかには揉むところがあるから……」
と、取り合ってくれません。
やはり雫はいくら仲が良くても、自分の胸と、ほのかの立派な胸を比べて、コンプレックスを感じているようです。
そこに事情を知らぬ浴衣姿の深雪が登場します。
その場にいる全員には、まるでキラッキラと後光が差しているような女神さまにしか見えないような衝撃を受けたのですが、その後、先ほどエイミィがほのかを襲ったように、全員の目が野獣と化して、深雪に襲いかかろうとする姿勢になりました。
それを見た深雪はうろたえます。
「……なんて言うか、新たな扉が開きそう」
と、物騒な言葉を発言したのは、やはり悪ノリ大好きなエイミィでした……。
この大浴場での浴衣シーンは、本篇アニメでも登場します。入浴している人数や、セリフなど、細かいところは異なりますが、概ね同じです。
そして本篇アニメでも餌食になるのは、ほのかで、襲いかかるのはエイミィです。
やはりエイミィは悪ノリがぴったりのキャラなのだと再認識できます。
そして舞台はホテル内の大きなロビーに変わります。
ここでは先ほど入浴していた深雪、ほのかたちが集まっています。
「いやぁ、はぁ、……危なかったぁ。深雪の白い肌の魔力ぅ」
しみじみとこんなことを発言するのは、もちろんエイミィです。
浴場で深雪に魅せられて襲おうと思った一同は、なにかが切っ掛けで正気を取り戻したようですが、おそらくこの場面の前に一瞬だけ登場した鹿威しのカコーンと言う音だと思われます。
この場所は広々としていて、深雪と雫は壁の前に立ち、スバルと菜々美はソファに座り、和実はそのソファの肘掛けに座り、全員の中心にほのかとエイミィが立っている、と、みんなが思い思いにくつろいでいて、風呂上がりのひとときを楽しんでいる様子です。
「――っていうか、エイミィはふざけすぎだよ」
と、ほのかがたしなめるのですが、エイミィには通じません。
「ええっ? だってほのかの胸、ポヨポヨして気持ちいいんだもん」
と、返り討ちにされるだけでした。
「……ポヨポヨ。……いいな」
と、思わずつぶやいてしまったのは、胸の大きさに劣等感を抱く雫でした。
そんなとき、第三高校の愛梨、栞、沓子の3人が姿を見せました。ですが深雪たち一高選手たちとは距離を取った状態で立ち止まります。
「――胸がどうとか、低俗な会話をしているようね」
と、愛梨は不愉快さを隠さないで、そう言います。
名家の令嬢である愛梨は、いわゆるこういう下ネタが当然のようにお気に召さないようで、眉をひそめています。
そんな愛梨を見て、栞が、
「まあ、愛梨はあんまり興味ないだろうけど、……なんと言うか、……ふつう」
と、発言するのですが、愛梨はすぐに反応してしまい、
「っ……。どう言う意味?」
と、強く問いますが、栞は微笑で返します。
この愛梨たち3人はこの”優等生”のオリジナルキャラなことから、これから登場機会が多くなるのは当然だと思えますが、まだ数度しか出てきていないので、彼女ら3人の立ち位置、性格の違いなどを知ることは、”優等生”をより楽しむために必要です。
そしてこの場面で、これまでの様子から、すでに三高の3人のリーダー格は愛梨だとわかっていますが、その愛梨に対して、無口無表情の栞が、遠慮無く物言いしても愛梨が叱りつけるようなことはなく、言われた愛梨も栞のひと言を真剣に受け止めていると言う良好な関係なのがわかります。
またそれらの会話を耳にしていて、ふたりの間に立っている沓子も微笑を崩しません。
そのことから、この3人は、互いにまったく遠慮がない親友同士であることが理解できるシーンとなっています。
そしてこのシーンは、栞が、一高のほのか、エイミィの会話を聞いて、高校一年女子であれば、会話に胸の話題が出るのは、ぜんぜん不思議ではなく、むしろ当たり前だと言うことを、他人にあまり興味がなさそうな無口無表情の栞が知っているにも関わらず、どこでも遠慮なく踏み込んでいく気の強い愛梨が、それを知らないことが、世間知らずのお嬢さまだと暗に揶揄しているところで、ふたりの性格を窺い知れる場面となっています。
「――とにかくっ!! あんなふざけた連中なんか気にしないで、やるべきことをやるだけよ。第三高校の新しい歴史は、私たちがつくる」
と、リーダー格らしく最後は愛梨が締めくくるのでした。
そして、2095年8月3日。とうとう九校戦が開幕しました。
会場には9校の代表選手たちが勢ぞろいし、ホテルのレストランでは食事を楽しみながらモニタで試合を観戦する人々、そしてスタンドの観客席も試合を観戦する人たちがいます。
その観客席では、国防陸軍独立魔装大隊の軍医少佐である山中幸典(やまなか こうすけ)と、藤林響子(ふじばやし きょうこ)少尉の姿もありました。
響子は、十師族九島家の親戚でもある魔法師で、電波、電子機器などのネットワーク通信技術に対する術式に非常に長けていて、国や大企業、大組織などのネットワーク情報を自由に操作できる技術を持っていることから、《電子の魔女(エレクトロン・ソーサリス)》の異名を持つ女性です。
そして全体を一望できる貴賓席には、十師族の重鎮で《老師》と呼ばれ畏怖されている九島烈(くどう れつ)の姿もあります。
こうして、本篇アニメと同じように、さまざまま事情から、この九校戦を訪れた主な登場人物が揃うのでした。
そして舞台は会場敷地内に幕営された各校の大型テント村の一角で、第一高校のテント脇となります。
そこにいるのは深雪と達也の司波兄妹ふたりだけです。
「では、昨日のバスの事故はやはり……」
深雪が達也に確認すると、
「複数の魔法を使った形跡があった。――事故を装った妨害行為と見て、間違いない」
達也から衝撃の事実を告げられた深雪は不安に駆られたのか、俯いてしまいます。
「だが心配するな。――深雪は必ず俺が守る。だから安心して競技に集中して欲しい」
と達也は深雪の頬に手を添えました。
「……お兄さま」
深雪は頬を赤らめます。
「お前の学生としての晴れ舞台、俺にも見せてくれ」
「はい、わかりました」
と、深雪は添えられた達也の掌に自分の手を重ねて、安心したように目をつむりました。
このシーンは、これだけの短いシーンです。
ですが、この”優等生”では、第一高校が九校戦会場である富士演習場へと向かう高速道路での、仕組まれた交通事故に巻き込まれそうになったシーンがまるごと割愛されていることから、この司波兄妹の短いシーンを入れて物語の整合性を調整したのだと推測できます。
そして試合が始まりました。
最初の競技は『スピード・シューティング』でした。
『スピード・シューティング』とは、魔法を使用したクレー射撃と理解するのがわかりやすいスポーツです。
この競技には第一高校からは、生徒会長でもある七草真由美が出場しました。
そして、舞台はすでに決勝戦となっており、真由美がパーフェクトの100点を叩き出し圧勝します。
遠隔精密射撃魔法の腕は当代随一と呼ばれ、『エルフィン・スナイパー』の異名を持つ真由美にとってパーフェクトは当然のことで、この競技での三連覇を達成してます。
そして次は第一高校の風紀委員長でもある渡辺摩利が出場する『バトル・ボード』で、そこでは予選が行われています。
摩利は優勝候補筆頭で、これまで二連覇していることから、今年の三連覇に期待がかかっています。
この『バトル・ボード』と言う競技はサーフボードのようなボードに乗り、全長3kmの人工水路を加速魔法などを使い順位を競うスポーツです。
どの魔法を使うかは選手個人によってそれぞれ異なるようで、摩利は基本となる移動魔法に加え、競技中にボードから落ちないようするために硬化魔法を応用したものを使用しているだけでなく、振動魔法も併用して行使しています。
そして、このように3、4種類の魔法を常時展開していることが、達也によって明かされ、その達也ほどの魔法師から「すごいな」と賞賛されていることで、第一高校の”三巨頭”のひとりである渡辺摩利と言う魔法師の実力の程が理解できます。
この摩利の『バトル・ボード』の予選の詳細は、本篇アニメ「魔法科高校の劣等生 九校戦編第11話」で見ることが出来ます。
ここで観客席でほのかやエイミィたちを観戦していた雫が、
「――渡辺先輩は、ミラージ・バットも優勝確実と言われている。さすがは二連覇中の最強世代」
と、口にしています。
”最強世代”とは、一年生のときから九校戦に出場している、七草真由美、十文字克人、渡辺摩利の3人を中心とする第一高校三年生のことです。
真由美は、「スピード・シューティング」と「クラウド・ボール」、摩利は「バトル・ボード」と「ミラージ・バット」、克人は「モノリス・コード」にて、それぞれ二連覇していることから、そう呼ばれています。
”最強世代”の中心である第一高校で”三巨頭”と呼ばれる3人は、ふたりが十師族直系、残るひとりが家格はやや落ちますが、それでも百家支流と言うことで、強力な魔法力を持っているのは当然なのですが、その強さや知名度が第一高校だけではなく全国レベルであることがよくわかる場面です。
そして、入学前からずっと九校戦フリークだったと言う雫ですが、第一高校に入学し、真由美、克人、摩利の実物を初めて見たときはどういうリアクションを示したのか見てみたい気がしますが、これは原作小説、本篇アニメでも描写されていないことが、とても残念です。
ここで『バトル・ボード』予選の観客席に戻ります。
先ほど行われた『スピード・シューティング』での真由美もそうでしたが、この『バトル・ボード』でも圧倒的な速さで勝利した摩利に対する歓声が大きいです。
その歓声は第一高校に限らす、他校の生徒(特に女子)からも盛んです。
そのことで、真由美や摩利の人気、実力、知名度が全国レベルなのを実感できるのです。
そんなときでした。ほのかが、前の列で観戦している深雪にそっと視線を向け、(……たぶん、今回の大会で深雪も有名になっちゃうんだろうな……)と、寂しげな顔になります。
これは、ほのかが深雪の実力が、”最強世代”に劣ることがないことを確信していて、そのことから出場競技ではおそらく優勝。
そしてその結果、一気に全国区レベルでのスーパースターになってしまうことだと思われます。
深雪が認められることは、とても嬉しいのだけど、自分と対等な関係ではなくなってしまい、深雪が追いつけないほどの高みの存在になってしまうことで、自分だけが取り残されてしまうことへの焦りだと思われます。
そして、ほのかは一度目をつむり、そして目を開け気合いがこもった顔つきになります。
それはなにかを決意したように感じられました。
そして2095年8月5日の早朝となります。
宿泊所であるホテルの近くにある森へと続く道に、ジョギングをするほのかの姿がありました。
(――深雪の総合力は圧倒的だし、雫も力押しでなんとかできる魔法力がある。……ふたりに追いつくには人一倍練習しておかなきゃ……)
頭の中でそう考えていると、「ほのか」といきなり声がかかります。それは達也でした。達也もほのか同様に早朝のトレーニングとしてジョギングしていたのです。
その後、達也はほのかのトレーニングに付き合うことになります。ほのかは達也に足を押さえてもらい、腹筋運動をしています。
「――しかし、感心だな。大会中なのに練習を怠らないなんて」
と、達也が率直な感想を述べます。
「ちょっとでも休んじゃうと、なまっちゃう気がして……」
「それは正しい考えだ。ほのかが出場する『バトル・ボード』も『ミラージ・バット』も、魔法力と同等に身体的なバランス制御が大事だからな。――この調子で新人戦に向けて、コンディションを維持するのが大事だ」
と、達也はほのかに対して、賞賛とアドバイスを送ります。
そして、腹筋運動で地に背をつけた体勢から、達也に「ひゃい」と返事をして上半身を起こすのですが、気がつくと達也の顔がすぐ近くになっていて、ほのかはいきなり意識してしまい頬が朱に染まります。
(……顔がちかぃ……。ど、ど、どうしよう、ドキドキが達也さんに聞こえちゃう……)
「がんばれよ、ほのか」
達也が、ほのかを励まします。すると、意識がぼおっとなっているほのかは、その言葉が脳内で反響してしまっているのでした。
(がんばれよ、ほのか。ほのか……)
「は、はいっ!! がんばりますっ!!」
ほのか、予期せぬ幸せな時間でした。
場面は変わってテント村にある第三高校の幕舎となります。
下級生A「水尾先輩。『バトル・ボード』準決勝、がんばってください」
と下級生の女子選手たちAとBに応援されているのは、第三高校三年の水尾佐保です。
佐保は、愛梨たち3人と同様にこの”優等生”のオリジナルキャラで、二学年下の愛梨とは幼なじみとなります。
「ありがとう。一高の渡辺に海の七高。とんでもないグループだけど、まあ、やるだけやるわよ」
と、佐保は苦笑しつつ、そう応えます。
佐保は身の程知らずな宣言などすることない控えめな性格なのが窺えます。
下級生B「でも、この組み合わせ、大会運営部の悪意を感じますよね」
下級生A「せめて、一高だけでも、あのバス事故で棄権してれば……」
と、物騒な言葉が飛び出します。
この言葉には佐保はなんて返答すれば良いのか判断に迷うようで、
「え~っと……」
すると近くにいた愛梨が見かねたようで言葉を発します。
「あなたたち、相手の不幸を願うなんて、軽口でも許されないわ!!」
と、ぴしゃりと言い放ちました。
するといっしょにいた栞からも、
「私たち魔法師にとって、イメージは現実そのものよ」
と、諫める言葉が出ます。
この愛梨と栞の言葉使いから察するに、下級生AとBは愛梨たち同様に一年生だと判別できます。
そして、そう言われると下級生AとBは、自分たちの落ち度に気づいたようで、
「……ごめん」と、俯きながら謝罪の言葉を口にしました。
「相手は手強いですが、水尾先輩なら大丈夫です。ご武運を……」
と、この場を締めるのは愛梨のひと言でした。
愛梨は悪役令嬢のような、慇懃無礼なところもある性格ですが、卑怯なこと、正々堂々ではないことをとても嫌う潔癖なところがあります。
これは一色家と言う名家出身なことや、『リーブル・エペー』と言うフェンシングに似た魔法剣術競技が得意なことから、その潔癖さは、騎士道に通じるものだと推測できます。
そして舞台は『バトル・ボード』女子準決勝となります。
観客席には、深雪、達也、ほのか、そして雫の4人が並んで座っています。
スタート地点に居並ぶ選手たちを見て、ほのかが話します。
「渡辺先輩と七高の一騎打ち」
その言葉を聞いた雫が、
「去年の決勝カードだね」
と、九校戦フリークらしく、豊富な情報を披露します。
そして開始される『バトル・ボード』準決勝。
スタートダッシュこそ、三高の佐保がリードしましたが、すぐに摩利と七高の選手が抜き去ります。
ここで、魔法科シリーズの有名な、『魔の第一コーナー』での場面が登場します。
先頭を進む摩利がコーナーにさしかかり、速度を落とし、進路にボードの舳先を合わせ加速させようとする瞬間、二番手の七高選手がコーナー直前で減速できずに進路そのまま、そしてさらに加速してしまうと言うあり得ない挙動を起こし、CADで制御できずに暴走。――そして激突。
勢いがついていたふたりは、そのまま防護壁を突き破ってしまった場面です。
三番手につけていた佐保は、それをいちばん近い位置で見ていたことになりますが、試合そのものは中止されているわけではないので、そのまま競技を続行し、一番手でゴールするのでした。
もしかすると、このときの佐保は、第三高校のテントで、下級生Aが、「せめて、一高だけでも、あのバス事故で棄権してれば……」
と、物騒な言葉と、そのときいっしょにいた栞が言った「私たち魔法師にとって、イメージは現実そのものよ」
と、諫めた言葉を思いだしていたかどうかは不明ですが、物語的にはテント内での会話が伏線になっていたことになります。
その後、場面は基地内にある国防陸軍の『裾野基地病院』内の病室となります。
そこのベッドで横たわるのはもちろん怪我をした摩利、そして見舞いに来た真由美と克人がいます。
摩利は、日常生活は一日で行えるようになるが、一ヶ月は活動停止との診断されていました。
そうなると当然、次に出場する『ミラージ・バット』は棄権となってしまいます。
まだ、二位の三高に対して、点差はそれなりの点差はあるものの、摩利が出場できないとなると、作戦変更も必要だとの結論が出ました。
その同時刻。
『裾野基地病院』の出入り口付近では、深雪、ほのか、雫、エイミィの4人がいます。
エイミィが、「渡辺先輩、大したことなさそうで良かったよね」と、誰に言うともなく、言います。
すると、「う、うん。……ホント、良かった……」と応えたのはほのかですが、その声は弱くて、身体も震わせています。
それに気づいた深雪が「ほのか、大丈夫?」と声をかけると「う、うん。大丈夫だよ……。エヘヘ……」と返答するのですが、どう見ても強がっているだけだとわかります。
雫「たぶん新人戦のこと……」
深雪「そうね。ほのかも『バトル・ボード』に出場するから、不安になるのも無理はないわ」
先を行くほのかに、雫と深雪の会話が聞こえているわけではないのですが、雫と深雪の会話が的中しているのが、すぐにわかるほど不安を浮かべた顔つきでした。
ただでさえ、大舞台に弱いほのかなので、メンタル面で非常に強いストレスを感じているのは、簡単に想像できます。
場面は病室へ戻ります。
克人「そういえば、渡辺の事故について、司波が調べているんだったな?」
真由美「ええ、いつもの摩利なら、あれぐらいのアクシデントは、なんなく切り抜けるはずだもの。――なにかあったとしか……」
克人「妨害か?」
それまで黙っていた摩利が発言します。
摩利「おそらく。……あの瞬間、水面になんらかの魔法が使われた」
克人「競技以外にも悩まねばならんとはな……」
ここで、この事件の犯人、及び犯行の手順などの”謎”が残りますが、物語はこのまま進みます。
舞台は変わって、2095年8月5日夕刻(大会3日目終了)。
場所は宿舎になっているホテルの会議室で、第一高校の主立った面々が集まっています。
参加しているのは、真由美、克人、摩利、市原鈴音、服部刑部、中条あずさ、司波深雪、司波達也の8名です。
議題となったのは、三高が予想外に点数を伸ばしてきていることへの対策です。
このままでは明日から始まる新人戦の点数いかんでは逆転される可能性が高くなってきたことが判明したのでした。
摩利「――だが要するに、私の『ミラージ・バット』棄権で挽回する策が必要と言うことだろう?」
真由美「だから私たちは、本戦のために新人戦をある程度犠牲にする、と言う結論に達したわ。――深雪さんには摩利の代わりに『ミラージ・バット』新人戦ではなく、本戦に出てもらいます」
その言葉を受けた深雪は想定外だったようで、「えっ……」とつぶやくだけでした。
ここで補足いたしますと、九校戦において、新人戦の獲得点数は本戦の半分となります。そのことから得点を稼ぐには本戦の方が有利となっています。
場面は同日の2095年8月5日夜。
場所は宿舎用ホテルの会議室で、集まっているのは第三高校の選手たちとなります。
そこでは下級生たちから『バトル・ボード』の優勝選手である水尾佐保が祝福されています。そこには拍手をする一条将輝、吉祥寺真紅郎の姿もあります。
ですが佐保は、参ったな、と言う苦笑です。
そこに愛梨が話しかけます。
「浮かない顔ですね?」
すると佐保は、
「うーん。……優勝は出来たけど、あんなことがあっての勝利だと、正直心から喜べなくてね」
と、心中を発露します。
それを見た愛梨は佐保の思いを察したことで少し悲しげな顔になりました。
佐保が言った”あんなこと”は、もちろん準決勝での一高の渡辺摩利と七高の選手の激突事故のことです。
そして説明はないのですが、察するに佐保は準決勝を1位通過して、決勝でも勝ったことで優勝したのだと想像できます。
ですが佐保は、摩利と七高を警戒していたことから、それ以外の選手であれば勝てる程の実力があったのだとわかります。
そして佐保ですが、とても人柄が良いようで、愛梨を始めとした下級生たちから慕われているのがわかります。
優秀なことから九校戦の選手に選ばれたのは間違いないのですが、この人柄の良さは勝利に必要な、勝つためには他者を蹴落とす闘争心とは正反対に位置することから、もしかしたら摩利たちに2年間勝てなかった理由のひとつはそこかも知れません。
ここで会議室に設置されているテレビモニタからニュースが流れます。
それは九校戦のニュースで、第一高校三年生の渡辺摩利の代わりに、一年生の司波深雪が『ミラージ・バット』の本戦に出場することを告げるものでした。
このシーンは本篇アニメではありませんでしたが、このような話題が全国にテレビに報道されるのも、九校戦の注目度からすると不思議ではないのかも知れません。
それを見て吉祥寺真紅郎が言葉を発します。
「一色さんと同じく、一年生からの大抜擢か。いったいどんな選手なんだろうね? 将輝? ……ん?」
「……天使」
真横に座る真紅郎に質問された一条将輝ですが、心ここにあらずで画面の深雪に釘付けで、頬は赤くなっています。
「……将輝?」
と、再度の呼びかけにも反応がありません。
すると同じくモニタ画面を見ていた四十九院沓子が、心当たりがありそうに、
「……あれは」と、つぶやくと、一七夜栞が、
「懇親会のときの……」
「うおっ!! あいつか!!」と、合点がいった様子です。
そして栞が愛梨に告げます。
「やっぱりただ者じゃなかったのね」
その言葉を受けた愛梨ですが、顔には緊張がありました。
懇親会で最初に見かけたときに、深雪にナニカを感じた愛梨ですが、出身が十師族などの名家出身でないことで、警戒を解いていたのですが、このニュースを見てしまったことで、三連覇を目指す一高が抜擢したからには、最低でも自分と同等の実力があることを、知ったのです。
そしてさらに言えば、警戒を解いてしまった自分の鑑識眼の甘さにも気づかされたと思われます。
そんな愛梨を見て、佐保は、
「愛梨。あの子を倒して必ず優勝して。――いや、渡辺の交代選手だからってわけじゃないけど、愛梨の強さを示すためにも、あの子には勝って欲しい。――そのためなら、私は全力でサポートするよ。一色愛梨は三高の誇りだからね」
「……水尾先輩」
佐保のこの言葉で、愛梨の顔には無用な緊張がなくなり、自信に満ちた顔が戻っていました。佐保による佐保らしい気遣いです。
愛梨は両手で佐保の両手を取り、
「サポートではなく、私は先輩と共に優勝を目指したいです。――本戦『ミラージ・バット』を私たちで三高のワンツーフィニッシュを飾りましょう」
佐保の心遣いで、愛梨にはいつもの強い決意が戻っているのでした。
そして翌日、2095年8月6日(九校戦4日目・新人戦初日)となります。
ホテルの外と思われる大きな建物の柱近くに、深雪、ほのか、雫の3人がいました。
「いよいよ今日から新人戦ね。がんばりましょう」
と、深雪が声をかけます。
「う、うん……」
すると、ほのかが応えますが、まだ摩利の事故を引きずっているのか、ちいさな声です。
「深雪も新人戦の他にも渡辺先輩の代わりなんて、大役だと思うけど……」
と、雫が深雪の心中を察して気遣います。
「そうね。でも、大丈夫。私にはお兄さまがついているから」
と、なんの遠慮もない満面の笑みです。達也がいれば万事問題なしの深雪らしい返答に、
「……そ、そうだよね。深雪はそうだよね」
と、深雪の反応に苦笑しながらほのかが返答します。
「あら、あなたたちも、でしょ?」
「「へっ……?」」
ほのかと雫の驚き声が重なります。
「作戦の立案やトレーニング。いつも側にいたのは、誰だった?」
深雪がウインクしながら尋ねました。
「ああっ……」
「うん。……そうだね」
ほのかと雫は頬を染めて反応します。
誰もが口にしませんが、それはもちろん最強のお兄さまである司波達也のことでした。
深雪は心の中で宣言します。
(――私たち、精一杯戦います。見守ってください、お兄さま)
魔法科高校の優等生第6話「九校戦、開幕です」の見どころ
魔法科高校の優等生 6話感想
九校戦で他の学校の人の視点も見れて楽しめた
三校にこんなすごい3人いたのか…
本編にも今後出てきて欲しいけどな
英美可愛かった#魔法科高校の優等生 pic.twitter.com/HGwyeNNNIG— コトブキ (@s5zKwfSDVb1xUHO) August 7, 2021
●見どころ1 たぶん新品種です。
この「魔法科高校の優等生 第6話 九校戦、開幕です」の冒頭の初っぱなに実は見どころがあります。
それは第一高校の学校全景に登場します。
放送では、まず画面は、本校舎が中央に映り、その後、右側へとパンするのですが、そのときに映る画面の左下の一本の樹木が、見どころとなります。
この木は、校門から本校舎へと繋がる並木道に生えているサクラの木なのですが、2095年7月9日現在のこの日でも満開となっていて、見事なピンク色の花々を披露しているのです。
深雪や達也たちが通う国立魔法大学付属第一高校は、東京都八王子市にありますので、サクラに見ごろは3月下旬から4月上旬辺りとなります。
それを考慮すると、とても不思議な現象です。
植物には狂い咲きと呼ばれて、季節外れに花が咲くこともあるにはあるのですが、咲くのはほんの少しの量です。
ですが、この咲き方は完全に満開となっています。
判断材料として、この”優等生”で校門付近が舞台となったシーンを探します
と、
1:2095年4月3日。
「第2話 ご一緒してもいいですか?」の下校時のトラブルシーンとなります。
これは深雪が、達也やエリカ、美月、レオと言った二科生たちと帰ろうとすると、一科生の森崎たちがそれを妨害する有名な場面です。
このシーンで、サクラの並木道が数回登場するのですが、道の両側に植樹されたサクラの木々は完全に満開となっています。
時期的にも東京の開花時期と同じなので、無問題です。
2:2095年4月23日。
「第5話 手出しはさせません」でもサクラは登場します。
『有志同盟』と生徒会長の七草真由美の討論会が行われ、その後に『反魔法国際政治結社ブランシュ』の武装工作員が第一高校に不法侵入し、テロ事件を起こした日です。
この日では、討論会が行われている時刻に、外にいたほのかと雫が会話をするシーンに、校内に植樹された樹木が映るのですが、それもサクラと思える咲き方でピンク色の花々が満開です。
その後も、間近で手榴弾が爆発した後や、司甲がテロリストたちと逃亡を謀った際に、走っていた校門への並木道も満開です。
時期的に考えますと、東京ではもうサクラは散っているのですが、それでもまだ4月なので、絶対にあり得ないとは言えません。
3:2095年7月9日。
そして「第6話 九校戦、開幕です」となり、この日も満開となっているのです。
このこと自体は、世界観やストーリーにまったく影響を与えない些細はことなので、問題とはなりません。
なので、このサクラの咲き方は諸事情があるのかも知れませんが、あえて突っ込む必要もないと思われます。
そのことから、これはこの時代には品種改良で、通年咲き続けるサクラがある、と思うことで良いのではないでしょうか……。
●見どころ2 ブルータスよ、お前もか?
九校戦編において、この”優等生”でも本篇アニメでも共通して登場するシーンがいくつもあるのですが、今回はそのひとつであるホテルの大浴場でのシーンをご案内したいと思います。
第一高校を始めとした九校戦参加の9校の生徒たちは、みんな富士演習場内にある国防陸軍が運営するホテルを宿舎にしています。
つまり、温泉大浴場とはこのホテルに存在するのです。
2095年8月1日。
九校戦開幕前に毎年行われる懇親会が終わった後の夜となります。
ほのかと雫が自室にいると、明智エイミィ、里見スバル、春日菜々美、滝川和実が、温泉に行こうと誘いに来ます。
その温泉とは、このホテルの地下にある人工の温泉施設のことでした。
温泉は貸し切り状態で、ほのかたちは専用の浴衣を着て、湯に浸かってくつろいでいるのですが、そこに悪ノリ大好きのエイミィが、
「……しっかし、ほのか、発育いいよねぇ?」
と、なにかを企む顔で近寄って来ます。そして、
「剥いていい?」
両掌の指をニギニギさせて迫ってきます。
「いい訳ないでしょっ!!」
ほのかが、拒否の宣言をするのですが、エイミィが止まるわけがありません。
「じゃあ、揉ませろ~」
と、襲いかかるエイミィに、ほのかが、
「じゃあ、ってなによ? じゃあって!!」
と、言い返すのです。
エイミィとしては、剥かせてもらえないなら、妥協案として「揉ませろ~」となるのだと思いますが、ほのかにしてみれば、剥かれるのも揉まれるのもイヤなので、ぜんぜん折衷案になっていません。
ですから「じゃあ、ってなによ? じゃあって!!」とエイミィに取引として正しくない点を訴えるのですが、そもそもエイミィは悪ノリでふざけているだけなので、その訴えが通じるはずがありません。
なので、あわれなほのかは抵抗することも逃げ出すこともかなわずにエイミィの餌食にされてしまいます。
ほのかに背後から抱きついて、両手をほのかの胸に回し揉んでいます。
「こういうときは、剥くか揉むかってアニメで見たよぉ」
と、嬉しそうに言うエイミィですが、
「変なアニメ見すぎだよぅ……」
と涙目で訴えます。
そしてほのかは近くで湯にあごまで使っている大親友の雫の姿を見て、右手を懸命に伸ばします。
「――助けて、雫ぅ!!」
ですが、そんな雫から帰ってきたのは淡々と告げられた絶望のお知らせでした。
「大丈夫だよ。ほのかには揉むところがあるから……」
ほのかになにかがあれば必ず手助けしてくれる大親友の雫ですが、この胸に関しては助けてくれません。
それを知ったほのかですが、完全に涙目で口もあわあわしていて、伸ばされた右手はなにも掴めずに硬直してしまいました。
このときのほのかの顔は、絶対の頼りとなる大親友に裏切られた驚きと悲しみをたたえた表情です。
まさに、共和政ローマの独裁官ガイウスが裏切った親友のブルータスに向かって言った「ブルータスよ、お前もか?」だと思います。
そして、ほのかにはとても気の毒なのですが、この表情は確実に見どころだと思われます。
そして、茫然自失になってしまったほのかに対してエイミィが、
「許可が出たので遠慮なくぅ!!」
と、湯の中に押し倒します。
あわれなほのかの悲鳴だけが大浴場に反響するのでした……。
この、ほのかがエイミィに襲われる温泉での乳揉み事件ですが、実は本篇アニメでも登場します。
細かい部分は異なりますが、ほのかがエイミィに襲われて、雫に見放されるのは同じです。
では、どうしてほのかは毎回毎回浴場でエイミィのおもちゃにされるのかを推測してみたのですが、どうやら、”ほのか”だからと言う結論に行き着きそうに思います。
エイミィが悪ノリ大好きなのは仕方がないのですし、ほのかが同性から見てもうらやましいくらい胸が大きいことも理由ではあるのですが、決してそれだけではありません。
胸うんぬん以上に、ウブで、純情で、すぐムキになるかわいい性格だからだと思われます。
例えるならば、この場に千葉エリカがいたとします。そしてエリカにエイミィが襲いかかるか(胸の大小は別として)としたら、まず最初から襲おうとは思わないはずです。
エリカは明るくて気さくで誰とでも友人になれるタイプですが、真顔になるとピリピリと威圧感を漂わせる”剣豪”のような気配をまとっていますので、まず絶対に襲われません。もし襲えば倍返しの逆襲を受けることは間違いなさそうです。
そのことを考慮すると、理由はやはり”ほのか”だから、でしょうか……。
(追加情報です。
悪ノリしたエイミィが、「こういうときは、剥くか揉むかってアニメで見たよぉ」と言うセリフなのですが、このセリフはエイミィが妙な調子を付けて歌うように言っていることで、とても聞きづらいのです。
特に最後の「――アニメで見たよぉ」の「見たよぉ」が巻き舌発音なので、聞き取れない方が大勢いたようで、web検索をすると、「見たわよ~」とする説と、「見るよ」との説がありました。
そのためこのシーンを繰り返し見て判断したのですが、「見たわよ~」や「見るよ」ではなく、「見たよぉ」と聞き取れるため、この記事では「見たよぉ」とさせていただいています)
(更なる追加情報です。
雫が自分の胸にかなりの劣等感があるのは、「魔法科高校の優等生 第3話 少女探偵団、始動よ!」でもわかります。
更衣室で着替えている場面で、雫は自分の胸を下着の上から寄せてみて、溜息をつきます。ですが、横にいるほのかは、雫の溜息こそ聞こえたものの、なんのことだかわかっていない様子でした。
持つ者はもたない者の悩みがわからないと言うことでしょう……)
魔法科高校の優等生第6話「九校戦、開幕です」のネタバレ感想
「魔法科高校の優等生」第6話。新章、〝九校戦編〝開幕。前哨戦もそこそこにあっという間に本戦突入とは相変わらず展開が早い…。謎の妨害で有力選手が棄権して主人公に活躍の機会が巡ってくるのはやはり王道で燃える展開なのです。もちろんほのかちゃん雫ちゃんの活躍も楽しみ。#mahouka pic.twitter.com/JaM8BjbbxP
— 鳴神 (@seimei7777) August 8, 2021
●1:それは半世紀以上前のネタ。
この「魔法科高校の優等生」は、本篇アニメである「魔法科高校の劣等生」ではなく、あくまでスピンオフ作品です。
そのため、シリアス展開の本篇アニメと異なり、ゆる~い展開、ほのぼの展開など、お楽しみ要素がいくも詰まっています。
そのため、主要な登場人物のデフォルメが登場することもありました。
そして、その極めつけと言えるのが、過去の名作アニメに登場するネタをパロディにしていることです。
それらの元ネタを理解していなくても楽しめますが、より楽しむには知っておいた方がオススメとなります。
そして今回の「魔法科高校の優等生 第6話 九校戦、開幕です」で、オススメのネタバレとして、冒頭のシーンで登場した目が燃える雫をご紹介したいと思います。
1-Aの教室では、発表された期末試験の結果が話題となっています。
実技、理論の得点を合計した総合での順位は1位、深雪、2位、ほのか、3位、雫となっています。
「――この成績なら3人とも選ばれそうだね。九校戦」
と、ほのかが手応えを感じたような引き締まった表情で、そう発言します。
すると雫も決意を秘めた表情で、
「うん。そのためにテスト勉強がんばってきた」
と、言うと開いていた掌を握り、
「うん。……絶対に選ばれたい」
そう宣言すると、両目と背景から炎が巻き上がるのです。
「……雫が燃えている」
と、それを見た深雪が唖然とした表情でつぶやくのでした。
この炎は、雫がこの第一高校に入学するずっと前からの九校戦フリークで、いつか絶対に自分も出場したいと思い続けていたことから、今、ようやくたどり着けたことで闘志に火が付いたことを意味する演出です。
そしてこの闘志に火が付く炎の演出ですが、これは大昔の名作が元ネタになっているのです。
その名作とは、『巨人の星』です。
『巨人の星』とは、星飛雄馬と言う少年が、高校野球を経てプロ野球巨人軍の投手となり、他球団の数々のライバルたちと対戦するスポ根作品の金字塔です。
この作品以降のアニメ(特にスポーツ物)に多大な影響を与えた名作中の名作と言える、文字通りの”巨人”です。
主役の星飛雄馬がライバルの阪神:花形満や、大洋(現DeNA):左門豊作や中日:オズマと対戦するときに闘争心に火がついた場面で、この両目と背中の炎が登場するのです。
ただこの『巨人の星』が放映されたのが、1968年(昭和43年)と、すでに50年以上前の作品となるので、この放送をリアルタイムで見ていた方が、「魔法科高校の優等生」のアニメ製作をされているとは年齢的に考えにくいです。
そのことから、『巨人の星』の影響を受けたのちに発表されたアニメや漫画にリスペクトとして、この炎の演出が登場し、その影響を受けたこの後に作られたアニメや漫画にリスペクトとして登場し、と言うように親から子、子から孫のように伝えられてきた演出方法だと思われます。
●2:魔法科シリーズ最大の謎です。
今回の「魔法科高校の優等生 第6話 九校戦、開幕です」にあるシーンで、原作小説、本篇アニメにも登場するのが、九校戦女子『バトル・ボード』準決勝で起きた事故です(本篇アニメでは、九校戦編第12話)。
これは一高の渡辺摩利が二連覇中の競技で、ライバルとされる七高の選手と競技中に激突事故となり負傷。そしてそれ以降の試合を棄権せざるを得なかった事件です。
そしてこの事件は、魔法科シリーズの中で最大の謎とも言えます。
なぜならば、『この事件で使用された魔法が明らかになっていないのです』。
この事件の詳細は”優等生”では割愛されておりますので、本篇アニメである「魔法科高校の劣等生 九校戦編第12話」からの案内となります。
この『バトル・ボード事件』は、『香港系国際犯罪シンジケート、ノー・ヘッド・ドラゴン日本支部』が仕組んだ事件です。
『ノー・ヘッド・ドラゴン』は、九校戦の試合結果を的中させる大掛かりな賭博を行っているのですが、自分たちの利益のために優勝候補筆頭の第一高校の選手たちを出場させないように、こっそりと妨害工作を行い、賭博の客たちを欺して儲けようと大掛かりなイカサマ行為をしていたのです。
最初の企ては、第一高校選手たちが競技会場である国防陸軍の富士演習場に向かう高速道路ででした。
『ノー・ヘッド・ドラゴン』の工作員が魔法を使い、操縦する自動車のタイヤをバーストさせ、操縦不能にさせて、その自動車を対向車線を隔てている壁の向こうへ移動魔法で乗り越えさせて、炎上した車体ごと一高選手たちが乗る大型バスに激突させて大惨事にさせる計画でしたが、達也と美雪、そして十文字克人の活躍で怪我人なしにすることができました。
次は”優等生”では割愛されている場面となりますが、九校戦前夜に、『ノー・ヘッド・ドラゴン』の工作員3名が、富士演習場のホテル近辺に侵入し、なにかの妨害工作を企てたのですが、作戦実行前に幹比古と達也のふたりに倒されて、未遂に終わっています(魔法科高校の劣等生 九校戦編10、11話)。
そして、『ノー・ヘッド・ドラゴン』3度目の工作が、九校戦女子『バトル・ボード』準決勝となります。
過去2回の作戦を防がれたためか、今回の工作は用意周到でした。
この九校戦女子『バトル・ボード』準決勝では、ふたつの細工を行い成功の確率を高めたのだと思われます。
そのひとつめの細工は、直接第一高校の渡辺摩利を狙うのではなく、勝利を争う七高選手の方に細工がされました。その細工とは七高選手のCADにコンピュータ・ウィルスを仕込ませることで、CADを競技中に操作不能にさせることでした。
(ただしこのウィルスの正体が明らかになるのは「魔法科高校の劣等生 九校戦編第17話」になってからとなります)
『ノー・ヘッド・ドラゴン』のひとつめの仕掛けは、CADの中に電子金蚕(でんしきんさん)と名付けられたコンピュータ・ウィルスを入れてしまうことです。
電子金蚕に感染すると、電子機器は操作不能になってしまい、しかも遅延型なので発病になかなか気づけないと言う超悪性のプログラムです。
この電子金蚕は大陸の広東軍が使用していたのですが、『ノー・ヘッド・ドラゴン』は香港系なので、関係が深いのは容易に想像できます。
遅延型で操作不能にさせるCADだったので、七高選手も試合開始までにCADの異変にはまったく気がつかず、摩利に続いて第一コーナーを曲がる直前の減速ポイントにそのまま突入し、スピードが落ちないどころが、どんどん加速するボードの上で混乱と恐怖に襲われ硬直してしまうのでした。
そしてふたつめです。
七高選手が加速を続けるボードから放り出され、そのままの勢いで摩利の方へと背中から飛んでいきます。
摩利はこの異変にはすぐに気づき、放り出された七高選手に魔法をかけて、勢いを落とし、そのまま衝撃なく抱きとめるために細かな魔法操作を行います。
そのときでした。
空中の七高選手を抱きとめようと両手を開いた瞬間に、左足側の水面がいきなり陥没したのです。これは自然ではあり得ない現象でした。
そのため摩利は体勢を崩し、七高選手を受け止めることができずに、激突し、そのままふたりとも壁を破って怪我をしてしまったのです――。
これらふたつが、この九校戦女子『バトル・ボード』準決勝で、『ノー・ヘッド・ドラゴン』によって仕組まれた”工作”となります。
観客席で、この事故の違和感を覚える部分をすぐに察したのは、もちろん達也です。達也はこの日のうちに大会運営委員会から、この事故の動画を借りだしホテルの一室で画像解析を行っています。
そこに同室しているのは、深雪、そして二年生の技術スタッフである、五十里啓と、その婚約者の千代田花音です。
達也は第三者(外部から)の介入があったと結論します。
その意見に同意の啓が、「……しかし予想以上に難しいね」と、こぼします。
この九校戦では、外部からの魔法干渉による不正防止のために、大勢の魔法師が大会委員として配置されている上に、大量の監視装置を陸上だけでなく空にも配しているからです。そのことから、外部からの”魔法による細工”は、ほぼ不可能だと判明しました。
そして達也の解析による検証では、この水面陥没は外部からでなく、水中から発生していることになったのです。
そこでひとつの問題が発生します。水中に人が潜り見つかることなく潜んでの魔法行使は、現代魔法でも古式魔法でも不可能だからです。そうなると、人間以外の何者かによる魔法行使しか考えられません。
そこに吉田幹比古と柴田美月がやって来ます。ふたりは達也に能力を見込まれて呼ばれたのです。
そこで達也が、幹比古は精霊魔法の使い手であることと、美月が霊子光に対して特に鋭敏な感受性を有していて精霊を見ることができることを伝えます。
そして達也が幹比古に、精霊魔法でこのように水面を陥没させることが可能かどうかを尋ねるのですが、不可能ではないが、摩利がバランスを崩すような効果はとてもではないが、出せないと、事実上の不可能を告げられるのです。
この後、達也によって画像から解析した摩利と七高の選手の第一コーナーの進路図が表示され、減速すべきポイントで七高の選手が逆に加速してしまっている不自然過ぎる現象が全員に伝えられ、これはCADに細工された可能性が高いと結論づけるのです。
ですが、ここからこの事件に関して、これ以上の進展はありません。
『ノー・ヘッド・ドラゴン』が、この試合で仕掛けたふたつの”細工”のうちのひとつめであるCADへの”細工”は、この後、『ミラージ・バット』で第一高校三年生の小早川景子(こばやかわ けいこ)が細工されたCADを使用してしまったことで競技中に操作不能となり、墜落し棄権を余儀なくされたり、同じく深雪のCADが細工されたことに気づいた達也が、”細工”を行った大会委員を拘束したことで事件が明らかにされることになります。
ですが、『ノー・ヘッド・ドラゴン』が、この試合で仕掛けたふたつの”細工”のうちのふたつめが解決されていないのです。
達也「幹比古。数時間単位で特定の条件に従って、水面を陥没させる遅延発動魔法は、精霊魔法により可能か?」
幹比古「可能だよ」
達也「お前にも?」
幹比古「地脈と地形が判っていれば、地脈を通じて精霊を送り込むことはできる。……ただしそんな術の掛け方では、ほとんど意味のある威力は出せない。水面は荒らすことができても、それだけで渡辺先輩がバランスを崩すほどの大波は作れないはずだ。七高の選手がオーバースピードする事故がなければ、子供のいたずらにしかならなかったと思う……」
と、達也と幹比古の会話がなされます。それでわかったことは、”不可能ではないが、摩利のバランスを崩すような効果は出せない”ことだけとなるのです。
古式魔法は”罠”のような遅延魔法を得意としますが、その名家出身である幹比古でもそれ以上はわからないことになります。
そして古式魔法には、神道系や大陸系などいくつもの流派がありますが、この後に物語に関わってくる大亜連合の魔法師の大陸系の古式魔法でこの事件の仕掛けができる魔法や人物の情報も出てきません。
そこで、発想を変えて、五十里啓がいちばん最初に考えていた、九校戦競技会場の外からの超々遠距離からの魔法攻撃が可能かどうかですが、これ自体は実は不可能ではありません。
新ソ連の戦略級魔法師である『イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ』が戦略級魔法である『トゥマーン・ボンバ』を新ソ連から日本へと超々長距離攻撃してきた例もあります(魔法科高校の劣等生24巻 エスケープ編<上>)。
ですが、これはジョークです。
こんな大それた魔法を一高の妨害程度で使ったならば、『バトル・ボード』の会場ごと破壊してしまい、それこそ牛刀をもって鶏を割くで、オーバーキル過ぎます。
また、水面を陥没させると言う意味では、十師族の五輪澪(いつわ みお)が誇る戦略級魔法である『深淵(アビス)』が該当します。『アビス』は水面をすり鉢状に陥没させる戦略級魔法で、水上艦であれば艦隊規模での撃破が可能です。
ですが、これもオーバーキル過ぎますので、”たられば”のお話です。
そのことから、不可能ではないが現実的ではないことから、どのような魔法を使っての妨害行為だったのかがわからずじまいです。
以上が、「魔法科シリーズ最大の謎」となります。
長々とご案内させていただいた上に、結論が出せないのが恐縮ですが、この「水面陥没」の謎はずっと放置されたままとなっているのです。
まとめ
ここまで「魔法科高校の優等生 第6話 九校戦、開幕です」をご紹介してきました。
ここで、今回ご案内してきました内容をまとめたいと思います。
●『あらすじ』は下記になります。
第6話は原作小説や本篇アニメでも人気が高い『九校戦』を舞台にしたストーリーとなります。
そのためタイトルも『九校戦、開幕です』と、なっています。
2095年7月9日。期末テストが終わった第一高校では、例年通りに『九校戦』のための準備に入ります。
一年女子で選手に選ばれたのは、テスト総合1位の司波深雪、2位の光井ほのか、3位の北山雫が順当に選ばれ、あとは明智エイミィ、里美スバル、滝川和実、春日菜々美です。
この一年女子チームを担当する技術スタッフは、一年生で二科生と言う、異例中の異例で司波達也です。
技術スタッフが具体的に行うのは、CADの調整、訓練メニューの作成、作戦立案と多岐にわたり、選手たちが勝利するための裏方業務をすべてサポートすると言う、極めて重責な業務ですが、自身の生活でも深雪の分も含め、同じことをしているだろうと思われる達也には、それほど苦労とは思えません。
そしてそれが正しいことは、達也が行き詰まることなどなにもなかったことで証明されると思われます。
むしろ初顔合わせとなった一年女子チームの面々からは、競技に使う魔法の相談や、CADの調整依頼されたりと人気者で、その夜、自宅で深雪が焼き餅を焼くほどでした。
そして、2095年8月1日。
九校戦会場となる国防陸軍の富士演習場内にあるホテルが舞台となります。
ここは9校の選手たちの宿舎も兼ねています。
同日夜。ホテルでは九校戦開幕前の懇親会が行われていました。
大勢の各校の選手たちが、思い思いに集まり立食形式で宴は行われています。
そして、第三高校の一年女子選手である一色愛梨、四十九院沓子、一七夜栞の美少女3人組が登場します。
名家出身で、己の力を自負している愛梨は、三高の一条将輝が一目惚れをしてしまった第一高校の深雪に懇親会らしく話しかけるのですが、深雪が魔法師の名家出身ではないことがわかると、格下と判断したため慇懃無礼な言葉を残し去りました。
そして懇親会が終了した夜。深雪たち一年女子チームの全員が、ホテル地下にある大浴場に行きました。
そこではエイミィが悪ノリし、ほのかの身体を弄ぶと言う、本篇アニメでも登場したぐだぐたシーンが見られます。
そして、2095年8月3日。とうとう九校戦が開幕します。
登場するのは”最強世代”のひとりで十師族の七草真由美です。
真由美は『スピード・シューティング』に出場しましたが決勝でも満点を叩き出し、この競技の三連覇を達成しました。
そして”最強世代”のひとりである渡辺摩利が『バトル・ボード』女子の準決勝に出場するのです。摩利はこの競技を二連覇中です。
そしてスタート早々にトップになった摩利の後方には七高の選手が追随するのですが、第一コーナーでCADが操作不能となり、そのまま加速し、先行する摩利と激突してしまい、両者棄権となってしまうのです。
この事件は、香港系国際犯罪シンジケートである『ノー・ヘッド・ドラゴン』が仕組んだものです。
『ノー・ヘッド・ドラゴン』は、九校戦の試合結果を材料にした大規模な賭博を行っており、巨額の利益を得るために優勝候補筆頭である第一高校の選手を優勝させない妨害を密かに行い、顧客たちから大金を巻き上げるイカサマを企てているのでした。
けっきょく、この『バトル・ボード』女子で優勝したのは、三高の水尾佐保でした。
佐保は愛梨の2つ上で、幼なじみでもあります。
摩利の棄権で転がり込んだ優勝を快く思っていない佐保ですが、一年生ながら『ミラージ・バット』本戦の代表に選ばれている愛梨と『ミラージ・バット』の決勝で互いにワンツーフィニッシュを飾ろうと誓い合うのでした。
ふたりのこの決意は、ニュースとして報道された『ミラージ・バット』本戦に、怪我による欠場が決まった第一高校の摩利の代役として、一年生の司波深雪の出場が決まったとの知らせがあったからです。
そして迎えた2095年8月6日。
この日から新人戦がスタートします。
深雪とほのか、雫は互いにがんばることを誓うのでした。
●第6話「九校戦、開幕です」の見どころは、「たぶん新品種です」と、「ブルータスよ、お前もか?」となります。
①たぶん新品種です
物語のメインとなる舞台は、やはり国立魔法大学付属第一高校となります。
この学校は東京都八王子市にあり、校門から本校舎まで続く並木道には、たくさんのサクラが植樹されていて、ピンク色の満開の花々は実に見事です。
ですが、このサクラ。ずっと咲き続けていることが判明します。
・2095年4月3日。
入学式の日。東京の開花時期に一致するので、問題ありません。
・2095年4月23日。
テロ組織ブランシュが第一高校に武装工作員を送り込んだ日。
開花時期より少々遅いですが、完全なる満開です。
2095年7月9日。
期末テストの結果が発表された日。
……まだ咲いています。満開です。不思議です。
と、いう具合になります。
これは製作スタッフの方々の間違いなのか、それとも新品種なのか、考えてしまいます。
②ブルータスよ、お前もか?
九校戦会場である国防陸軍、富士演習場内にあるホテル。ここには地下に温泉施設があるのです。
2095年8月1日の懇親会が終わった日の夜。
ここに深雪、ほのか、雫、エイミィ、スバル、和実、菜々美の7名が入浴します。
この入浴シーンはシリアス展開でお色気シーンが少ない本篇アニメでさえ登場する魔法科シリーズの名場面とも言えるシーンとなります。
ここで、悪ノリ大好きなエイミィが、本篇アニメ同様に、ほのかを襲います。
立派な胸を持ち、ウブで、純情で、すぐムキになるかわいいほのかは、格好の餌食で、胸を揉まれてしまうのです。
ほのかも何度も拒否をするのですが、ノリノリで屁理屈を並べるエイミィに勝てるわけがありません。
そこでほのかは、困ったときにはいつでも助けてくれる大親友の雫に助けを求めるのですが、「――大丈夫だよ」との言葉を発しただけで助けてくれませんでした。
このときのほのかの絶望顔が見どころとなります。
●魔法科高校の優等生第6話「九校戦、開幕です」のネタバレ感想です。
《それは半世紀以上前のネタ》
オープニング早々に、このネタは登場します。
期末テストの結果が発表された2095年7月9日。1-Aの教室では、発表された期末試験の結果が話題となっています。
実技、理論の得点を合計した総合での順位は1位、深雪、2位、ほのか、3位、雫となっています。
この結果を見て、雫が「――そのためにテスト勉強がんばってきた」と、発言するのですが、九校戦をこよなく愛する雫は、第一高校入学のずっと前から自分が九校戦に出場することを目標としていました。
そのことから、テスト順位に気合いが入り、「――絶対に選ばれたい」と強く闘志を燃やし、目も燃やすのです。
それは昭和時代の名作中の名作と呼ばれるアニメが元ネタとなったシーンで、この”優等生”製作スタッフの方々の名作へのリスペクトを強く感じる名場面となっています。
《魔法科シリーズ最大の謎》
この九校戦は、『香港系国際犯罪シンジケート、ノー・ヘッド・ドラゴン日本支部』が胴元になり、競技の試合結果を材料に、密かに大規模な賭博を行っていました。
そして、『ノー・ヘッド・ドラゴン』は顧客を欺し、巨額の利益を得るために、優勝候補筆頭である第一高校の選手たちに対して妨害を行い、試合を棄権させるイカサマを行っていたのです。
そして、九校戦『バトル・ボード』女子の準決勝の試合で狙われたのは、第一高校の渡辺摩利です。
摩利がスタート直後にトップになり、七高の選手が2位につけたのですが、目前に迫る第一コーナーでアクシデントは起こりました。
本来ならカーブを曲がるために減速するポイントに差し掛かった七高の選手のCADが捜査不能となり、逆に加速し始めて、結果、ボードから放り出された七高選手と摩利が激突し、そのままふたりは棄権となりました。
このときCADにウィルスを混入させたのは間違いなく『ノー・ヘッド・ドラゴン』です。
ですが、摩利が放り出された七高選手を受け止めようと減速魔法を行使し、両手を差し出したときに、左足の下の水面が陥没し、バランスを崩してしまった摩利は、受け止められずに背後の壁を破り倒れてしまったのです。
そして、この水面陥没ですが、達也の画像解析によって明らかに魔法の痕跡があったのですが、この九校戦会場の外からの魔法攻撃は不可能であることから、水中からの魔法行使ではないかと推測されました。
ですが、これは現代魔法でも古式魔法でも不可能なことで、古式魔法の一種で吉田幹比古が得意とする精霊魔法なら可能かも知れないと、考察は進展したのですが、幹比古より不可能ではないが、ボードの上にいる摩利のバランスを崩すほどの威力は出せない、と断言されたのです。
仕掛けたのは『ノー・ヘッド・ドラゴン』には違いないと思えるのですが、”どの魔法でどうやって水面陥没させたかが明らかになっていない”、と言う魔法科シリーズの中でも最大の謎のひとつだと思われます。
拙文を最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。